01: ただ怠けているだけ じゃないの?
加藤隆弘(九州大学大学院医学研究院精神病態医学准教授/九州大学病院「気分障害ひきこもり外来」主宰/医学博士・精神分析家)
久しく更新していなかった「みんなのひきこもり」連載を再開しようと思って、木立の文庫の津田さんと相談したところ... この機に発信スタイルも刷新して【note】連載にしませんか! ということでリニューアル再開となりました。
前回の原稿が2020年8月だったので、10ヵ月ぶりです。この一年で私たちの生活は大きく様変わりしました。以前の日常を取り戻すまで、もうしばらくかかりそうです。今回は、《ひきこもり》と同様に私が臨床と研究に力を入れている《新型/現代型うつ》を紹介します。
従来、日本では「勤勉」「生真面目」「凝り性」の方がなりやすいと言われてきた《うつ病》(メランコリー型うつ病といいます)と違って、《新型/現代型うつ》には、「職場や学校で抑うつ症状をみずから訴えてすぐに休んだりするものの、授業や業務以外の時間や週末などには割と快適に生活できる」という特徴があります。そのため、周りから『ただ怠けているだけじゃないの?!』と、陰口をたたかれることすらあるようです。
《新型/現代型うつ》という病気の概念の元になる〈ディスチミア親和型うつ病〉が提唱されたのは2005年のことです。この概念は、九州大学精神科精神病理グループの先輩であった樽味伸さんによって提唱されたのですが、無念なことに樽味さんはこの直後に急逝されたのです。私はこの時期、樽味さんとデスクを隣にしていたのですが、亡くなってしまったて時の遣る瀬なさ…、いまでも忘れることができません。私たちは、樽味さんの後進として、彼の萌芽的な概念を現代の精神医療・精神医学に取り入れる活動をおこなってきました。
樽味さんは《新型/現代型うつ》の病前性格として
(1) もともと勤勉ではない
(2) 社会におけるヒエラルキーや階級を毛嫌いしたり避ける
(3) 社会的な役割のない状態を好む
(4) 他罰的傾向
(5) 漠然とした万能感
といった特徴を挙げています。
こうした特徴は《新型/現代型うつ》の方々だけでなく、現代人に共通する気質かもしれません。私自身にもこうした傾向が全くないとはいえません。みなさん、いかがでしょうか?
つづく
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