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発達障害は精神疾患なのか?むしろ、脳のタイプと捉えて。「治療」よりも「環境調整」を。

この記事は2,502文字あります。個人差はありますが、4分〜6分でお読みいただけます。

このnoteではVoicy(音声配信)で配信した内容のテキスト版(簡易版)です。ぜひ併せてご活用ください!ちなみに、Voicyは下記チャンネルで毎日更新しています!

今回のテーマは、「発達障害は精神疾患なのか」です。どうぞお付き合いください。


発達障害は精神疾患?

先日のVoicyで取り上げた「#169 特別な成果を残した人の中には発達障害特性を持つ人もいるかもしれないけれども、発達障害だから特別な才能があるわけじゃない」に、「そもそも発達障害は「精神疾患」になるのでしょうか?二次的に精神疾患を発症することはあれど、発達障害自体は特性というだけでは感じました」とコメントを頂き(コメントありがとうございます!)、これは大事なテーマだなと思って、noteとVoicyどちらでも取り上げようと思った次第です。

まず、国際的な診断基準には大きく分けて二つあります。

一つは、米国精神医学会が定めている「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」です。現在、第5版になっていて、通称DSM-5(ディーエスエム-ファイブ)と呼ばれています。

もう一つは、世界保健機関(WHO)が定めている「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)」です。現在、第11版になっていて(なんと30年ぶりの改訂!)、通称ICD-11(アイシーディ-イレブン)と呼ばれています(日本での導入はまだ)。

精神科や小児科の多くは、このDSMやICDの診断基準が活用されています。

診断基準では、発達障害はどうなっている?

現在の診断基準における大枠では、発達障害は「精神障害」の中に含まれます。

ただし、どちらの基準でも、発達障害は「神経発達症」というカテゴリーになります。これは、神経学的な違いがあるということです。もっと平たくいうと、脳の働き方、脳のタイプに違いがあるといってもいいかもしれません。そして、後天的なものではなく、生まれつきの脳のタイプでもあります。

一方、他の精神障害に分類される、いわゆる精神疾患。
例えば、統合失調症、気分障害、不安障害、依存症などです。これらは、生まれつきかというとそうではありません。

その原因がはっきりとはわかっていないことも少なくありません。元々の生物学的、遺伝、器質的な要素に加え、環境要因などの心理的要因が複雑に関係していると考えられています。ちなみに、体の不調や病気が関係することもあります。

例えば、体の大きな怪我により、これまで通りに体を動かせなくなったり、これまでのような生活を過ごせなくなったことがきっかけでメンタルが落ちること、その結果眠れなくなったり、場合によっては抑うつ的になることもあったりします。

ここまで書いてきたように、発達障害とその他の精神疾患では、大枠は同じだとしても、根本的な違いがあるわけです。

治療は?

そもそも、治療とはどのような定義でしょうか。一般的には、病気を治したり、症状を改善したりするためのものといえます。

精神疾患の場合には、もともとなかったものが、何らかの要因で発症したわけです。そのため、治療方針としては症状の改善を目指していきます。一般的には薬物療法や精神療法(専門用語ですが、解説すると長くなるので、ここでは割愛します)という治療方針になります。

では、発達障害の場合にはどうでしょう?

その特性ゆえに、生活上の困難(生きづらさと表現されることもあります)もありますが、生まれもった特性を「治す」とか「改善する」ものではありません。

先ほど、「神経学的な違い」と書きました。これは、神経学的には少数派のタイプというだけで、神経学的に多数派の人に近づける理由はありません。それは、少数派であるという存在自体を否定するものにもなり得るためです。そして、これは発達障害に限った話ではありません。

現在は「ダイバーシティ(多様性)」というのがよく見聞きするようになりました。厚生労働省でも、「ダイバーシティ&インクルージョン」の社会の必要性を掲げています。

ちなみに、ここでいう「ダイバーシティ&インクルージョン」というのは、年齢や性別、国籍、学歴、特性、趣味嗜好、宗教などにとらわれない多種多様な人材が、お互いに認め合い、自らの能力を最大限発揮し活躍できること、とされています(厚生労働省「ダイバーシティ&インクルージョンの時代に 治療と仕事の両立で自分らしく働く」より)。

このように考えていくと、発達障害特性があったとしても、それは病気や疾患とは違って、ものごとの捉え方や感じ方に違いがあるわけなので、それを尊重しましょうというのが原則になってきます。
 

そうはいっても、「しょうがないよね」とだけしていても生活上の困難は減りませんから、具体的な困難を減らしていくような対応は必要になってきます。

例えば、忘れ物が多ければ「気をつける」ではなく、忘れにくくなる対策を取ったり、忘れても困りすぎないようにする。聞き漏らしが多ければ、書いてもらう、連絡はメールを活用する。言葉がうまく話せなければ、言葉以外で、絵カードやICT機器を活用してコミュニケーションをとる。ざわざわした音が苦手であれば、ノイズキャンセリングイヤホンを使う。こんな風に「その人を変える」のではなく、「その人にあった環境を整える」という発想が大切です。

詳しくは、以前別の記事に書いたので、そちらもご覧ください。

補足はVoicyの配信をお聴き頂ければと思いますので、宜しければVoicyの方も応援していただければと思います!

佐々木康栄

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これまでnoteにまとめていましたが、TEACCHプログラム研究会東北支部のホームページに集約しました。宜しければご活用ください。

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