ちいさい自分と服
背が低い。
成長期にクラスメイトたちがぐんぐん背を伸ばしてく一方、わたしの背丈は150センチに届かず止まってしまった。
背が低いとなにかとめんどくさい。
背の順ではいつも一番前。整列時に腰に手を当てるポーズをやる人だった。ちょっと恥ずかしい。
高いところのものに手が届かない。冷蔵庫の上とか、掃除するにもひと苦労。踏み台と仲良し。
歩くのが遅い。背が高い、足の長い人と歩くといつも早歩き。目的地に着いた時にはちょっとした運動。
そして一番困っていたのが、服だ。
かわいいって飛びついて買ってみたはいいけれど、いざ着てみたらサイズが大き過ぎるトップス。
腰の位置が違う、ロング丈になり過ぎなワンピース。
売ってあるときのままでは絶対合わない、裾上げが必須のジーンズなどのボトムス。
買ったけれど、着ない服。着るけどなんだか似合わない服。そんな服たちでクローゼットは埋まっていた。
でも、ごくたまに、めっちゃ似合うじゃん!と鏡の前で気分の上がる服に出合えた。ごくたまに。
そういう服を着たときの1日は素敵に巡る。笑顔も出るし、自信がついて、姿勢もなんだかよくなる気がする。
そして数年前、服選びに迷走していた20代のわたしは決めたのだ。
自分に似合う服だけのクローゼットにしたい。気分の上がる服を毎日着たい、と。
だから、測って、調べて、勉強してみた。
まずは自分のサイズを測ってみた。
肩幅、ウエスト、足の長さ。そして似合う服を着たときの袖の丈や裾の丈。
自分に合うネックラインや袖、スカートの形、トップスの肩幅は、丈はどこがちょうどいいのか。スカート丈は膝かくるぶしかすねあたりがいいのか。
測ってみたら、いままでしっくりこなかった服は、肩幅が大き過ぎたり、丈が長すぎることが多かった。似合う服はサイズがぴったり。やっぱりサイズ感は大事だった。自分のサイズを知り、自分に似合う服のサイズを知った。
色やコーディネートも勉強してみた。
参考にしたのはインスタやYouTube。これまではブランドのアカウントをフォローしてみている程度だった。心がけたのは自分と同じような身長が150センチ程度のインスタグラマーさんやユーチューバーさんを探してみること。
服のサイズ感や、コーデの参考に役立った。
次に地元で買える店を探した。
インスタやネットでみた服を通販で買ってしまうこともあったが、サイズや色が期待と違って失敗しやすい。やっぱり試着して買うのがいいと思ったので、自分の好きな系統のブランドを改めて調べて、地元で買える店を探した。新しい店の開拓にもつながった。
サイズをしっかり確認し、お店で試着をして、クローゼットにある服とのコーデを考えて、購入する。
言葉で書くと簡単かもしれないけれど、今までできなかったことをしっかりとやってみた。
そうしたら、クローゼットが段々好きになっていった。なにを着ようかなと鏡に服を合わせてウキウキする日が増えていった。
一番ネックになるのはやっぱりサイズ。デザインも色も好きな服を見つけたのに、サイズが合わなくて諦めるのも多くなった。
だからこそ、サイズも含めて全てが好みの服に出会えた時、その服は素敵な1日を約束してくれる服になってくれた。厳しいオーディションを勝ち上がってきたのだから。
全てのクローゼットの服が、その素敵な服ばかりになったわけじゃない。
買う時に失敗することもまだある。
でも、服選びに迷走していたあの頃よりは、自分に似合う服を身につけて、うきうきとする毎日が過ごせるようになったのだ。