なぜ「ビジネス書マニア」の人生は変わらないのか?
知識を増やしても「成長」したわけではない
多くの人が勘違いをしていることがあります。
それは「知識を獲得すれば変われる」「勉強すれば変われる」「偉い人から話を聞けば変われる」ということです。
これは「錯覚」です。
ただ知識の量が増えているだけで、本質的な「変化」にはつながっていません。
ここを正しく認識できないと、本を読んだり、偉い人の話を聞いたりするだけで自分が変わったような気分になるので、とても「危険」なのです。
知識の量は行動にブレーキをかける
「危険」とまで言うのには理由があります。
それは、無駄に知識の量だけが増えると行動にブレーキをかけるようになるからです。
薄い知識だけがあって本質を理解できていない。そういう状態では、ものごとを一面的にしか見ることができません。別の状況になったときに応用がきかない。するとむしろ、その知識が行動をおさえる理由になってしまうのです。
「あの社長がセミナーでこういうことをやってはいけないと言っていたから、やるべきじゃないと思います」
「本にこれはNGだと書いてあったで、やめたほうがいいと思います」
これは、ものすごく薄い知識です。どんどん行動が鈍くなっていく。経験のない状態で知識だけがどんどん増えていくことは「危険」なのです。
啓発系セミナーは意味がない
まわりにセミナーマニアやビジネス書マニアはいないでしょうか?
彼らは知識はたくさん持っているでしょうが、おそらく動けていないでしょう。「起業準備セミナーばかり行って、気づけば5年経っていました」という笑えない人もいます。変化は知識から生まれるわけではないのです。
セミナーに行くこと自体は悪くありません。ただ、セミナーで聞いたことを実際に試してみなければ意味がない、ということです。
ダメなのは、研修に参加して熱い気持ちになって「俺は変わるんだ!」「俺は成功するんだ!」と気持ちだけ上がってしまう人間です。よって自己啓発のセミナーの多くは意味がないと言わざるを得ません。ただ「期待の前借り」をしているようなものなのです。
どんなに知識があったとしても、実際のビジネスでそのとおりになることはまずありません。M&Aの知識があって「このM&Aはうまくいかなさそうだ」というのは、正論なのかもしれません。しかし知識から導き出した「予想」は外れることもあるし、前提条件や対象がひとつでも違えば、「結果」は変わってくるのです。
人は「経験」とともにしか変わらない
最近は、上司が部下に指示するときも「指示する前に部下がしっかり納得するまで話をしましょう」とか「腹落ちしないと部下は力を発揮できません」などと言われたりします。
しかしそれは「ゴールのない戦い」です。なぜなら、いくら事前に話しても「経験したことがないことはわからない」からです。
部下「う〜ん、これじゃちょっと私、がんばれそうにありません」
上司「そうか、どうやったら、がんばれるかな?」
そんなやりとりを見かけますが、無意味です。
やってもらう前から「話す」ことに時間を使う必要はありません。まずは、リーダーとしての覚悟を持ってとにかく「実行させる」ことです。実行させた先に「成長」がある。「変化」があるのです。
人は経験とともにしか変わらない。部下が経験する前にリーダーがいくら話しても意味がないのです。
そしてあなたが部下の立場なら指示をされたら「まず動いてみる」ことです。動いてみなければ、変化も成長もありません。動く前から先回りして「ああでもない、こうでもない」と考えることは時間の無駄です。
「能力」と「成功」は比例しない
私は「人間の能力」というものに懐疑的です。
かつては「能力が高いほうがいいに決まっている」とずっと思っていました。しかし、「能力の高さ」と「成功の度合い」はかならずしも関連していないことに気づいたのです。能力が低くても成功する人もいれば、すごく能力が高いのにぜんぜん成功しない人も世の中にはたくさんいます。
人は誰でも成長できます。
能力よりも、素直で、柔軟性があって、変化し続けることのほうがずっと大切です。「能力が高くて、知識も多いけれど、動けない」という人よりも「能力が多少低くても、ちゃんと結果を積み上げられる」という人間が勝つのです。
「変わろう」と思ったときに必要なのは、意志やモチベーションではありません。気持ちを高めれば「変われる」と思っている人は多くいますが、まったく逆です。
必要なのは「体を動かす」ことです。
自己啓発セミナーに行きまくっているような人たちの問題は、動かないことです。
しつこいようですが、行動を変えなければ何も変わらない。それが「事実」です。
いくら気の持ちようが変わっても、変わったかどうか決めるのは「他人」です。「他人から見ての」行動が変わらない限りは、成長できません。内面をいくら変えても「変わった」とは言えないのです。セミナーの帰り道で自分が変わったような気になっても、まったく意味がありません。
夢は経験することで見つかる
夢を見つけるため、やりたいことを見つけるために、本を読みまくったりセミナーに通ったりする人もいます。
ただ「人生の目的」というものは、人から話を聞いたり、本を読んだりして定まるわけではありません。
どういうときに定まるか?
それは、あくまで「経験」していく中で定まるのです。人生のなかでいろんな経験を重ねるなかで「ああ、これが俺の夢だな!」となる。研修に参加したり、本を読んだりして、見つかるものではありません。それは「本物の夢」ではないのです。
私自身もそうでした。
私はもともと「独立しよう」とは思っていませんでした。しかし、あらゆる経験をして行くなかで、偶然「識学」という組織マネジメント手法に出会い、それを世の中に広めることを一生の仕事にしようという「夢」が定まったのです。
起業家や夢をかなえた人は「夢を持つことが大事ですよ」と言います。ただ、夢を見つけるまでに彼らはいろいろな失敗や経験を積み重ねてきたわけです。数々の経験があったから夢が見つかった。そこをすっ飛ばして「夢を持とう」と言っても無理なのです。
本を読んでも、映画を観ても、目標は見つかりません。自分探しの旅にでかけて、自分が見つかった人もおそらく一人もいないでしょう。むしろ自分を見失うのがオチです。
多くの人が「目標」を見つけてから動こうと思ってしまいますが、逆です。「目標」を見つけるためには、まず動くことが大切というお話しでした。
*
【新刊のお知らせ】
「識学」の哲学・ノウハウを踏まえ、やるべき「行動」までを示した『リーダーの仮面』が11月25日、ダイヤモンド社より発売されます。