講演会 ふかえどカレッジ「おいなりさん~江戸庶民の信仰と食」
深川江戸資料館という施設
江戸の食文化に関する講演会が行われるということで深川江戸資料館に行ってきました。深川江戸資料館は新宿の道楽亭の出張寄席でもよく用いられる箱で、何度か落語会で訪れたことがありました。今回、講演会のついでに展示スペースを訪れました。
展示スペースで目をひいたのは、江戸時代の江戸の地図でした。最初に探したのは目黒でした。目黒は現在より海が近く落語の「目黒のさんま」という噺が成立しやすいことがわかりました。
展示スペースには、江戸時代のそばの屋台がありました。ここで「時そば」のやり取りが繰り広げられたのでしょうか。私は最初に「時そば」を聴いたときに現在の夜鳴きそばのような車輪のついた屋台を想像していましたが、最初にこのような江戸の風景を観ておけば落語で想像する景色も実感がわくのではないでしょうか。
そして、本日のメインイベントであるいなり寿司の展示物です。
そして、江戸深川資料館は落語会の箱として現在でも大いに活用されているようです。柳家喬太郎師匠、三遊亭遊雀師匠、桂文治師匠、古今亭文菊師匠、柳家わさび師匠、柳亭小痴楽師匠、蝶花楼桃花師匠など魅力的な噺家さんの出演する落語会が企画されています。
坂梨カズさんの講演会
今回の目的は江戸の食文化に関する坂梨カズさんの講演会でした。募集が再開されたときに電話で応募しましたが、江戸深川資料館の会場の規模もあって滞りなく予約が完了しました。その後に自宅にハガキが届き、ハガキと展示スペースの入場券を購入して会場に入場するやり方でした。しばき界隈に対する警戒もあったのかも知れません。
そして、江戸深川資料館前には寂しくプラカードを掲示する黒マスクの男性がいらっしゃいました。便宜上この男性を「黒マスクさん」と呼ぶことにします。
二十代後半から三十代と思われる黒マスクさんは、非常に愛嬌のある垂れ目が印象的で、かなり無理してこのような活動をなさっているのではないかと感じました。
講演会では、坂梨カズさんがいなり寿司を好きになったきっかけから話が始まりました。坂梨カズさんは上にお姉さん、下に弟さんがいらっしゃる三人兄弟でご両親は二人目ということで写真などもお姉さんと比較して非常に少なかったそうです。そのような頃に楽しみであったのが運動会で、この運動会のお重にいなり寿司があったことが好きになったきっかけであったそうです。
社会に出て坂梨カズさんはデザインの仕事に就いたわけですが、デザインの仕事は締切間際などで徹夜となってしまうことが少なくなく、片手で食べることができるいなり寿司を食べながら仕事をすることが多かったそうです。
そして、いなり寿司を中心に江戸の宗教や食文化について様々なお話を聴くことができましたが、特に印象的であったのが浅草の志乃多寿司を坂梨カズさんにとっていなり寿司を分類するときのスタンダードとしているという話でした。志乃多寿司は浅草演芸ホールの売店で販売しており、志乃多寿司の助六を食べながら寄席見物をすることも多かったことから非常に興味深く聴くことができました。
その後、質疑応答の時間となりましたが、最初に当てられた白マスクの男性(便宜上「白マスクさん」と呼びます。)が「講演会の話ではないのですが・・・」と話し始めたときに私は「来ていたか」と思いました。案の定トランス差別が云々と無関係な質問を続けようとしたものの、職員の「関係のない質問はご遠慮ください」であっさり引き下がるチキンそのものの方でした。日曜日の午後という普通であれば非常に楽しい時間を、おそらく聴きたくもない講演会に参加して一演説することを楽しみにして参加した白マスクさんは、日曜日の午後に気の合う友人や恋人、あるいは家族と楽しんだり、ご自身が関心を持つ分野について見識を深める機会をキャンセルして深川江戸資料館にいらっしゃったわけですが、講演会が終わるタイミングでシュプレヒコールもどきをやりかけて退出し、建物の外で黒マスクさんと別々にうろうろしていました。
私は講演会の前に展示スペースを見物した後に周辺を散策していたときに公安の方がいらっしゃることを確認していましたので、何かやらかせば白マスクさんも黒マスクさんも逮捕されることがわかっていましたので心の中で「お疲れ様」と彼らに声をかけて帰宅しました。