研修医に伝えたいこと〜救急外来を生き抜く〜⑥「咽頭痛のレッドフラッグサイン」
昨年、夜間救急外来の研修医指導を担当したことでまとめるようになった、「〜救急外来を生き抜く〜レッドフラッグサインまとめ」。
以降は病棟や日中外来勤務がメインとなったため、なかなか更新できておらず、大変失礼しました。
この度、再度夜間救急外来の研修医指導を担当するようになったため、満を持して復活します!
復活後の初回は、最近コロナが増えてきているため、「咽頭痛のレッドフラッグサイン」がテーマです。
今までの「レッドフラッグサインのまとめ」は、以下のマガジンにまとめてあります。
<注意>
本まとめは「救急外来を生き抜くための必要最低限」に絞ってのコンテンツであり、救急外来でもすぐに使えるように、パッと一目でわかることを大事に、シンプルな構成にしてあります。
そのため、あえて割愛したところもございますことをご了承ください。
もちろん、先輩方からのご助言はいつでも大歓迎です。
お気づきの点がありましたら、ぜひコメントでご教示ください。
咽頭痛
まずはこの流れ!
症例:咽頭痛を訴える患者
<救急外来でのmust rule out>
・5 Killer sore throat(急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Lemierre症候群、Ludwig's angina)
・アナフィラキシー
・急性冠症候群、大動脈解離
<診療の流れ>
①呼吸困難感や吸気性喘鳴(stridor)など、A(Airway)の異常がないか確認⇨あれば速やかに気道確保へ!食物や薬剤摂取後の急速な咽頭痛であれば、アナフィラキシーも疑うこと!
↓
②全身状態やバイタルサインチェック、tripoid positionやsniffing positionではないかどうか
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③嚥下時痛があるか、つばを目の前で飲み込んでもらう
「つばを飲み込んだときに、喉の痛みが強くなる」かどうか=嚥下時痛があるかどうか
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④以下のレッドフラッグサインをもとに問診・咽頭診察
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⑤レッドフラッグサイン該当あれば、早めに耳鼻科コンサルトと造影CT撮影を検討 ※急性喉頭蓋炎が疑わしい場合、臥位にすると気道閉塞の危険もあるため、造影CT撮影の前に耳鼻科に相談が無難でしょう。
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⑥嚥下時痛にも咽頭所見にも乏しかった場合、急性冠症候群や大動脈解離の放散痛の可能性はないかも、必ず検討しておく(心血管リスク、心電図など)。
(出典:誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた第2版 p.10、medicina Vol.59 No.4 2022増刊号「フィジカル大全」p.164 咽頭痛)
🚩レッドフラッグサイン→5 Killer sore throat(気道閉塞及び深頸部感染症)かどうか!
🌟呼吸困難、stridor(吸気性喘鳴)
🌟tripoid position、sniffing position
🌟流涎、唾液の貯留
🌟こもった声、嗄声
🌟開口障害(指が縦に2本入ればOK)
🌟片側の咽頭の激痛で、唾も飲み込めない(=強い嚥下時痛)
🌟咽頭所見が軽度にもかかわらず重症感がある⇨特に急性喉頭蓋炎や咽後膿瘍など
🌟片側の扁桃腫脹や口蓋垂偏位がある⇨特に扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍など
🌟前頸部に著明な圧痛、斜頸
(出典:京都ERポケットブック第2版「咽頭痛」p.234、姫路赤十字病院「危険な咽頭痛」)
最低限これだけは!
🌟唾も飲み込めないような咽頭痛
⇨唾を目の前で飲み込んでもらい、左右差のある激痛があるなら必ず咽頭を観察せよ!
最後に
今回は咽頭痛のレッドフラッグサインを取り上げました。
咽頭痛と聞くと、昨今の流行では必ずコロナも鑑別に上がりますが、それ以外の重篤な咽頭痛も除外も素早くできる必要があります。
私自身、発熱外来で何度も咽頭痛の患者さんを診る中で、扁桃周囲膿瘍が紛れ込んでいるケースを何度か経験しました。
いずれも、目の前で唾を飲み込んでもらい、片側の激痛があったために気付けたのでした。
発熱外来で大量の患者さんを診るにあたって、もしかしたら全員に咽頭所見を取る余裕がない場合もあるかもしれません。
その場合は、いかにして咽頭所見をとるべき患者を絞るか、という点で、今回のレッドフラッグサインが参考になればと思います。
参考文献
・誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた第2版 p.10
・medicina Vol.59 No.4 2022増刊号「フィジカル大全」p.164 咽頭痛
・京都ERポケットブック第2版「咽頭痛」p.234
・姫路赤十字病院「危険な咽頭痛」
https://himeji.jrc.or.jp/data/media/himeji-jrc/page/diagnosis/naika/20211102-2.pdf(最終閲覧:2024年7月19日)