『いつものデート』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年11月9日(再放送:11月13日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(騒々しい店内の定食屋)
店員「ご注文はお決まりですか?」
男「エビフライとヒレカツランチと、ロースカツとチキン南蛮ランチ」
店員「は、はい」
僕はいつもランチでは2食分頼む。
そして大体いつも、隣に座ったサラリーマンやOLたちに『そんなに!?』と驚いた顔をされる。
少ししたら僕の目の前には大量のカツが並んだ。
僕はベルトを緩めて、今ならひょっとしたら全部食べられるんじゃないかと思ったりする。
そしてゴマを擦りそこにソースを入れる。
さて、準備は整った。
女「お待たせ~」
男「良いタイミング。いま来たとこだよ」
僕らの会話を聞いて、隣のサラリーマンやOLたちが『そういうことね』となーんだという顔をする。
細い身体の僕が全て食べきるところを見たかった彼らは少し拍子抜け気味に僕への興味を失って、目の前のランチを味わっている。
男「ゴマ、擦っといたよ」
女「彼女にあまい(笑)」
男「過保護かもな」
女「ありがと」
会社が近くなので、僕らはランチのタイミングと場所を合わせて一緒に食べる。
それが僕らのデートコースだ。
自動ドアの開く音。
そこはTUTAYAの店内。
女「ねえ、これ見たことある?」
男「あー学生の頃見たよ、でもあんま覚えてないなあ」
女「もう選んだの?」
男「これ」
女「菊次郎の夏?」
男「たけし映画ってサブスクなんだよ」
女「見たことない」
男「そっちは?」
女「えーまだ決まらない。あーじゃあこれにする」
私は何度も見たDVDを選んだ。彼は『またこれ』って呆れながらも分かってたように受け取った。
女「ねえ、この黄色いカーテンの方、入ったことある?」
男「いや、あるよそりゃ」
女「うっそ、いいなあ」
男「入ったらいいじゃん」
女「え、どういうの借りるの?」
男「うるさいよ」
女「女優さんで選ぶの?それとも…」
男「うるさいって」
自動ドアの開く音。
外を雑踏。
週末の夜はTUTAYAに行ってDVDを借りて一緒に見る。
私も彼も上下スウェットで、もちろん行き帰りは手を繋ぐ。
女「ねえ、コンビニ寄ろ」
男「アイス買う?」
女「わかってるねえ」
それが私たちのデートコースだ。
おしまい
※こちらの小説は2021年11月9日放送(21:00~21:30)
LOVE FM こちヨロ(こちらヨーロッパ企画福岡支部)でラジオドラマとしてオンエア https://radiko.jp/share/?sid=LOVEFM&t=20211109210000
※こちヨロは土曜日13:30~14:00でも火曜日の放送をREPEAT放送でお届けしています。
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