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「愛に生きる」を読んで

私が住んでいる家の近くに「スズキメソード」のバイオリン教室があり気になってしょうがなかった。というのも中学生か高校生の時の国語の教科書に下記の鈴木鎮一先生の「愛に生きる」が載っており感銘を受けたからである。直ぐに、本屋に行き、講談社現代新書がまだ黄色の表紙の時の本を購入して何度も読み直したものだった。
最近気になっていたので、電子図書を探してみたら、見つけることが出来たので購入して再読をした。
読んでいくうちに、若い頃は何に感動や感化されたのかということが湧き上がって来た。読むとこの本の主題である生まれ持っての才能などなく、環境や本人のやりようによっては克服できるというようなことが多く書かれている。恐らく若い頃は、将来に対する希望などもあり、自分の可能性も信じて、心が動かされたのかも知れないと思われる。人間の可能性や才能能力ということに対してひた向きな努力を惜しまないことやそのための環境を整えることが必要でしょうあると言う一つの教育論であることは間違いない。但し今読んでみるとそれよりも人間的な生き方や藝術に対する考え方などが一番に心に染みて来る。恐らく還暦を過ぎ、上昇志向的な考え方から色々な経験を踏まえての心の安定志向を求めるようになって来たのかも知れない。勿論心の更なる安定には人間としての成長を続けなければならないことは言うまでもない。また、心のリセットや心の中の錆や汚れを落とす為にも、このような本を再読するのはとても良いと思った。藝術に向かい合う心構えや藝術と人間との結びつきつきなど、深い洞察力や人間としての信念に感動を覚える。

「生まれたことも、やがて死ぬことも、大自然のすることであった。それは人間個々の責任ではなかった。ひとりひとりの人間は、ただ生きる責任だけをもっている。わたしは人生をそう見るのです。」
「人間が愛し合う、慰め合う──その愛情のなかに人生がある。」
「芸術の実体は、そんな高いところ、遠いところにあるものではなかった。それはもっとも日常的なわたし自身にあったのです。わたし自身の感覚の成長と心のあり方と働きと日常の起居──それがわたしの芸術そのものであり、そうでなければならなかったのです。」
「みんなの愛情のなかに生きる。それを唯一のよりどころとする人生にだけ、人間として生きる大きな価値がある。」

「芸術の実体は、そんな高いところ、遠いところにあるものではなかった。それはもっとも日常的なわたし自身にあったのです。」

「ほんとうに自分を欺かない
ひとを信じてすこしも疑わない
愛することだけを知って憎むことを知らない
正義を愛し、ルールを絶対に守る喜びを求め、明るく生き生きと生きている
不安を知らず、つねに安心のなかに生きている」

—『愛に生きる (講談社現代新書)』鈴木鎮一著

私もクラリネットを少し齧っているが、この言葉には刺さった。ただ吹けるだけではダメでそれ以上が必要であることを噛み締めた。

「さあ、ひけるようになった。これから、この曲をりっぱにひけるようにするレッスンが始まるのですよ。」

—『愛に生きる (講談社現代新書)』鈴木鎮一著

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