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RB.05 |子どもはことばをどう獲得していくのか

「ことばの発達の謎を解く」
今井むつみ(著)
発売日:2013/1/9

友人に紹介しらもらった書籍。著者の今井先生は慶應義塾大学環境情報学部教授で、専攻は認知科学、言語心理学、発達心理学。特に語彙(例えば"日本語の語彙"と言えば、日本語の単語の総数のことを指す)と語意の心の中の表象と習得・学習のメカニズムを研究されているそうです。ちなみにKAKENで今井先生を探すとまた面白そうな研究がゴロゴロと、興味があれば覗いてみてください。

>本書を読んで

>単語の獲得順
乳児はまず、音の塊から単語を見つけたり、文節の区切りを見つけていくそうです。最初にカタチあるモノの名前から単語の理解が進み(一般名詞から固有名詞)、次にモノの動作を表す単語(動詞)が身につく。その際、オノマトペや覚えた単語からの造語を使用して知らない言葉を補うそうです。
次に自分の状態を表す単語(形容詞)、最後にモノの性質を表す単語(形容詞や副詞)を学ぶ。なお、一貫性のない誤った言葉の使い方を経た後、2歳頃から爆発的に語彙が増え、モノの性質を表す形容詞もこの頃から使われるようになるそうです。

書籍ではことばを学ぶ変遷や言い間違い等を具体的に示されており、かわいらしい言い間違いの例にホッコリするので読んでみてください。


>各言語体系システムは各文化の影響をうける
子どもは1つ1つの単語の意味を他の単語との関係を折込みながら学ぶのですが、そのためには基準となる単語が指す意味とその枠組を知っておく必要があります。単語の意味や枠組みはその文化圏の影響を受け、あることばが示す大枠が定まるとその間を埋めることばの獲得が進み、それがまたことばの枠を修正して語彙や語意が整っていくそうです。

ことばとは辞書的に1つ1つの単語を覚えて身につくのではなく、動的なシステムの中で獲得・修正されて整っていく。というような理解をしました。

意味や枠組みが文化の影響を受けるとは、至極当然なのですが面白く感じますね。日本語の言語獲得システムはどのような変遷を辿るのか、より詳しく知りたいなと思いました。

>オノマトペ 日本人の感覚の解像度は高い?
英語話者と日本語話者で動作に関するオノマトペを作成してもらった比較研究では、普遍性よりも特異性が大きく、オノマトペは各言語体系や単語を表す音に影響されているとわかったそうです。ここでもやはり文化の影響があるのだと思います。

日本語はオノマトペが多い言語と言われますが、身体性や感覚の解像度が外国人と比較して高いのかもしれませんね。もしくは、文化的にものごとを細分化をするのが好きな民族なのかもしれません。良く言えば繊細。悪く言えば神経質。

繊細と言えば、「日本人の味覚が繊細なのは味を感じる味蕾の数が多いからだ」という話もありますが実際に味蕾の数を比較した論文はないそうです(すいません、自分では調べてません)。つまり感覚器の数ではなく、脳がどう処理するかによって味の幅や捉え方が変わるわけです。そして、うまい・まずいを判断する脳の基準は育ってきた文化によって形成されるので、薄味・旨味・多様な発酵食品を楽しむ日本文化圏で育った我々は味への解像度も高く、海外の料理は大味と判断するのだと思います。

>文化によってない言葉がある
最後ですが、「へぇ〜!!」と驚いたのがアフリカのハイコムという部族の話。ある文化圏では存在する言葉/しない言葉があるのは知っていましたが、彼らの場合は自分を中心とした方向”前後左右”という概念/言葉を持たず、”東西南北”というどちらを人が向いていても変わらない絶対的な方角で方向を捉えるそうです。

なんとまぁ・・・でも、あっちそっちと指差し(ノンバーバル)で指示もできるわけで”前後左右”を表す言葉が無くてもコミュニケーションはスムーズかもしれないですね。少なくとも彼らの生活文化の中では必要ないんだろうなと。

上記の例に限らず、書籍では日本語と外国語での言語比較も所々あり面白く読めるので、是非、読んでみてください。

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