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わたしの本棚

私が棚に並べるのは、古風な日本人からたまたま譲りうけた古書ばかりで、元の持ち主が亡くなった方も少なくない。要は私の本棚で一時期お預かりしているだけに過ぎない。そのような絶版ばかり…
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2024年2月の記事一覧

『日本の色辞典』吉岡幸雄 | 紫紅社

 本書は横須賀の古書店で家人が見つけた一冊で、店主があまりに愛した辞典ということで、新本という形で売られていた。吉岡は日本に生まれてきてよかったと感じさせる数少ない先人のおひとりであるが、この本もまた我が國で育てていただいてよかったと素直におもえる一冊になる。  ところで、出版社の紫紅社は昭和48年に吉岡が設立された美術工芸図書出版で、その名からもわかる通り、色のなかで紫を吉岡は最も愛した。そのドキュメンタリーは映画になっており、そのタイトルもずばり『紫』である。  こち

『人は自然の一部である』渋沢寿一 | 地湧の杜

 過日、或る珈琲屋で家人が「その本、『何が自然の一部である』と書いてあるの」と訊ねてきたから、私は「人だね」と無愛想にこたえて、店の本棚からそれをとって渡した。個人的には『AIは自然の一部である』くらいのタイトルがよかった。  注文したアイス珈琲の氷はよく工夫されており、味もたしかであった。しばらくすると、家人が「ねえ、ここから少し讀んでよ」と云ってきたので一讀すると、内容も珈琲と同様、濃いものがあり、私は奥付まで一氣に頁をめくった。  著者は渋沢栄一の曾孫で、以前どなた