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【読書記録】書く仕事がしたい


ぶっちゃけライターって?

これは、ライターのさとゆみさんが書いた本だ。
思ったよりも分厚かった。それだけぎっしりと詰まっている。
私の知らなかった世界がぎっしりと。

書く仕事がしたい p32~p33

そもそも著者といっても作家と作家以外に分かれている。こういう枠組みは最近いろいろな本を読んでわかってきた。でも、こうやって図に表してくれるとわかりやすい。
さとゆみさんは、ライターという職業をこう言っている。

ライターに必要なのは、才能ではなく技術です。
 言い換えれば、私たちはアーティストである必要はなく、私たちが目指すべきは専門技術を持ったビジネスパーソンです。

書く仕事がしたい p34

そうか。依頼を受けて納品する仕事だからビジネスパーソンか。
私も朝子どもたちを受け入れ、帰りに無事にお返しするのが役目だったな。

ぶっちゃけ、ライターというお仕事はどのくらいお金がもらえるんだろう?
ふと、そんな疑問を思い浮かべてしまう。私が知っているのはクラウドワークスで1文字0.5円とかって表示をよくみていたが……、この本にはちゃんとした原稿料のことが赤裸々に書いてあった!(なるほど、なるほど)
そもそも、さとゆみさんは書籍ライターという分野でご活躍中だ。
つまり、誰かに取材してそれを1冊の本に仕立て上げるのだ。そんじょそこらのライターとはきっと違う。他にもいろいろなお仕事を引き受けてきた方だ。だからこそ、業界内のぶっちゃけ話ができるのだ。これぞ、私の知りたかった情報だ。この本を買ってよかった。

仕事を得るための6つの道筋

「ライターになりたい!」と思った時に、まず何から始めるのか?確かに気になる。私が「保育士になりたい!」と思った時は、学校があった。でも、ライターも学校があるのだろうか?凡人の私は知らない。けれど、興味があったら見つかるものだ。意外と名古屋駅周辺にもいろいろあった。
さとゆみさんの周りにはいろいろなライターさんがいるようだ。その人たちのライター人生も含め、こんな道もあるよを6つに示してくれている。

何かしらアクションを

仕事とは、人が運んでくるものだ。だからとにかく人と繋がりをつくらなければ始まらない。そんな感じの6つだった。覚悟を決めれば始まっていく。

「相場感」をもつ

とはいえ、ライターとしての仕事は読者がいてくれてこそ成立する。
どんな人が読んでくれるのか?ここは重要だ。
そもそも売れないと仕事はない。興味を持ってもらうこと。
保育現場を思い出す。確かに、ブロック好きなあの子をままごとに誘った所で、絶対寄ってこないだろう。しかし、鬼ごっこなら喜んで参加してくれる。うまく釣れた。さぁ、その手元のブロックを片付けて外へ行こう。
って、どうやらそんな単純なことでもないらしい。

私の講座にゲスト出演してくださったある媒体の編集長の言葉がわかりやすかったので、その言葉を借りて説明します。
その編集長は
「たとえば、ユニクロを紹介するときに、リーズナブルと書いていいかどうか」これが、相場感だと言っていました。

書く仕事をしたい p150

ほぅ。ユニクロか。ちょっとアシメントリ―な服が好きな私だからあんまりいかないけど、ズボンとかSサイズが揃っているから重宝はするなぁ。そもそもファッション誌はそんな読まないんだけれど……。

彼女が以前担当していたファッション誌Aでは、ユニクロは確実にリーズナブルブランドで、「安くていいものを作る」という文脈で紹介するブランドだった。けれども、現在担当しているママ向けのウェブメディアBでは、ユニクロはデイリー使いするブランドではあるけれど、決してリーズナブル(=安いと感じる)ブランドではない。このメディアで安いと書いて良いのは、GUやしまむら、ワークマンなどだというお話でした。

書く仕事をしたい p150~p151

!?
個人の服の好みなんかの話じゃなく、市場全体のなんとなーくユニクロってこんな価格帯だよねぇ~的な感覚を揃えろって話だった。これが、相場感。
いや、わかるよ。言いたいことは。でもさ、これって難しくない?いわゆる、土地勘みたいなものだよね。相場感……ねぇ。。。メタ認知的な。

相場感は訓練で養える

なんか、悩んでいたらこの先にこんな文章がありました。
相場感は訓練で養える」と。しかも練習ワークまで!

さぁ、お手持ちのファッション誌2冊をそれぞれ20分ずつ読みましょう。(お手持ちがない……)

一番下の「書くときに意識すると良さそうなこと」の欄だけは、このワークの最後に書くらしいです。これをやると、今までパラパラ見るだけだったあの雑誌があら不思議!ちょっと上から「相場感」をキャッチしながら読めるようになることになるでしょう。(そうやって読みたいならね。知ったらもう戻れないから要注意だよ。雑誌をパラパラ読むのも楽しいから。)

犯人しかしらない証拠

さとゆみさんは、書籍ライターです。だから著者にインタビューをすることが基本です。ここが本の材料のすべてになるようで、インタビューのコツもいろいろこの本に書いてくれていました。

ライターの取材でいうと、実際に体験した人しか知り得ない、音や、匂いや、手触りを聞き出すことでしょうか。そういった五感にまつわる言葉を聞いて、それを文章の中に盛り込むと、その場の空気が立ち上がるような、臨場感のあるシーンが書けるように思います。

書く仕事をしたい p177~p178

ちなみに、「犯人しかしらない証拠」とは、もともと島田紳助さんが芸人育成プログラムの中で話していた言葉だそうです。人に読ませたり、聴かせたりする職業の人はこういうちょっとした工夫をされているんですよね。
保育士だって、五感は大切にしていた。子どもたちの発達を促すために、遊びの中に五感を刺激する要素を盛り込んで歌ったり、踊ったり、こねこねして触ったり、びちゃびちゃして騒いだり……まぁ、この後の片付けが大変だけれどもね。

先日、さとゆみさんのセミナーに参加した時この「犯人だけが知っている証拠」が書けるようになると、文章が上達するとおっしゃっていた。
ここが非常に重要らしい。


原稿に小骨は残っていないか?

ライターは書いたら終わりではない。関係者全員のチェックを受け推敲し、なおかつ読者のために、少しでも言葉に敏感になって優しく届ける工夫をしているのだ。これには、頭が下がる。(私はここが大の苦手分野だから)

もちろん、トゲのない文章が必ずしもいいとは思いません。が、書き手の意図しないトゲは抜いていくべきで、そのためには最低限、

※取材相手の不利益になる表現はないか
※取材相手の関係者を傷つける表現はないか
※読者が読んで不快になる表現はないか
※コンプライアンス的に問題になる表現はないか


をチェックする必要があります。

書く仕事がしたい p202
ある経営者の細心の注意の例

言葉に配慮があると嬉しいものだ。だが、なかなか普段は気づかない。言葉は時に刃にもなりうる。もろ刃の剣だ。「ペンは剣よりも強し」とはよく言ったもので、これはペンが武器にもなってしまうという意味でもある。気をつけていこう。うん。

「物語」という暴力

ペンが武器にもなる可能性がある。さらに強いのは、「物語」だ。
例えば、あなたが初対面の方に名刺をもらったとしよう。肩書や名前は言葉でその紙に書いてあると思う。しかし、数日後あなたはその人の役職名と名前を正確に覚えているだろうか?おそらく、多くの人は忘れている。ところが、この人があなたと同じ学校の出身で、嫌いな食べ物もまったく同じで、なんなら自分の親とその人の親も知り合いだったとしたらどうだろうか?
すごく、印象に残って覚えているであろう。あなたの人生の物語にリンクしてしまったのだから。

さとゆみさんは、思考やそれまでのその人の人生経験など言語化されていない状態のものを「気体」と表現されている。それを誰かに話したり、日記にただただ想いを出すだけの状態を「液体」、それを文章にして相手にもわかりやすく整えると「固体」になるという。上手い表現だと思う。
水と想いの比喩が。

自分の思考であれ、誰かの思考であれ、固体になるとそれは人に差し出せるようになります。固体にするというのは、言い換えれば「物語化」することでもあります。物語化して固体になった文章は、時間も空間を超えて人に差し出せるようになります。

書く仕事がしたい p330

名作と呼ばれるような物語、それこそ昔話や神話なんかはこの「物語」の力でずっと語り継がれている。物語は人に覚えておいてもらいやすいのだ。

しかし、弊害もある。
物語には切り取られた側面が必ずある。映画でもそうだろう。編集でカットされたシーンがいくつもある。実は、そのシーンの中にこそあなたにとって重要なメッセージがこめられていたかもしれないのに。

物語になったそれは、いつも現実より少しだけ無駄にドラマティックです。

書く仕事がしたい p331

ここを読んで、思い出すのはアルバムだ。
笑顔でピースばかりの写真の中にある記憶だけがあなたの人生を彩っているわけのはではないから。むしろ、その写真を撮ってくれた人の目線で観察され続けてきたのが本物なのかもしれない。

多くの人はそんな丸見えの姿、恥ずかしくて直視できなかったりする。
たしかに、桃太郎がどんどん大きくなっていく過程で、トイレのシーンとか、寝ていていびきをかいているシーンなんかはだいぶカットされていることだろう。しずかちゃんのお風呂シーンはなぜか許されるが、桃太郎のトイレのシーンは誰にも需要がない。いや、最近はコンプライアンス的にしずかちゃんもお風呂シーンにNGを出しているのではないか。小骨を抜くように。
#me too


こんなに大変な「書く」ということ。
それをしながら生きていくなんて……
それでもやっぱり私は「書いていきたい」。


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