李信恵さんのこと

李信恵さんについて

 最初に申し上げておきますが、私は李信恵さんと面識がありません。ウェブサイトや書籍の印象だけで述べていることを予めご理解ください。ただ、李信恵さんの書籍すべてに目を通したうえでこの記事を書いています。したがって、「鶴橋安寧-アンチ・ヘイト・クロニカル」に折り込まれた「反ヘイトスピーチ裁判」に関するお知らせとカンパ募集のお知らせが記載されたチラシにも目を通しています。
 李信恵さんは、ガジェット通信のライターとして記事を書いていて、「差別はネットの娯楽なのか」というシリーズで注目され、あっという間に反差別運動の中心人物になったように感じています。それまでの仕事についてはガジェット通信のアーカイブには残っていませんが、トレンドを比較分析して紹介するという記事をどこかで見たような気がするぐらいです。

反差別運動の初期のアクション

 反差別運動が初期に動いたのはヘイトスピーチに反対する決議を地方公共団体の議会に出させることでした。当時、どこの地方公共団体が決議をなしたとあちこちのツイートが賑やかだったのを覚えています。
 ただ、不思議に思うこともありました。それは李信恵さんの住む地方公共団体からヘイトスピーチに反対する決議がなされなかったことです。その地方公共団体には他にも反差別運動の中心人物が住んでいましたのでかなり初期に決議がなされるものと思い込んでいたからです。しかしながら、いつになってもヘイトスピーチ反対の決議がなされることはありませんでした。

なぜ李信恵さんの住む地方公共団体でヘイトスピーチ反対決議がなされなかったのか

 この件について、反差別運動に参加していて李信恵さんと親交のあった人物に聞いたことがありましたが、

「李信恵さんはそんなことやらないよ」

という返事でした。仮に、李信恵さんが自ら動いていたとしても、帰化しているのでなければ選挙権はありませんし、選挙が大きな関心となっている地方議会の議員にとって有権者ではない者の訴えは優先順位としてどうしても後になってしまうのかもしれません。そして、反差別運動についてはそれぞれの考えがありますから、ヘイトスピーチ反対決議が絶対にやらなければならないミッションであるわけでもないでしょう。そういう点から地方公共団体の議会にヘイトスピーチ反対決議を働きかけるということに二の足を踏むということも理解できます。ただ、それでもという気持ちはあります。その地方公共団体は、これまでの歴史上革新が非常に強く、イデオロギー的に革新と親和性の高いヘイトスピーチ反対決議はやりやすかったからです。

李信恵さんのためにヘイトスピーチ反対決議をなそうとする者はいなかったのか

 反差別運動には少なくない数の弁護士や大学教授、准教授、講師などが加わっていますし、マスコミの人物も同様に加わっています。その中には地方議会やその議員を動かすノウハウを持つ者も少なくないでしょう。中には後に李信恵さんの民事訴訟の訴訟代理人を務め、李信恵さんとの共著で「黙らない女たち」を執筆した上瀧浩子弁護士もいたはずです。
 何よりその時点で反差別運動の中心人物となっていた李信恵さんを支援しようとする者は少なくなかったはずです。その者の中から李信恵さんの住む地方公共団体にヘイトスピーチ反対決議を何としても実現させようと動く者はいなかったのでしょうか。仮に、私が反差別運動に参加していて李信恵さんにシンパシーを感じていたとすれば、

「李信恵さんに恥をかかせるわけにはいかない」

と李信恵さんの住む地方公共団体で議会や議員に働きかけをしたと思います。自分にそのノウハウがなければ、そのノウハウを持つ者に頭を下げて教えを乞うでしょう。
 その人物として二人の者が頭に浮かびます。

地方議会や議員を動かすノウハウにもっとも長けた人物とは

 反差別運動に参加した人物の中で地方議会や議員を動かすノウハウに最も長けた人物として頭に浮かぶのは、ヲ茶会さんと金展克さんです。ヲ茶会さんは在日特権許さない市民の会などの動画をまとめて地方議会や議員ばかりでなく国連を動かすことになりましたし、金展克さんはヘイトスピーチ規制法の成立に大きな尽力をした人物です。私が李信恵にシンパシーを感じていたなら、李信恵さんのためにこの二人に教えを乞い、協力を求めるでしょう。


 ただ、この二人はかなり早い段階で反差別運動の前線から身を引いていましたし、反差別のためにどうすべきかについてもかなり方向性の違いが出ていましたから、李信恵さんのシンパが自分の腹の虫を大事にして頭を下げることを拒否しようとする気持ちも分からなくもありません。仮にそれを乗り越えたとしても李信恵さんや他の反差別運動の中心人物がそれを好ましいと考えていなければ、彼らから批判される可能性も考えなければならないでしょう。

李信恵さんの執筆したガジェット通信記事一覧

 最後に李信恵さんが反差別運動の中心人物となるきっかけとなったガジェット通信の記事を紹介しておきます。ただ、なぜかガジェット通信のアーカイブには第12回、第14回、第18回の記事が表示されていない一方、京都朝鮮第一初級学校に関する民事訴訟の傍聴記が表示されます。第18回の記事については、自身の個人的な訴訟であるとしてアーカイブに掲載することを遠慮したのかもしれませんし、冒頭の写真を気にして遠慮したのかもしれません。あるいは、単なるガジェット通信の都合なのかもしれません。
 この記事の中で私が着目したのは、第15回「『良い朝鮮人も悪い朝鮮人も追い出そう。女性は殺そう』ツイートによる沖縄男性の書類送検について」でした。自ら通報し、書類送検となった経過を示した記事からはたとえ書類送検されただけで刑事事件の処分がどのようになるかわからない段階であったとしても厳しく批判しており、ヘイトクライムに対する李信恵さんの怒りが伝わってきました。李信恵さんにはこれからも書類送検段階であったとしてもヘイトクライムに対する厳しい姿勢を貫いていってほしいと思います。