日本の風景を描く ―歌川広重から田渕俊夫まで―:2 /山種美術館
(承前)
展示は「風景表現の新たな展開」という章に突入。
以降の全作品、近現代の絵画はすべてこの章に含まれている。日本画の専門館である山種美術館としては、ここからが本領発揮となる。
驚かされたのは、しょっぱなから油彩画が登場したこと。この館で油彩を拝見するのは、今回が初めて。
黒田清輝、安井曾太郎、佐伯祐三、荻須高徳が1点ずつ。手薄な分野で、なかなか体系的にとはいかないが、よき絵との出合いはちゃんと用意されていた。
レストランを描いた佐伯の油彩。
下の画像では、だいぶ赤が浮いてしまっている。2階の塗り壁を白に近づけたつもりで、ご覧いただきたい。
「文字と線のパリ」と呼ばれる、第2次滞欧期の作。本作においては奔放に暴れる文字の線よりも、どちらかといえば建物の構造を決定するタテヨコのたくましい線に魅かれるものがあった。横72センチと大きな絵で、1点でもたいへんな存在感。
「日本の風景を描く」という大テーマからは外れるけども、東京ステーションギャラリーの佐伯祐三展の興奮冷めやらない頃で、うれしい出合いであった。
安井曾太郎《初秋遠山》は、鉛筆の線に淡く水彩が差された晩年の小品。37年ぶりの展示とか。
肩の力が抜けた、やさしい絵だ。アメーバのようなふしぎな区分けで、土地の高低や植生、光の当たり具合などの違いを表しているところが、セザンヌに大いに影響を受けたこの人らしくておもしろい。絵はがきを机に飾りたいなと思ったけれど、残念ながら取り扱っていなかった。
この頃の安井は奥湯河原に画室を構え、当地で没している。アーティゾン美術館所蔵の《湯河原風景》に描かれる山容とも似通っており、本作もまた、湯河原のアトリエで描かれたか。
——「他には、どんな洋画を所蔵しているのだろう」と、期待させるに充分な作品たちであった。
どれくらいの総点数かわからないが、洋画だけの展覧会を、いずれ拝見してみたいものだ。(つづく)
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