外部根拠律のパラドクス
定義
Aの外部根拠:A以外の事象のうち、Aを立証する能力を有するもの。
外部根拠律:「すべての事象はその立証に外部根拠を必要とする」という規則。
外部根拠律の自己矛盾
外部根拠律が真であると仮定すれば、すべての事象には外部根拠が必要となる。このとき、外部根拠律自体にも外部根拠が必要となり、その外部根拠にもさらに別の外部根拠が必要になる。この連鎖はすべての事象に対して無限に続くこと(無限後退)になり、最終的に外部根拠律自体を立証するための外部根拠が見つからないという結論になる。
これを解決するために公理体系を導入したところで、公理という概念自体が「外部根拠を必要としない(=自明である)」という性質を持つため、外部根拠律の定義に反してしまう。よって、もし外部根拠律を真とみなすならば、その擁護に公理を用いることはできない。
他にも、「すべての事象は…」という全称命題の生成を禁止するルールを導入したならば、そもそも外部根拠律は命題として成立できなくなる。したがって、外部根拠律の真理性を主張する際は、外部根拠律を生成できる論理体系の範囲内で議論されなければならない。
また、外部根拠律を信じる者は、おそらく直観的に受け入れやすいから信じているのである。ここで、直観的に受け入れやすい外部根拠律を擁護するために、直観的に受け入れにくい公理体系を導入するのは矛盾である。
次に、外部根拠律をメタレベルに据えることで階層的に矛盾を避けようとしても、そのメタ階層に位置する外部根拠律の外部根拠は不明のままだ。メタレベルの階層をいくら追加しても、無限後退が起こるだけである。
以上より、もし外部根拠律を真と仮定するならば、外部根拠律自身を含めたすべての事象は立証ができない。逆に、もし外部根拠律を偽と仮定するならば、外部根拠なしで自分自身を立証できる事象の存在可能性が担保されることになる。
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