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両親と過ごした3週間

両親が8月の終わりからイタリアにきて、3週間を一緒に過ごした。
約8か月ぶりに会う二人は以前と全く変わらず、とても元気だった。
夫や兄家族、友達と一緒にイタリアの色んな場所を巡った。
ベルガモ、ベネチア、チンクエテッレ、ジェノバ、ナポリ、ポンペイ、そしてローマ。
両親にとっては海外が新鮮で毎日発見の連続。
観光名所に行くたびに「すごいねー!」と何度も声に出したり、日本と違うとこを発見するたびに「面白いね!」とか、「なんでなの?」とか。
生活するためにイタリアにきた私も、この3週間は旅行者としてのイタリアを見れた気がした。
イタリアは日本と違って全てのことが遅い。チケット売り場で待たされ、レストランで待たされ、ホテルで待たされ。
両親は「すごい遅いんだねー」と言いながらも不満を口にすることはなく、辛抱強く待ってくれた。
土地の郷土料理は毎回「美味しい、美味しい」と言って笑顔で口に頬張り、毎日お腹一杯になるまで食べた。
両親と周遊したイタリアはとても楽しかったが、それ以上に私の印象に残ったのは、両親の過ごし方そのものだった。
二人はいつも一緒に笑っていた。テレビを見て同じところで一緒に笑い、くだらない話をしては笑い、夫家族が団欒している様子を眺めながら笑っていた。
帰国日前日。ふと寝室に目を向けた。ベッドの上で二人仰向けになり、スマホを上に掲げながら一緒に何かを見ている両親。
そんな光景を見て、日本で過ごした家族の日々が、ここイタリアにもあるように思えた。
帰国当日の朝は、母の口数が少ない。私の家族はきまっていつも、お別れの瞬間に弱い。
マルペンサ空港。搭乗手続きに時間がかかり、完了したころにはお茶する暇もなく、そのまま保安検査場に向かった。
「ありがとうね、またね」と、一瞬握手を交わしてすぐに両親は立ち去った。二人がゲートに吸い込まれて見えなくなった後、胸の奥がキュッとした。
帰宅後、両親がいない私の家はやけに静かだ。夫にお別れの時の話をぽつぽつ話していると、少しだけ涙がこぼれた。

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