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世の中は「人新世の資本論」をもとめている

ポイント!ポイント!ポイント!

巷ではポイントが大流行です。商店のポイントはシールを集めたり買い物の度に貯めて割引をもらったりけっこう昔からありました(サイフの中はポイントカードでぎっしりです)お客さんに来てもらうための企業努力です。

国もマイナポイント、省電力ポイントなどを出してきました。ポイント(得する感)を与えれば飛びつくと思われてる気がします。なぜそうしてほしいか丁寧な説明をすることを、理性で人を動かすことを放棄しているような気がします。なんだか民度が試されているような気がします。
これは国からの挑戦状です。ふるさと納税も同!

例えば。ようし資格をとるために簿記の勉強をするぞ、と決心して行動しようとしたそのときに「受かったら10万円あげる」と言われたとします。
その瞬間、動機は「さいしょ自己に湧き上がったやる気」から「お金」にすり替えられました。
もともと高い理想の人をそそのかすようなことをしているのです。

カネ(ポイント)は人をダメにする…

カネでものの価値を決める資本主義が見せる「不公平な世の中」

ここ数年のコロナ禍のなかで、資本主義の限界を肌感覚でうけとりました。
例えば新聞。正確な情報を集めるため新聞を読んでいましたが、外出自粛の記事の次に旅行広告が差し込まれ、1ページごとに展開する壮大な我慢大会でした。オリンピックの疑義がある一方で、分科会(科学的知見)と反する政府のポジティブしかない見解(その点スポンサーの方が世論に敏感でおとなしかった)を記載していて、これはどう見てもお金のにおいがしました。
カネの流れが人の行動(倫理)を縛っているのです。

目に見えてくるようになった様々な問題の根っこはカネです。
個人間/国家間の貧富の格差はいうまでもなく、「自助を」としかいわない公助のない政府や、気候変動や花粉症や新型ナントカ病など、根っこは資本第一主義(利益追求)の結果です。

電力がひっ迫してるから(安全面はスルーして)原発を稼働させようとか、景気対策経済成長のために(自然淘汰されるべきだった)特定の業種を支援するとか、世界で軍拡の緊張が高まってるからミサイルを買おうとか、目先の解決策(カネで解決)をどれだけやってきた結果で、いつまで続けるつもりでしょうか。

ここで、偉そうなことを言っているあなたは?と聞かれると。
原発問題も意識せず、幸いそれほど貧困でもなく、いままで社会問題を自分事として考えていない一般人でした。ここのところずっと考えていた、子供のころに思ってた未来と現実の乖離は、息苦しさは社会の歪みが原因だとようやく気づきました。
だからこそ今必死で勉強しているのです。こんな未来を子供たちに託したくない。というのが一番の想いです。

人新世の「資本論」を読む

そんな中で何を目指すべきか?
一般人に何ができるのか?
一つの道筋を与えてくれるのがこの本です。

本で言いたいことはマルクスが「資本論」を経て展開した思想「脱成長コミュニズム」にこそ、現実問題(気候変動・ポスト資本主義)への解決策があるということです。

しかしこの本、半分以上読み進めても「脱成長コミュニズム」にはたどり着けません。最初に現実問題(感じていた社会の歪み)とその原因をこれでもかというくらい教えています。SDGs・エコで浮かれている世間にガツンと教唆します。
人新世で起きている多様な問題の原因と本質~資本主義の性質~提唱されている解決策の問題点~マルクスの思考遍路と世間の解釈など長い解説があり、なかなかたどり着けずにじりじりします。
(これには理由があり、いかに科学的で正確なことを伝えるか、誤解のないように慎重な姿勢で寿いでいるのです)
そのため読むほうも自分の思考を一緒に展開していきます。(エコ活動しているから貢献している)(でも資本主義のままでもよくない?)(経済成長しなくて大丈夫?)(グリーンニューディールとか他の対策のほうが有名だ)(マルクス・資本論って古い)(社会主義は失敗してる)…このような思考に一つずつ丁寧に解説してもらいます。

いくつかの知見を記載しておきます。

資本主義とは、価値増殖と資本蓄積のために、さらなる市場を絶えず開拓していくシステムである。そして、その過程では、環境への負荷を外部へ転嫁しながら、自然と人間からの収奪を行ってきた(略)
それゆえ、無限の経済成長を目指す資本主義に、今、ここで本気で対峙しなくてはならない。私たちの手で資本主義を止めなければ、人類の歴史が終わる。(略)
いったいあとどれくらい経済成長すれば、人々は豊かになるのだろうか。経済成長を目指して、「痛みを伴う」構造改革や量的緩和を行いながら、労働分配率は低下し、格差は拡大し続けているではないか。そして、経済成長はいつまで自然を犠牲にしつづけるのだろうか。
『人新世の「資本論」』斎藤 幸平 集英社新書

資本主義は「価値」を次々と生み出すシステム。価値とは「使用価値」(ものの有用性)とはまったく別のスケールで、ものに希少性をつけて(ブランド化)、ものをあふれさせ、人々を一生満たされない感覚(不幸)にする。資本主義は、価値の増幅システムであり、人を、自然を搾取する。
この本質がある以上、問題は一向に解決されない。今こそ資本主義を捨てる必要がある。

このように言っています。

また、グリーンニューディールをはじめとする、資本主義システム上で気候変動策や成長を続けようとする限り、どのような対策でも問題の対処に間に合わないとも言っています。
(一方、グリーンニューディール側の言い分としては、社会の価値を変えるようなことこそ膨大な時間がかかる。実効性があるのは資本主義を維持しつつできることをやっていく方が現実的。というもの)
資本主義を捨てることは、それはものすごく大きなパラダイムシフトであり、だからなかなか抜け出せないのです。目の前が崖で災害が後ろから襲ってくる中、まだ大丈夫とその場に居続けるか?身支度をしている時間があるのかもわからない。そんな中、すべてを捨てて飛び降りる勇気がいるのです。

国家だけでは、資本の力を超えるような法律を施行できない(そんなことができるならとっくにやっているはずだ)。だから、資本と対峙する社会運動を通じて、政治的領域を拡張していく必要がある。
出典同

国家(政治)の機能に限界がある。
社会(市民)からの運動が必要。
だから行動を起こす必要がある。
それが脱成長コミュニズムの目指すところとしている。

具体的には次のようなことが実現できるといっています。

使用価値経済への転換
「使用価値」に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する

労働時間の短縮
金儲けのためだけの、意味のない仕事を大幅に減らす

画一的な分業の廃止
人間らしい労働を取り戻すべく画一的な分業をやめれば、経済成長のための効率化は最優先事項ではなくなる。利益よりも、やりがいや助け合いが優先されるからだ

生産過程の民主化
市場の強制から解放されることで、各人の能力が十分に発揮されるようになり…

エッセンシャル・ワークの重視
「使用価値」をほとんど生み出さないような労働が高給のため、そちらに人が集まってしまっている…「使用価値」を重視する社会への移行が必要となる。それは、エッセンシャル・ワークが、きちんと評価される社会である
出典同

脱成長コミュニズムではどのような生活になる?

GDPは減り、商品は淘汰される
現物給付・貨幣に依存しない安定した生活
労働へのプレッシャーがなくなる
自由な時間を手に入れる
相互扶助が生まれる
消費ではない活動により社会的・文化的エネルギーが高まる
資本主義では実現不可能な、全員が豊かになれる

豊かに幸せになれる未来なら、選ばない理由はないです!

最後にあとがきから紹介します。

これまで私たちが無関心だったせいで、一%の富裕層・エリート層が好き勝手にルールを変えて、自分たちの価値観に合わせて、社会の仕組みや利害を作り上げてしまった。
けれども、そろそろ、はっきりしたNOを突きつけるときだ。冷笑主義を捨て、九九%の力を見せつけてやろう。そのためには、まず三・五%が、今この瞬間から動き出すのが鍵である。その動きが、大きなうねりとなれば、資本の力は制限され、民主主義は刷新され、脱炭素社会も実現されるに違いない。
出典同

ここに書かれている「三・五%」とは、3.5%の人が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるという研究結果のことを指します。
最初に読み終わった時、本編よりもこの言葉が一番印象的でした。

自分一人でなにができる?
結局なにも変わらないでしょ?

できない理由やらない理由を言ってもダメ。
知ったからには行動を起こせというメッセージです。
読んだからには何か行動を起こさなければならないです。

この本ベストセラーになりました。
(私としては地味な内容なのでベストセラー連続1位は意外でしたが)多くの人たちも問題の解決方法を知りたかったのでしょう。
多くの読者が、「三・五%」の人になり、それぞれの社会で何かを始めていると思います。

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