マイナー裁判シリーズ第7回「請求の理由が非常に苦しい民事訴訟」
行動する保守運動の内訌があらわとなった民事訴訟
今回紹介するマイナー裁判は、行動する保守に分類される団体である日本を護る市民の会の代表と事務局長が在日特権を許さない市民の会会長の桜井誠さんや千葉支部の幹部に対して800万円の賠償を求めて提起した民事訴訟です。この民事訴訟では当時対立関係にあった日本を護る市民の会と在日特権を許さない市民の会が原告被告に分かれて対峙するばかりでなく、いわゆるウォッチャーと称される人物も被告となったものでした。
この対立関係の原因となったのは、日本を護る市民の会内部の対立関係でした。日本を護る市民の会の幹部は、代表、副代表、支部長、事務局長などでしたが、代表と事務局長の交際から大きな対立関係が発生することになりました。この経緯については稿を改めて書くことにしますが、その中で日本を護る市民の会から離れた副代表の男性を支援したのが在日特権を許さない市民の会のオブザーバーであった男性でした。この男性は、在日特権を許さない市民の会千葉支部の活動に大きな影響を与えていた人物で、この男性が副代表の男性を支援することによって在日特権を許さない市民の会千葉支部ばかりでなく、福岡支部や山口支部などの一部の支部を除く在日特権を許さない市民の会のほぼ全体が日本を護る市民の会と対立することとなっていきました。
この民事訴訟はそのような対立関係の中で提起されたものでした。
原告の主張を裏付ける「スカイプログ」とは
この民事訴訟で原告の主張を裏付ける書証となったのが「スカイプログ」と称するものでした。「ログ」という名称からスカイプの何らかの記録をそのまま印字したものであると思っていましたが、裁判記録を閲覧して驚きました。「スカイプログ」と称するものは何らかの記録を印字したものではなく、ワープロで入力したものを打ち出したものであったからです。つまり、スカイプの内容をいちいちワープロに入力したものに「ログ」という仰々しい名称をつけただけのものでした。つまり、「スカイプでこのような会話があったから私がその会話をワープロで入力しました」というのが「スカイプログ」と称するものでした。
巻き込まれたといってよいウォッチャー二人と桜井誠さん
この民事訴訟で巻き込まれたといってよいのがウォッチャーと称される人物二人と桜井誠さんでした。なぜなら、原告の請求を裏付け、そこで名誉毀損がなされているスカイプに参加していなかったからです。一人のウォッチャーはスカイプに参加していた者がそのウォッチャーが公開していたブログの内容に言及していたからスカイプの内容についても責任を負うべきであるとして被告となり、もう一人のウォッチャーは在日特権を許さない市民の会とそのウォッチャーが信仰している宗教団体を繋いでいたからスカイプの内容についても責任を負うべきであるとして被告となっていました。更に、桜井誠さんについては、在日特権を許さない市民の会会長として会員に対して絶対的な影響力を与えていたからとして被告となっていました。そして、この三人の不法行為を立証する書証はその「スカイプログ」と称するものだけでした。そしてその「スカイプログ」はある時点から記録がなく、数か月経過した時点で民事訴訟とはまったく関係のない人物の会話で終わっていました。そして、訴訟提起の時点からその無関係の会話がなされた時点までは3年以内でしたが、記録が亡くなる直前にスカイプで被告となっている者同士が会話した時点からは3年をはるかに経過していました。
被告がなした反論の内容
被告となったウォッチャー一人は、在日特権を許さない市民の会との関係性を否定し、なぜ自分が被告となったのかわからない旨の反論をなし、桜井誠さんは在日特権を許さない市民の会千葉支部の幹部らに何らかの命令をなしたことがない旨の反論をしていましたが、一人のウォッチャーはスカイプログが書証として弱い旨の反論をなしていました。その反論は、スカイプでなされた会話を原告が原告に近い者が「スカイプログ」としてワープロに入力したものであるから、会話の内容を改変することが容易であり、「スカイプログ」の内容はスカイプの会話の内容を立証するものではないとするものでした。また、突然加えられたとしか考えられない無関係の会話は、不法行為が時効にかからないようにするために記載されたものであって、被告の一部の者がなしたスカイプの会話についてはすでに消滅時効にかかっているから時効を援用するというものでした。
ほとんど出頭しなかった被告と判決の内容
この民事訴訟の特徴的な点は、被告がほとんど出頭しなかったということでしょう。犠牲陳述が認められる初回口頭弁論で答弁書を提出し、その後はほとんどの被告が法廷に出頭することがなく、法廷には原告だけが姿を見せるという口頭弁論が続きました。そして、東京地方裁判所は毎回法廷に出頭していた原告の請求を棄却する判決を言い渡すことになりました。