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peromi_10
あれもこれも:2
(承前)
――11時過ぎ、横浜そごうでそごう美術館「近代日本洋画の名作選」。黒田清輝から鴨居玲まで、ひろしま美術館所蔵の日本洋画を鑑賞。教科書的な構成と思いきや、途中から偏り。銀行というお堅い施設の美術館が裸婦画を多数収蔵している驚き。佐伯祐三や須田国太郎、岡田三郎助などがよかった。岡田の作は旧福富コレクションの《あやめの衣》に通ずるもの。福富展への予習が進む。
総武線快速で鎌倉まで一本。西口から徒歩で鎌倉歴史文化交流館「鎌倉大仏~みほとけの歴史と幻の大仏殿~」へ。かの鎌倉大仏がかつては建物内にあったというのは有名な話だが、発掘調査の結果を踏まえて大仏殿が初めてCGで再現された。そのお披露目展。大仏の発願から鋳造、荒廃と復興、鎌倉観光のアイコンとなった近代までをひとつの部屋でみっしり紹介。鎌倉大仏の造立と東大寺の関係性が、鎌倉大仏と同工の梵鐘によっても裏づけられる点に興味(さらに、金峯山寺の梵鐘も同工)。狭いながらも濃厚、高密度な展示。CGは別室で。幻の大仏殿は、禅宗様の典型的な仏殿であった。ペンディングにしていた過去の図録3冊を購入。ハンディなA5サイズに研究成果が(こちらも)みっしりで好感がもてる。
近くの「もやい工芸」で民藝のうつわを漁る。海鼠釉の小片口を購おうか迷い、断念。似たものを持っている。鎌倉山を下り、踏切を渡って小町通りへ。混雑を避け、ジグザグのルートで鏑木清方記念美術館へ。
お目当ての展示は「随筆『こしかたの記』刊行60年記念 清方が愛した江戸、東京。人、暮らし。」。当ブログの由来ともなった『こしかたの記』を引きながら、その記述に合う作品や素描を展示するもの。展示室一室の小さな美術館だが、特別展のたびに毎回、他館が所蔵する清方作品を借用し、その紹介に努めている。今回は近代美術に強い平塚市美術館から2点を借用。リーフレットに採用された《小園夏趣》の麗しさ、みずみずしさに感銘。しばらく、机上に置いている。閉館まで観て辞去。他の観覧者には、誰も会わなかった。まっすぐ帰宅。
つらつらと書きながら、こうした、時系列以外にこれといって脈絡のないような日記調の記述も、気分が楽ちんでよいものだなと思った。
それはさておき、この貴族ぶりである。こんなことを休日のたびに繰り返している。暢気なものだ。これだけ贅沢をしておいてなんだが、このルートをわたしなりに採点してみたい。PDCAというやつだ。
今回は、前日に立てた計画通りのルートをなぞった。欲を言えば、気になっていた小料理屋にも寄りたかったところだが、その店は折しも休業中であったのでよしとする。また、未知・未踏の場所もどこかに入れることができれば、さらに充実の行程になっただろう。時間的な制約もあったのだが、もう少し早く家を出れば、鎌倉のことであるから、行ったことのない寺のひとつにでも寄れたはずだ。そして、鎌倉大仏の展覧会に行ったのだから、実物の鎌倉大仏も観たかった。もちろん、何度か行っている場所であるが、知識を得たあとは、さぞ見え方が違ったであろう。「ある寺社をテーマにした展覧会+その寺社」は黄金ルート。悔やまれる。
とはいえ、全体的には満足で、75点くらいはつけたい。
「あれもこれも」が、おおむね達成できているからだ。