トマト、「苗から育てる」から「種から育てたい」へ(自然栽培の記録vol.3)
土を耕さず、肥料もほとんどやらず草を刈って敷いて土作りをしていく自然栽培。貸農園で土作りのために緑肥にあれこれ挑戦しながら次に興味が出てきたのは「種から育ててみたい」ということでした。まずはナスやピーマンに比べて比較的発芽が楽というトマトからやってみることにしました。
種はホームセンターで売っている「アイコ」というミニトマトの品種を買って、3月中旬に種をまいて発芽までは室内の暖かいところに置き、発芽してからは日中はベランダで日光に当てて育苗しました。トマトの育苗には2か月かかるので5月のゴールデンウイークに植え付けたいとなると、3月中旬の種まきはちょっと時期が遅かったかもしれないのですが、思い立った時にはもう3月の中旬でした。
夏野菜の植え付けの時期になり、ナスやピーマンの他、トマト2株は市販の苗を植え付けました。やせた土地で育つトマトも肥えた土を好むナスやピーマンも、植え付けて2週間ほどは葉が黄色っぽくなって弱々しかったのですが、前に借りていた方の残肥があったのでしょうか、根付いた頃からは順調に育ちました。
家で育苗していたトマトは1か月遅れの6月に植え付けました。5月に植え付けた市販の苗はもう青い実がついていました。
種から育てたトマトの苗が13ポットもでき、せっかく育てた苗がもったいないと、畑に植えなかった残りの苗はすべてベランダでプランターで育てることに。ベランダがトマトだらけになりました。もちろん、洗濯物は栽培中は部屋干しです!
その後の成長は市販の苗も、自分で育てた苗もあんまり変わらないかも?と思えるくらい、予想外に順調でした。
そして、2年目は「固定種」のトマトを種から育てたいと思うようになりました。固定種とは、毎年種を採り続けて野菜の性質がほとんど固定された品種のことです。種を採ることに興味が出てきた私は自家採取できる固定種を選ぶことにしました。1年目に育てたミニトマトの種はいわゆるF1品種で、同じような品質のトマトを作れるのは1代限り。種を採ってまた育てても、去年と同じような品質のトマトができるとは限りません。
今回選んだ種は固定種の「ワーンミニトマト」。昨年の反省から2月に種を播きました。まだ寒い冬の種まき、発砲スチロールやビニールで保温して発芽させました。ところが発芽が揃いません。前回と同様にジフィーポットのセルタイプに播いたのですが、前回はどのポットからも発芽したのに今回は発芽率が悪いのです。これがF1品種との違いなのかと思いました。
その後の育苗も芳しくなく、12ポット分の種まきをしましたが2ポット分しか育たず、5月の植付け時期になってもやっと葉の枚数が5枚ほどのとても小さい苗でした。それでも、畑に植え付けて市販苗と比べてみました。
写真の右側青いマーカーが市販苗、黄色いマーカーが固定種で育苗したものです。写真のアングルが毎回違うのですが、悪しからず。
一か月後の6月、市販苗は2株とも2段目まで青い実を付けています。それでも市販の苗は昨年を比べると茎も細く葉も黄色っぽく育ちが悪いです。固定種育苗の方は一つは一段目に実が付き、もう一つはやっと小さな実が付いたところです。
7月、市販苗は2本とも3段目。固定種育苗は一つが2段目、もう一つは1段目が一つ実がついてからその後実がつかず。
その後ひょろひょろながらも育って、7月中旬に固定種のワーンミニトマトの一本の実が色付いて収穫できました!そのうちの一つは種を採るのに完熟させ、来年用に種を採っておきました。
自然栽培2年目は1年目に比べると収量は落ちましたが、固定種を種から育てて収穫し、種を採ることができました。そして、3年目は自分で採った種でトマトを育てたい!と思うようになりました。
2月下旬、種まきの準備です。今度は発芽率をアップさせるために、湿らせたキッチンペーパーに包んだ種を床暖房の上に置いて温めて発根させてからセルトレイに播きました。
それでも発芽率は悪く、12粒播いて発芽したのは4粒。その4つを大事に大事に育苗しました。
まだまだ小さいのですが畑に植え付けました。苗の周りは緑肥のクリムソンクローバーや雑草で草マルチをしました。
その後、市販の苗を2株植えて育ち方を比べました。やはり市販苗の方が実付きもよく、色づきもよく、「苗半作」とはまさにこの事と実感しました。種苗会社さんの発芽の揃った種や、植え付け時期に合わせて成長具合の揃った苗を作る技術はやはりすごいなぁと改めて思いました。
固定種のワーンミニトマトも数個色づきましたが、病気になって茶色の斑点ができました。病気の主軸を切って、株元の脇芽を伸ばして再生を試みましたが花も咲かずダメでした。
調子よく見えた市販の苗も一つが急に枯れこみました。立ち枯れ病と思われます。自然栽培では色々な科の野菜を混色するので連作障害は出にくいといわれています。私は本の通りに夏はトマト、冬はその場所にキャベツやレタスを植え、夏と冬を同じ畝でトマト→キャベツ→トマト→キャベツ……と繰り返しきたのですが、やはり3年目となると連作障害がでたのでしょうか。
結局、自分で種を採った固定種ワーンミニトマトは二株のうち一株は花が咲いても実にならず、もう一株は実がついても実付きが悪く、最後は二株とも病気になって枯れてしまいました。市販苗の方は実がついて赤くなりましたが、8月に入り一株が急に枯れこみ、もう一株もその後病気になりました。収量は年々減り、1年目がいちばん育ちも良く収穫量も多かったです。
今後どうするか考えると、草を刈って敷いて土作りをして、同じ畝で夏にトマト、冬はキャベツとさらに繰り返していくと、あと数年経ったらトマトが順調に育つ土になるかもしれません。または、やはり連作障害の対策として輪作をしたらいいのかもしれません。一人で本や動画を参考にして、ああでもない、こうでもないと試行錯誤してきましたが、さすがに心が折れてきて、ここでさらに実験を続ける気力が出てきませんでした。自分の土地なら頑張れるかもしれないけど、どんなに頑張って土作りを続けても、ここは借りている土地…などと後ろ向きな考えがぐるぐる頭の中を回っていきました。やはりうまくいかなくても、仲間がいていろいろ相談できる環境もあったほうが気持ちが楽になると思います。最初は自然栽培を楽しんでいたとしても、農法にとらわれて苦しくなっては続きません。ある程度収穫があった方がいいので自分なりの工夫をする柔軟さも必要だなと思いました。
でも、まずは本の通りに実践してみたからこそ、そのさじ加減がわかってきたのかもしれません。最初に誰かからこんなアドバイスをもらったとしても、頑固者の私の場合は「まずはやってみなくちゃわからない」と聞き入れなかったでしょう(笑)
何はともあれ、このトマトの栽培経験から種から育てる楽しさ、育苗の奥深さがわかったことは大収穫です!
自然栽培の記録シリーズはこちら↓
自然農との出会い(自然栽培の記録vol.1)
一年目の緑肥の失敗から学ぶ(自然栽培の記録vol.2)
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