ステイホームの絵描き:1 ULALA IMAI EXHIBITION MELODY /PARCO MUSEUM
平日休みが発生しうる職場に身を置くようになって、月曜日に開いている美術館がどこであるか詳しくなった。
都内でいえば六本木界隈やデパート展が中心だが、他にも穴場がなくはない。毎週水曜定休の東京都庭園美術館がその代表格だった。
ところが、庭園美は先日からついに月曜定休に切り替えてしまったらしい。足並みを合わせずに館を開けるメリットがそう高くはないと、検証づけられたのだろう。
危うく無駄足になるところだったが、行くつもりだった庭園美のラリック展は、徒歩圏内の目黒区美術館でもうすぐはじまる「包む」展と併せて訪ねることにすればよいと気づけたことでもあるし、よしとしよう。ここはひとつ、気分を切り替えて別のプランを練ろうではないか、と情報サイトをスクロールしていたところ……見つけてしまった。渋谷はPARCO MUSEUMで、今井麗さんの展示が開催中であることを。
今井麗さんは、わたくし断然いち押しの平面作家。今井さんが描くのは、代名詞ともいえるトースト、果物や目玉焼きといった気取らない食材・料理に、彼女の部屋にたくさんあるフィギュアやぬいぐるみ、それに庭木や雑草といったもの。徹底して身近にあるものを画題としてとりあげるーー今井さんは「ステイホームの絵描き」だ。
身のまわりにある静物や自然、たったそれだけで絵画世界が成り立ってしまう。彼女は、日々の生活を構成するピースを愛情をもって見つめ、手を変え品を変えながらそこに小さな楽しみを見いだしていく達人なのだ。
昨年1月、オペラシティの白髪一雄展に行った際、併設展示で彼女の個展をたまたま観て魅かれるものがあった。ショップでは当時出たばかりの画集『gathering』の購入を少々迷った。
私家版の手の込んだ装丁ゆえ高額な単価であったし、そのときのおでかけの主目的はなんといっても白髪一雄で、こちらの展示もたいへんに充実、頭のなかは白髪一雄でいっぱいだった。そんなこともあって、今井さんの『gathering』購入はペンディング案件となった。
その後は今井さんの展示情報をキャッチするたびに、ずいぶんといろいろなギャラリーに足を運んだものだ。京都・祇園のホテルで開かれた展示にも行った。なんの意地か知らぬが芳名帳にもツイッターにも頼らなかったのだが、気づいた範囲ではすべて足を運んだ。
今井さんはまだお若いとはいえ人気は上々とみえて、開会早々でも売約のシールがつかないものはほとんどないほど。ごくごく近いうちに、各方面でひっぱりだこになる。間違いない。
その注目度を示すように、どの会場でも『gathering』は品切れで、あのときの判断をひどく後悔していた。しかし、どこぞの版元が作品集の出版を企画しているとも仄聞しており、おとなしくそのときを待とう、間違っても『gathering』をヤフオクやメルカリで20,000円も出して買うまいと心に決めていた。
その「どこぞの版元」の正体こそが、PARCO出版だったのだ。
出版を記念した展示会が、今回の「MELODY」である。
(つづく)