芸術家たちの南仏:2 /川村記念美術館
(承前)
本展で注目すべきポイントと思われたのが、出品作のすべてを日本国内の所蔵品でまかなっていること。殊に、地方の公立館からの借用が目立つ。
私立館では大川美術館(群馬)や池田20世紀美術館(静岡)などもあり、所蔵先は全国各地にばらけている。
ピカソに関しては彫刻の森美術館(箱根)、Kanzan gallery(東京)からまとまった数の立体造形を借りており、また川村記念美術館の館蔵品もそれなりに含まれているが、基本的には特定のコレクションに依存しない、総力戦のようなリストだ。
これらの作品は、各館で一定の収蔵方針に則って集められたものであろうが、常日頃のコレクション展示において、それらを「線」や「面」として捉えきることはけっして容易ではないだろう。多くの公立館で、西洋美術はいくつかある柱のひとつにすぎないからだ。
この展覧会では「南仏」の旗のもと、共通項をもった「点」が集められて「線」や「面」をなし、テーマが深く掘り下げられているのだ。
コレクションの活用、その活性化という意味で非常に意義深いと同時に、日本の公立美術館の底力を感じさせてくれるといえよう。
ピカソやマティスのような超有名作家だけではない。
たとえば、アルベール・アンドレ《マルセーユのプティ・ニース》(1918年 国立西洋美術館)。黄味を帯びた白い塗り壁と紺碧の湾とを描いた、「南仏の光」の章名にふさわしい佳品であった。
この作品、所蔵館のデータベースを含めて、ウェブ上に画像が1枚もない。出品歴を見ても、館外での展示機会は近年ほぼないことがわかる。
作者のアンドレは、日本ではルノワールのお友だちとしてかろうじて名前が出てくる程度。南仏に個人美術館があるが、日本での知名度が高いとはいえない。
こういった埋もれがちな作品の活用が積極的にはかられている点も、好印象だった。(つづく)