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上海アートシーン 2021年3月(4)

BANK MAB Society

Bankでは3月13日より3つの個展が開催中。

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まずローレンス・レック Lawrence Lek (b. 1982)の「AIDOL」。Lekは中国系マレーシア人でロンドン在住のアーティスト。RCA修了展のとき、クラスメートの展示で参加していたし、その後もいろいろな場所で見かけました。ゲーム制作ソフトをつかった3Dアニメーション、映像インスタレーションの作家として世界の最前線にいる一人。

今回はDivaという伝説の歌姫のストーリーが語られます。

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レコードも販売しています。音楽そのものもきちんと作ってある印象。

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大規模なコンサートを表現したシーンなど見応えありました。EDM、ボーカロイドが音楽市場を席巻する現在、この映像の中で展開する情景は限りなくリアルに感じられ、引き込まれました。会期中もう一回行って2ループくらい聴きたい…。

次の展示はNik Kosmas (b. 1985)。アメリカ生まれ、現在はベルリンと上海を拠点に活動するアーティスト。初めて見ましたがなかなか強烈でした。

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アメリカンコミック、ヒーロー映画、フィギュア、プラモ・・・そういうカルチャーの印象がありつつ、よく見ると奇妙だったり、グロかったり。

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漫画やアニメに生々しい(しかも上手な)表現が増えてきているので、時代の雰囲気としては自然なのかもしれない。もちろんこの現象は、自分たちの世界から生々しさが隠されていっていることと表裏一体になっています。みんなデジタル技術でいろいろシミュレーションしてみたくてしょうがない。

3つめはTim Crowley (b. 1972)、イギリス出身、北京在住。キュレーターとしても仕事をしたことがあるクラウリーは、架空の展覧会のポスターをすべて手描きで描いています。これらの展覧会期ははるか未来で、実在のアーティストたちの名前が描かれていますが、画像は必ずしもそのアーティストの作品そのものでも、”らしい”ものでもなかったりします。

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現代美術に詳しい人たちは、「プププ、このメンツでこのタイトルの展示!しかもこの場所とは!でも2117年なら…ありうる…のか!?」なんて想像をふくらませて楽しめるかもしれません。(ちなみに私はそこまでオタクではなかったようで、、、むしろ、イギリス人ってこういう”文脈モノ”好きだなぁなんて思ってしまった。偏見でしょうか。だとしたらごめんなさい…)

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いずれにせよ、ちょっといたずらっぽい、遊び心にあふれる作品群でした。

さて、このあと複数のオープニングで賑わう西岸地区に向かいます。

ShangART

Jiang Pengyi 蒋鹏奕 (b. 1977) の写真の展示。一瞬、「CG?」と思ってしまうくらい整った風景ですが、現実を写しています。

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ゴビ砂漠で撮影しているそうです。すごい光景ですよね…。そんなふうに、すごい光景だと思わせてくれる彼の写真の確かな力を感じます。

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メイキング映像もありました。デジタルの時代にあって、彼はとてもオーガニックな写真制作にこだわっていましたよ。

そして

この日は近隣のDong Gallery, Ota Fine Arts, Pond Society, Qiao Spaceでもオープニング。Qiao SpaceでLi Binyuan 厉槟源に会いました

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2020年ヨコハマパラトリエンナーレ「そのうち届くラブレター」に参加してくれたLi Binyuanですが、北京在住の彼と、去年はコロナで結局会えてなかったんですよね・・・。

Li Binyuanの作品はまだ今月末まで見られますので、ぜひご覧ください!短いパフォーマンス映像です()。こんな解説も書きました(この本もダウンロードできます)。↓

これらの作品で、リ・ビンユアンは大きなものに挑戦している。(中略)
とても大きなもの。すごく頑固で、ほとんど動かすことができないもの――。それは私たちがもう変えられないと思い込んでいる、社会的構造かもしれない。あるいは、私たちがこうと思い込んで疑わない、無意識のバイアス。疑問を持つ前に受け容れてしまっているもの。挑む前に諦めているもの。
それは本当に変えられないのか?
(金澤韻「それがどこかへ届くまで」より 「そのうち届くラブレター」ブック所収)

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この写真を撮ったあと、彼はほかの参加作家たちとケーキ投げにいそしんでいました。そんな光景を見ながら、今日も上海アートシーン全体の若さというものを感じたのでした。



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