香川県ゲーム条例裁判第3回口頭弁論(1)
当事者の請求
香川県が制定したゲーム条例をめぐり、制定当時に17歳であった児童(17歳は児童とはいいがたい年齢ですが、法律の規定に沿って児童と表現します。)とその親権者である母親が香川県に提起した民事訴訟の第3回口頭弁論が令和3年6月14日に高松地方裁判所で行われました。私は、この口頭弁論を傍聴していなかったのですが、徳島に旅行に行った翌日に高松地方裁判所で裁判記録を閲覧して内容を確認してきました。
まず、この民事訴訟の訴状及び請求の趣旨についてご存じない方もいらっしゃると思いますので以下に示します。
訴状
令和2年9月30日
高松地方裁判所民事部 御中
原告 X1(X2親権者母親)
X2(児童)
代理人 作花知志
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告X1に対し、金80万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告X2に対し、金80万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
それに対する令和2年12月15日付け香川県の答弁の趣旨は次のとおりでした。
1 原告らの請求をいずれも棄却する
2 訴訟費用は原告らの負担とする
との判決を求める。
原告の請求は、香川県に対する金員の請求について仮執行を求めていないことが異例ですが、勝訴した場合に香川県が支払不能となるおそれがないからかもしれません。そして、児童の母親であるX1と児童本人X2の双方が80万円ずつの金員の請求を行っていますが、これは事物管轄により高松簡易裁判所の管轄とならないよう140万円を超える請求にしたものであると思われます。
「幸福追求権は基本的人権ではない」は毎日新聞の大誤報なのか
この口頭弁論で着目したのは次のツイートでした。
民事訴訟の口頭弁論では、原告や被告から提出された準備書面を裁判長が「陳述します」と述べて書面の内容を口頭弁論で当事者が主張したことにしたり、書証を「取り調べます」と述べて書証の内容を裁判所が精査したことにしたりするので、報道する側としては口頭弁論を記事にすることができません。したがって、当事者から準備書面や書証の内容を取材したり裁判記録を閲覧したりして口頭弁論の内容を確認するわけです。おそらく毎日新聞もそのような取材を経たうえで記事にしたものと考えられますが、おかしな条例を制定した香川県であるとはいえ、弁護士が就いてなした主張でそのようなおかしなものがあるとも考えにくいものがあります。
そして、毎日新聞の記事そのものに答えはありました。記事の最後にこう記載されていたのです。
※この記事の表に誤りがありましたので、6月29日に正しい表に差し替えました。
差し替え後の毎日新聞の記事は次のようになっていたわけですが、
当初の毎日新聞の記事の表の画像を掲載しているウェブサイトによると、
上記のようになっていたわけです。おそらく、毎日新聞の誤報であると思われます。
ただ、当事者の主張が具体的にどのように述べているかについては裁判記録を閲覧しなければわからない話でもあります。次回から被告香川県の主張について具体的に触れていきます。