【ショートショート】どうしてゾンビが現れるようになったのか
ここ一年日本の中で通称ゾンビと呼ばれる夢遊病のような病気の人が街で徘徊する姿が目撃されるようになった。精神疾患らしいが夜中に突然人に近づき首を絞めたり噛みつこうとする。
警察は毎晩パトロールを強化している。しかし深夜に徘徊するゾンビのことは意外と報道されていない。
光の園の園長はうすうす気づいていた。この一年やたらと園の前に捨て子が多いのは、通称ゾンビと呼ばれる人達と関係があることを。
ゾンビにかかってしまった母親が、我が子がひとりになるかもしれないと思いこの園の前に赤ちゃんを置いて行くのではないかと。
シングルマザーの方でも生活が落ち着いてくれば我が子を迎えにくる人もいるが、この一年誰も来たことがない。
しかし園ではもう子どもや赤ちゃんを預かれないほど増えている。これ以上増えると他の園にお願いしないといけなくなるが、ゾンビ騒動で他もあまり空いてないような気がする。
ある日園で3歳のBくんが赤ちゃんをたたいたりしていた。園長はBくんに「ここではみんなに優しくないと住めないんだよ。赤ちゃんにこんなことをする子は出て行ってもらわないといけないね」といつもよりキツめに叱った。
深夜の見回りをしていたCさんが慌てて園長の所まで来て言った。
「Bくんが夢遊病者みたいに歩き回っています!声をかけたらものすごい顔で睨んできて、僕に向かって噛みついたり叩いたりするんです。前にテレビで見たゾンビ患者にそっくりです!」
慌てて廊下に出ると他の職員にもうめき声をあげながら叩いたりしている。園長がBくんに近づいたらすかさず園長の手に噛みつき少し血が滲んだ。
「とにかく他の子供と別に、鍵のかかる部屋に入れないと」
お遊戯室の倉庫にBくんを入れて鍵をかけた。夜が白々と明け始めて職員達は少し安心した。
朝はいつもと同じだ。学生は朝食を取り学校に行く。もっと幼い子達は園で職員達と勉強したり遊んだりする。深夜に起きてBくんの対応をした職員のCさんは眠くてあくびばかりしているので、園長に叱られた。園長も眠かったせいか、Cさんにはキツく日頃の態度のことまで言った。
そしてまた深夜になった。昼には普通に戻っていたBくんはうめきながら歩き回っていた。その後をCさんもうめきながら歩いていた。叫んでいるかと思うと絶望したような表情も見せながらだんだん凶暴になっていった。
よく聞けば二人とも小さな声で何か呟いている。
「園長〜」
(999)
KAさん達が楽しそうにゾンビネタで書いておられたので、私も書いてみました。ゾンビ嫌いやし、みなさんと捉え方違いますが。文字制限むずいですね。こんなんでもわかってもらえますかね?
*サムネイルはhappy100さんの力強いイラストをお借りいたしました。
ありがとうございました。
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