研修医に伝えたいこと〜救急外来を生き抜く〜③「失神のレッドフラッグサイン」
早くも本日で10月も終わり。
そして2023年も残り2ヶ月という事実を突きつけられると、呆然としてしまいますね・・・。
10月31日のハロウィーンが終われば、明日からクリスマス商戦で街の色も移り変わっていくでしょう。
そうすれば、いよいよ冬も到来です(北国の冬は恐ろしい・・・)。
さて、これまで「症候別レッドフラッグサイン一覧」を作ることを目的に、noteを投稿してまいりました。
おかげさまで反響をいただき、誠にありがとうございます。
さて、今回はその第3回。テーマは失神です。
第2回でもふれた「めまい」は、まず失神を除外するところから始まります。
<注意>
あくまで、「救急外来を生き抜くための必要最低限」に絞ってのコンテンツであり、救急外来でもすぐに使えるように、パッと一目でわかることを大事に、シンプルな構成にしてあります。
そのため、あえて割愛したところもございますことをご了承ください。
もちろん、先輩方からのご助言はいつでも大歓迎です。
お気づきの点がありましたら、ぜひコメントでご教示ください。
失神
まずはこの流れ!
症例:一過性に意識消失して運ばれてきた患者
→意識障害やけいれんでないなら、
心原性失神と出血による起立性低血圧を除外せよ!
①バイタルサインチェック
↓
②本当に失神か、意識障害やけいれんではないか
→意識障害やけいれんなら、別の鑑別疾患へ
↓
③まずは全例で心電図
→心電図異常があれば速やかに循環器内科コンサルト
↓
④ルートキープして血液検査、補液、エコー(FAST、心エコー)、便潜血
↓
⑤身体診察、できれば目撃者に病歴聴取
🚩レッドフラッグサイン→心原性失神かどうか!
(内科外来マニュアル第3版「意識消失」p251本文より引用・改変)
・心疾患の既往歴
・突然死の家族歴
・失神前の動悸・胸痛
・前駆症状が全くない
・仰臥位での発症
・労作中の発症
・心雑音あり
・心電図異常あり
では、何を持って心原性失神らしい心電図異常ととらえるか。
それは京都ERポケットブック第2版に良いまとめがあったので、引用します。
<心電図異常>(京都ERポケットブック第2版 p198より引用・改変)
・薬剤や運動習慣がないのに、HR<50/minの徐脈
・2枝ブロック、MobitzⅡ型房室ブロック
・PR間隔>0.24s
・QRS間隔>0.12s(以前からの完全右脚ブロック除く)
※前述のPR間隔の半分以上、と覚えればいいですね!)
・PVC三連発、非持続性心室頻拍
・Brugada型心電図、J波症候群、不整脈原性右室心筋症
・WPW症候群
※各心電図異常の詳細は成書に説明を譲ります。
レッドフラッグサインは、やはり致死的な心原性失神に絞りましたが、それが除外できれば、次は出血による起立性低血圧も否定しましょう。
FAST+心エコーは、上記両方をパッと調べられるのでぜひやりたいところです。血液検査を施行し貧血がないか確認し、適宜便潜血も検討しましょう。
最低限これだけは!
⭐️一過性意識消失
→全例で心電図を施行し、心原性失神>出血による起立性低血圧の順に否定せよ!
最後に
今回は失神=一過性意識消失をテーマに取り上げました。
第3回まで見てきてわかるように、真っ先に否定すべきは心血管疾患です。
今までは、「突然発症」の病歴が肝でしたが、失神はそもそも発症が突然なので、今までとはちょっとアプローチが異なります。
なにしろ、失神だとその当時の記憶がないので、患者自身から有用な病歴聴取が得られないことも多いからです。
だからこそ、大事なのは目撃者の情報です!
心電図をとりつつ、目撃者に発症時の様子の問診をまずはパパッと行うのが、一番効率が良いと言えるでしょう。
さて、2023年も残り2ヶ月。
いつだって後悔なくいきましょう!
参考文献
・内科外来マニュアル第3版「めまい」「意識消失」
・京都ERポケットブック第2版「失神」