見出し画像

扇谷選手の狂気的なトレーニングを67のメタ分析に照らし合わせると

最近YouTubeのおススメに出てきた筋トレ動画に衝撃を受けた。「こんな粘り見たことない」常人であればとうの昔に降ろしてしまっている重りを持ち替え差し替え挙げ続ける。

筋トレ歴8年。初挑戦の日本男子ボディビル選手権4位、そしてその2週間後のジュラシックカップ2024では2位の成績を収めている。扇谷選手である。

彼のトレーニングの特出した点は「超局所的ハイボリューム」
3 つ以上の種目を休憩なしで連続し実行するジャイアントセット。✚段階的に重量を下げていくドロップセット。このふたつを組み合わせ普通60秒ほどで終わる1セットを6~8分(1部位3セッション40分)の長時間やり続けるスタイルが特徴だ。

呼び方について高強度インターバルとも言えるように思いますが今回はジャイアントセットでまとめ、また複数の種目、重量が組み合わされたものを1セットと呼ぶと誤解が生じるため1セッションと呼ぶようにします。

疑問が湧いた。あんなやり方やって良いのか?ジャイアントセットの魅力は短時間でより濃密なトレーニングを可能にすること。欠点は万人には不向きなことです。

ボリュームと頻度が筋肥大と筋力増強にそれぞれどう影響するか?67の研究結果をまとめたメタ分析によれば筋力増強の頻度について多すぎる場合、およそ週2回を超えたところでなだらかな鈍化がみられる。またボリュームについては週5セット以上やってもほぼ影響を受けていない。
続いて筋肥大の場合。頻度の影響はほぼ受けていないが対照的にボリュームの影響は直接的に多大なものとなっている

筋力と筋肥大は別々の課題です。重いものを持ち上げるには筋量のほかにも神経系やリフティングテクニックを磨く必要があるため頻度の低いストレートセットが欠かせない。一方、筋肥大を念頭に置くのなら頻度の高いジャイアントセットでハイボリュームを稼いぐのが成長には適している。頻度の影響は無視していい。

ところでハイボリュームといえばオーバーワークの話がよくあがりますが、そのボリュームを保てるかどうかは個人差が大きい。具体的には年齢と回復力、家庭環境や仕事の状況、食事や睡眠の質。これらを十分に考慮したとすれば週43セットまでボリュームと筋肥大は生の相関関係にある頻度はどうあれハイボリューム自体が有害である根拠はどこにもありません

例えば週1回で筋トレをしていた人が週2回にしてみたら筋肥大をおこしました。原因は何でしょう?頻度が増えたから?違いますよね?ボリュームを倍に増やしたからです。言い換えると月曜日に10セットまとめるよりは、火曜日に5セット、金曜日に5セットと分割したほうが良いと考えるでしょう。1日で10セットやるより2回に分けた方が回復が促進されボリュームが上がるから。これは神経系やリフティングテクニックが未成熟であれば、なおのこと回復力を考慮して頻度を上げたプログラムが最適だと言える。ただし筋肥大はボリュームに依存しているため、次のステージへ上がるためには
どこかのタイミングで(大抵3,4年くらい筋トレすると)超ハイボリュームを組み込むのが自明の理になっています。(それができるかは別にして)ジャイアントセットなら同じ時間で1.5~2倍近くのボリュームを筋肉に送り込める。

完全なボリュームスタイル至上主義。受け売りながら私も実践しておりますがセッション中、数の概念は吹き飛んで苦しみの他に何もない。インターバルの確保もパフォーマンスの追跡も息絶え絶えであやふや。セッションのはじめこそ大人しいもののし終えるころには踏ん張りもきかず死に物狂いに試される。

考慮する点としてジャイアントセットは単関節種目向きの奇策であり多関節種目では怪我のリスクが上昇します。なので四頭筋狙いの1セッションではレッグエクステンション、ブルガリアン、シシーなどを組み合わせますが、そこにバーベルスクワットを入れ込んだりはしません。また一般的な肉体改造においては週8~12セットもすれば十分な成長は見込まれるため過激な理想化にも注意は必要です。


いいなと思ったら応援しよう!