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生誕110年記念 松本竣介デッサン50:1 /大川美術館
群馬県桐生市の私立美術館・大川美術館。
日本近代絵画、殊に松本竣介(1912~48)のコレクションで知られ、年に1度は峻介がらみの展示を催している。“桐生まで、竣介を観に” というのが、ここ数年のお決まりである。
2018年10月からは、1年間をかけて4部作の展覧会「アトリエの時間」「読書の時間」「子供の時間」「街歩きの時間」が開催された。
竣介のアトリエに残されていたモノを移設し、制作の現場をよみがえらせる「竣介のアトリエ再見」展示も、このときスタート。当初は「時間」4部作の閉幕と同時に引き上げるはずだったものの、非常に好評で、ご遺族のご厚意もあって長く続けられた。
生誕110年を記念する今回の竣介展では、「デッサン」にフォーカス。「そうきたか!」と思わせる変化球である。
「時間」4部作で全容をカバーできたわけであるから、次なる一手をどうしようか、企画者は思案されたことだろう。
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「50」という、入試対策の英単語帳みたいな割り切り方が新鮮である。
「100」はキリがいいけれど、量が多くて緩慢に陥りがち。数合わせ的な感じもする。
「50」は身近な数字で、まさに「精選」といった感があるではないか。モノクロームのものが主体となって延々と続いていくだけに、集中力が持続しやすいという意味でも、ちょうどいい塩梅といえよう。
いま作品リストをみると、50のデッサンのうち館蔵品は10点、寄託品は8点で、あとはすべて個人蔵。外部からの借用が多いことに気づかされた。
このなかには、ご遺族が所蔵するものも相当数含まれていると思われるが、館蔵品や寄託品だけで充分に成り立ちそうでもあるところを、大川コレクションから選んだ「ベスト50」ではなく、「オールタイムベスト」の「50」としているのだ。
油彩よりもデッサンのほうが、現存点数ははるかに多い。選ぶのは、よりたいへんということになる。油彩を主体とするよりも、さらに労作の展示といえよう。
50のデッサンに、デッサンに関連する16点の油彩、スケッチ帳7冊を加えた構成が、本展ではとられていた。
図録は、「時間」4部作の図録とまったく同じ判型で、デザインも似せてある。
本棚に並べやすいというだけでなく、それに続くもの、5部作めといったポジショニングが、少なからず意識されているのであろうか。
竣介だけを取り上げた大きな企画は、大川美術館では、あのとき以来。「竣介のアトリエ再見」も本展の閉幕後、年度内に撤収されてしまうという。
春の足音が聞こえはじめた3月はじめの暖かな日、桐生の街を訪れた。(つづく)
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※油彩16点のうち館蔵6点。寄託1点、その他9点とスケッチ帳は個人蔵。
※「時間」4部作の図録は求龍堂の制作。今回は、自前とみえる。