「座り込み」、「ハンガーストライキ」のカジュアル化について
著述家菅野完さんによってなされた「ハンガーストライキ」のカジュアル化
令和2年10月2日から26日まで、菅義偉内閣が日本学術会議の会員候補6名の任命を拒否したことに抗議して著述家の菅野完さんがハンガーストライキを行いました。
このハンガーストライキは少し特殊で、オレンジジュースの摂取を行いながら食事を摂取せず雨が降ればホテルで宿泊するというもので、過酷なハンガーストライキを決行してドクターストップによって終了するというものではなく、ハンガーストライキの期間をなるべく伸ばすという趣旨のもとに行われていました。長期のハンガーストライキによって菅野完さんの身体へのダメージは大きかったようですが、一般的に認識されているハンガーストライキと比較してカジュアル化が図られた例であると言えるでしょう。
辺野古抗議活動においてなされた「座り込み」のカジュアル化
2ちゃんねる創設者のひろゆきこと西村博之さんのツイートによって辺野古抗議活動において「座り込み」がカジュアル化されていることが明らかになりました。
それに対する攻撃は非常に過激なものとなりました。第四の権力ともいえる報道機関の一端を担う沖縄タイムスは、西村博之さんが謝罪と撤回をすることが当然であると考え、阿部岳沖縄タイムス編集委員の署名記事で記事を掲載しています。
ただ、普天間飛行場を辺野古海上に移設する国の政策に対して抗議する活動家たちについて、高齢者が多く24時間座り込むことが難しいという事情もあることもあって、基地関連の車両が通過する時間のみに座り込むという「座り込み」のカジュアル化が進んでいるということだけは間違いがないようです。
「ハンバーストライキ」、「座り込み」のカジュアル化によって訪れる未来
この「ハンガーストライキ」や「座り込み」の定義については、社会の中でどのように用いられているかによって変わっていくことは間違いありません。ただ、これらの定義がカジュアル化することによって訪れる未来は決して好ましい未来ではないように感じます。
普天間飛行場の辺野古移設反対運動は、橋本龍太郎元総理大臣が世界一危険と言われる普天間飛行場近隣の住環境の悪さに驚き、その危険性の除去のために尽力した普天間飛行場の辺野古移設に反対するもので、普天間飛行場や辺野古海上基地予定地にあまり関係のない市町村の住民が中心となって活動しているものと私は認識しています。
また、普天間飛行場の辺野古移設に関する経緯をみれば、地元住民、沖縄県知事などの同意が取り付けられていたにも関わらず、玉城デニー沖縄県知事が所属していた民主党が現実のものとなってきた政権交代に目がくらんで何の腹案もなく県外移設をぶち上げて、これ以上ないほどに拗らせて解決策が見当たらなくなったものであるとも言えます。なお、玉城デニー沖縄県知事は、民主党所属の衆議院議員として辺野古移設が最適であると発言していたことを強調しておきます。
また、経世会で橋本龍太郎元総理大臣とライバル関係にあった小沢一郎元民主党幹事長が、橋本龍太郎の名前を歴史に残すことに嫌悪感を抱いていたのではないかとも私は勝手に想像しています。
ただ、前述の学術会議の会員任命拒否も含めて、この程度の反対運動のために「ハンガーストライキ」や「座り込み」をカジュアル化するのはどうかと思います。ロシアのウクライナ武力侵略や中国の領土的野心に基づくさまざまな策動を見てもわかるように、現在は国際法を無視した帝国主義の復活が懸念される時代となっています。反対運動をなすことはご自由ですが、この程度の問題のために「ハンガーストライキ」や「座り込み」をカジュアル化して、将来必ず発生するであろうより深刻な問題に対する「ハンガーストライキ」や「座り込み」に対して、世間の関心を集めることが難しくなるのではないかと懸念したりはしないのでしょうか。「ハンガーストライキ」や「座り込み」にカジュアルな印象がついて世間に訴えるインパクトが減少していたとすれば、それ以上のインパクトを世間に与えるためには狭義の意味で命を懸けるしかありません。カジュアルな「ハンガーストライキ」を行っていた菅野完さんや、辺野古でカジュアルな「座り込み」を行っていた人々はそのような未来に思いを馳せることはないのでしょうか。