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私の好きな「陰陽師もの」3選〜王道から幻の作品まで、現代人の心が求める陰陽師たち〜
北国はようやく桜が開花する頃合いとなりました。
桜は毎年春が来るたびに、人の心を和ませてくれるかけがえのない存在ですね。
さて、この春は毎年恒例のコナンの映画はもちろん観ました。
しかし、「陰陽師もの」が好きな筆者、コナンの映画以外にも楽しみにしている映画があります。
それが「陰陽師0」です。
これまで筆者は、夢枕獏さんの小説「陰陽師」シリーズをはじめ、様々な「陰陽師もの」の作品を観てきました。
そこで、映画「陰陽師0」の公開を前に、筆者が好きな「陰陽師もの」についてご紹介したいと思います。
映画「陰陽師」(2001年)
安倍晴明役:野村萬斎さん
これを見ずして「陰陽師もの」は語れない!王道中の王道の作品
陰陽師と聞いてパッと思い浮かぶのは、野村萬斎さんの安倍晴明、という方も多いのではないでしょうか?それほど、野村萬斎さんが安倍晴明を演じた映画「陰陽師」シリーズ(滝田洋二郎監督)の影響は計り知れません。陰陽師の人気を不動のものにした夢枕獏さんの原作「陰陽師」シリーズに基づいた映画であり、「陰陽師もの」を語るならここを避けては通れません。
「陰陽師」では、安倍晴明と、最高のバディとなる貴族・源博雅(演:伊藤英明さん)との出会い、そして二人が都を祟りから守る戦いを描いています。都を祟りから守る不老不死の巫女役が小泉今日子さん、都を祟りで支配しようとする陰陽頭・道尊に真田広之さんと超豪華キャストですね。
それにしても。
恋した男性に捨てられた女性が、恨みを募らせて鬼となったり。
同期の出世に嫉妬した男性が、その嫉妬の心につけ込まれて操られたり。
呪いや化け物といったものは常に、人の心の良からぬ感情に巣食うのものだと、まざまざと見せつけられるようです。
こういうものを見せられたら、やっぱり人を恨んだり嫉妬して人に嫌がらせするのって、自分に全て返ってくるから絶対にやるべきじゃないなと。
そう思わずにはいられなくなりますよね。
人は心一つで、鬼にも仏にもなりまする。
この映画の見どころは、なんといっても野村萬斎さん演じる、安倍晴明の凜とした佇まい。神秘的な雰囲気を纏った野村萬斎の晴明は、本当に晴明ってこんな感じだったんじゃないかと思うくらいに幻想的です。狂言師というだけあって、神楽のような晴明の舞も本当に美しい。その美しさたるや、フィギュアスケーター界の絶対王者・羽生結弦選手もフリーの演技に取り入れたのはあまりにも有名ですね。
オリンピックの公式YouTubeチャンネルで、羽生結弦選手の演技の動画が公開されています。この時の平昌オリンピックは見事金メダルでした。
氷上の陰陽師の華麗なる舞も、必見です。
舞台「INSPIRE陰陽師」(2020年-2021年)
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安倍晴明役:大沢たかおさん
2020年末から2021年始、コロナ禍を祓うべく生まれた幻の舞台!
2020年の大晦日から、2021年の1月6日の期間限定で上演された舞台、「INSPIRE 陰陽師」。2020年は、新型コロナウイルスパンデミックにより、私たちの日常がこれまでにないほど大きく揺らいだ年でした。まさに、そんな未曾有の年を「祓う」という意味を込めて、「除災招福」をテーマに企画されたのがこの舞台です。
ストーリーとしては、前半が平安パート、後半が令和パートです。平安に生きた安倍晴明が、藤原兼家(ふじわらのかねいえ)や蝉丸(せみまる)といった仲間と共に、謎の日食に立ち向かいます。そして、同じく謎の日食が続く令和の時代によみがえり、世界と人の心に巣食う闇を祓うという物語です。晴明以外に、平安に生きた兼家や蝉丸も令和では生まれ変わりや末裔として、晴明の活躍をサポートするのも面白いところです。
実は、筆者は実際に日生劇場に観劇しにいきました。
年末年始、大沢たかおさんをはじめとする豪華な俳優陣が舞台に集い、一年を祓う。これまでの舞台ではなかったような大掛かりな映像装置とファイバービーム、最新の音響設備などを贅沢に用いられており、まさに神々しいまでの異空間がそこにありました。
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大沢たかおさん演じる晴明は、これまでの晴明公のイメージの中でも圧倒的な存在感。呪文や手印も物凄く本格的で、本当にお祓いと同じエネルギーがありそう・・・と思わずにはいられない説得力がありました。
「闇無くして蛍は輝かず、儚き命だからこそ愛おしい。人の世もまた同じ。
だからこそ、この一瞬一瞬を大切に生きる。闇も光も、共にあってこそなのだ。」
幕が降りた後も拍手が鳴り止まず、みんなスタンディングオベーション、そして3回ものカーテンコール。
コロナ禍に生きてきた私たちの心に、まさに突き刺さる舞台体験であり、「陰陽師って、現代だからこそ一層考えさせられるテーマだな」と、しみじみと思わせられたのでした。
参考)INSPIRE 陰陽師公式パンフレット
音楽朗読劇 READING HIGH 「YOUNG WIZARDS」(2022年)
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安倍晴明役:宮野真守さん
全員が主役級!豪華声優陣による、2日限りの贅沢な朗読劇
READING HIGHとは、最先端テクノロジーを用いた演出と、人気声優陣の饗宴を楽しめる、全く新しい音楽朗読劇。その5周年記念作品のテーマが、まさに陰陽師でした。歌舞伎「蘆屋道満大内鑑」に材をとり、若き日の安倍晴明が幼馴染の蘆屋道満とともに都の鬼や狐と戦う様、そして、晴明と母親の葛の葉狐(くずのはきづね)の親子の絆を描いています。
安倍晴明役は、マルチに活躍されている声優の宮野真守さん。今回は晴明の幼馴染であり、晴明の良きバディの蘆屋道満役は中村悠一さんです。その他、諏訪部順一さん、浪川大輔さん、鬼頭明里さん、津田健次郎さん、そして朴璐美さんと、出演者全員が主役級の人気声優。声に加えて、表情、身振りと手振りといった全身で役を演じられている声優さんたちは、俳優さんと全く遜色ありません。同じ人、同じ衣装なのに、一人二役こなしている方もいて、声優さんの凄さを「これでもか!」と味わえる舞台です。
そんな声優さんの影響もあるからなのか、「呪術廻戦」や「鬼滅の刃」などの要素が入っているなと感じる、新しい陰陽師ものでした。
<源頼光>
人の心に巣食う禍々しきもの。目には見えずとも、皆の心にあるそれを「おぬ」と言います。隠れると書いて、「隠(おぬ)」。「隠(おぬ)」が転じて、「鬼(おに)」となる。
〜中略〜
<晴明>
あれは我らの心が生み出しし、我らの、醜き心の写し鏡。
<藤原道長>
人がいる限り、鬼が生まれる・・・キリがないではないか!
<道満>
それでも斬って斬って、斬りまくるしかねえのさ!
<源頼光>
誰かが誰かを憎む数だけ鬼を斬る。
<道満>
誰かが誰かを憎む度、この手は、血の色に汚るる、か。
「人の心の醜い感情に鬼(→呪い)が宿り、人に害をなす」「人がいる限り、鬼(→呪い)が生まれ、キリがない」というのは「呪術廻戦」。
その鬼を、人の手で斬って斬って斬りまくるしかないというのは「鬼滅の刃」に通ずる内容だと思いました。
どちらも現代人の心に刺さる、令和の大人気アニメですよね。
ところで、ファイバービームを用いて五芒星が映し出されるところは、まさに「INSPIRE陰陽師」のよう。やはりファイバービームと陰陽師、すこぶる相性が良いです。最先端技術による美しい映像技術は、安倍晴明の華麗な術を表現するのに、とてもぴったりですよね。
参考)READING HIGH 公式ホームページ・READING HIGH 「YOUNG WIZARDS」特製ブックレット
最後に〜現代人が陰陽師ものを求める理由〜
いかがでしたでしょうか?
あまり知られていない作品を含め、陰陽師ものが好きな筆者が選んだ3作品をご紹介しました。
この3つの作品の紹介文で引用した劇中の言葉。
それらはいずれも、私たちの心に刺さるものばかりではないでしょうか。
恨み、妬み、嫉み、などといった負の感情は、人間ならば誰しも持ちうるものです。しかし、それを飼い太らせてしまうと、自分の身を滅ぼすことになる。陰陽師が相対するのは、平安時代、それらが具現化した鬼、化け物、そして呪いです。
人間の心のありようは、1000年経ってもきっと変わらないのでしょう。
その救いを、平安時代では陰陽師に、
現代では哲学に由来する自己啓発本などに、
人々は求め続けてきたのかもしれません。
恨み、妬み、嫉み、などといった負の感情は、結局のところ、他者との関係性など周囲の環境に起因しているからです。
例えば。
「夜と霧」のフランクルが説いたように、「物事に対して自分がどんな意味を与えるのかは自分次第」だと思うこと。
「嫌われる勇気」で有名なアドラーが説いたように、「他者の評価や存在を気にして生きるのは、他者の人生を生きることになること」と気づくこと。
そういった先人の考え方が、自分の中の負の感情から解き放たれる方法でもあるでしょう。活躍の眩しい他者や、自分の思い通りにならない他者に対して、自分と他者との境界を明瞭にすることです。
陰陽師ものは、他者との関係性など周囲の環境から生まれる負の感情にとらわれないことの重要性を、わかりやすく私たちに語りかけてくるようです。
自分がどう生きるかは、自分次第なのだと。
陰陽師。
それは現代においては、人間の正しい心の在り方を問う存在なのかもしれません。
そして、陰陽師の華麗な術の演出に、最新の映像技術はうってつけでしょう。
令和の時代になっても陰陽師ものが映像化されるのにはこういうわけがあるように、私には思えてならないのでした。