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【猫の日】 わが家の「猫ちぐら」

 2月22日は「ニャンニャンニャン」で「猫の日」。
 きょうは、わが家のお猫様・さとるのために……ワクチンの接種に行ってきた。年に一度、義務づけられているものだ。
 病院嫌いのさとる。まだ午前中ながら、一日分の仕事を終えたくらいの気分で、この記事を書いている。

ごほうびのおやつにかぶりつく

 さとるは飼い主に似て(?)、非常に頑固なところがある。だめなものはだめ。
 だからこそ、通院ひとつとっても骨が折れるわけだが、彼の傾向というか嗜好も、これには関係しているとにらんでいる。
 たいていの猫は、狭くて暗いところがすきだけれど、さとるはそうではない。
 あたたかい布団の中には、絶対に入ってこない。トイレに関しても、譲り主の方からは、ドーム型のカバーがついたタイプをおすすめされなかった。
 さとるは、もっぱら開放的なシチュエーションを好む。すり鉢状で覆いのない寝床や、フローリングの床、飼い主が寝る掛け布団の上などが、彼の寛ぐ場所だ。

 そんなわけで、病院へ行くためのキャリーバッグも、そして「猫ちぐら」も、さとるが好まないのは当然といえば当然なのである。

 みなさんは「猫ちぐら(つぐら)」という民芸品をご存知だろうか。
 稲わらを編み上げてつくる猫専用ハウスで、越後の豪雪地帯で使われてきた。雪でつくる「かまくら」に似た形状をしており、保温性にすぐれる。

古めの猫ちぐら。
新潟・十日町市博物館の展示室にて

 現在流通しているものは、ほぼすべて、新潟県関川村の「猫ちぐらの会」の方々によって生み出されたものだ。
 会は、昭和60年に発足。地域のお年寄りたちが、畑仕事の合間や農閑期に手を動かし、ひとつひとつ、丹精を込めてつくりあげている。
 SNS映えやペットブーム、さらには民藝ブームが後押ししてか、ひと頃からメディアに取り上げられる機会が増え、生産が注文に追いつかない状況が何年も続いている。ふるさと納税の返礼品に選ばれるなど、いまや関川村の特産品に。
 最近はホームセンターなどでも、こより製で形状だけ真似た「なんちゃって」猫ちぐらをみかけるようになったけれど、数十把もの稲わらを使うという関川村の猫ちぐらはずっしりと重たく、堅牢。ついでにいうと、新潟県産コシヒカリの稲わらである。ものがまったく違う。
 縁あって入手した猫ちぐらもやはり関川村製で、製作者の名前まで判明している。
 サイズは「特大」。大柄なさとるでも、無理なく入ることができる。理論上は……
 だが、彼はなかなか入ってくれないのである。

内部のようすをうかがっていたが、入らなかった。わが家にやってきて11日め(いまよりだいぶ痩せている……)

 いつかは欲しいと思っていた猫ちぐら。
 わが家に猫をお迎えしようと決めたとき、えさや猫砂、トイレセット、爪研ぎといった基本的なグッズとともに探して、迷わず購入した。
 飼い主としては、中に入っている姿をもっとみせてほしいものだけれど、猫ちぐらはただ部屋に置いてあるだけでも、感じがいい。よしとしよう。
 それに、棚の上に登ろうとするとき、さとるは猫ちぐらを足がかりにして、稲わらのクッション性を利用しながら駆けあがる。降りるときには、猫ちぐらを足場にする。実用的な面も、なきにしもあらずだ。

 さらに……まるっきり入ってくれないわけでもない。年に数えるほどではあるが、ときおり入室することがあるのだ。
 その光景を偶然みかけたとき、さらに写真や動画に収めることができたときの喜びは、まさにひとしお。
 猫ちぐらに滞在するさとるを捉えた決定的瞬間のショットを、当ページをご覧のみなさまだけに、特別にお目にかけたい。

 このときは、わたしが気づいてから3分ほど滞在して、出てしまった。

 もしかすると、わたしが不在のあいだ、さとるはこっそりと、猫ちぐらの中で憩いの時を過ごしているのかもしれない。
 一時期は、あまりに入らないものだから、えさなどを仕舞っておく物入れにしてしまおうかと思ったりしたものだけれど……そのままにしておいてあげようか。
 わが家の風景に、すっかりとけこんでいることでもあるし。

別の日に撮影。身体が長い


こちらが本家本元の「つぐら(ちぐら)」。小さな子どもは、このようなお椀状のちぐらで寝かされていたという(十日町市博物館にて)
「飯つぐら」という代物もあった。保温効果があるのだろう(同じく、十日町市博物館にて)
テレビのなかのお仲間観察


 ※岩手・遠野にも類似の民芸品が。



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