みんな大好き! 宗達・光琳&柿右衛門様式:2 /東京黎明アートルーム
(承前)
1階奥には《籬(まがき)夕顔図屏風》をはじめとする3点が。いずれも、尾形光琳の作。
籬がかたちづくる四角形と金箔の正方形が、モザイクのように律動する。そのすき間から夕顔の蔓がひゅるひゅると伸び、奔放な曲線とたくさんの四角形とが好対照をみせている。
モチーフはこれだけ。光琳らしい思いきりのいい表現で、やまと絵屏風の伝統も感じさせる。あるいは、対になるもう一隻があったかもしれない。どんな図だったろう。
《梅竹図団扇》は、小品ながら完成度の高さを感じさせる。
団扇のかたちの範囲内に、めいっぱい枝を広げる白梅と竹。先ほどの籬にからみつく蔓もそうであったが、植物のもつ横溢する生気、生命力といったものを強く印象づける。
松竹梅の松だけがなくて、思わず「惜しい!」と声をかけたくなるけれど、縁起物には違いない。
残る1点は水墨の《宝船図》で、こちらも縁起物。ちょうど1年前の展示でも、お目にかかっている作品だ。
地階の展示室には、やはり昨年拝見したニッコリ顔の大黒さんや福禄寿さんの図も。どれも軽やかな筆の動きが楽しい水墨画で、これから新年を迎えるにふさわしい画題である。ひと足早く、お正月気分になれた。
宗達は、先日の五島美術館「西行」展でたくさん観てきた《西行物語絵巻》の断簡2点が出色。
全4巻のうち3巻分が出光美術館に、残る1巻分が分割されて諸家に分蔵される「出光美術館本」。室町期制作の先行作例をもとに、宗達がみずからの画風で描いたもので、抑え気味ななかに、隠しきれない宗達風がみえる。
長旅から京に戻った西行。旧宅の庭先で、小さかった松の木が苔むした老木となっているのを見つけ、歌が口をついて出る——派手さはなけれど、いい場面の断簡だ。
もう1点の断簡は、同じく第十二段の《小倉山観楓図》。こちらは紅葉の赤がまぶしいほどで、きらびやか。対照的な一幅となっていた。
こうしてみると、宗達およびその工房作には、後世に分割されて断簡となったり、ばらばらにされたりしたものが多いことに気づく。
2系統が知られている《西行物語絵巻》に、59図が確認されている《伊勢物語図色紙》、『源氏物語』全54帖を六曲一双屏風で完全に絵画化しながらも各帖ごとに切断されてしまった《源氏物語図断簡》……
東京黎明アートルームではこれらの断簡をひととおり所蔵しており、本展ではすべて同じケース内で観ることができた。
断簡のよさは「みんなで楽しめるようになること」。ひとりじめするのでなくみんなで、本物を楽しむことができる。
これはつまり、後発のコレクションであっても、まだ追いつける余地があることを示しているともいえよう。
柿右衛門のような一品制作とは異なる製品に対しても、同様のことがいえる。「同手品(どうてひん=同じ手の作品)」が存在するからだ。
東京黎明アートルームは「若い」コレクションで、あの断簡、あの同手品がたくさん集められている。もちろんそれだけでなく、一品制作の逸品だっていくらでもあるのだけれど、こういった面に面白みを見出す鑑賞方法も、また一興と思われるのである。
※断簡について書いた過去の記事
※「同手品」について書いた過去の記事
※1年前の光琳のレビュー。スマホはいまも健在です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?