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山岳部でのキッチュな思い出

大人なんてクソだと思っていた高校時代。

ワルに憧れる事はなくとも、ワルに絡まれる事は多々あり、
キッチュな思い出を作る為に入部した山岳部での、思い出たちの数々。

タバコを吸う為に入部

山岳部への入部の動機は、タバコを吸う為だった。

山岳部の部室は、校舎から遠く離れた部室棟の、奥の奥の、そのまた奥に位置していた。
当時、同級生の間でチョコを食べた後に吸うたばこが世界で一番うまい、という都市伝説があり、それを実践していくうちに、みんなただの喫煙者へと成り下がっていった。

昼休みや放課後に、学校でゆっくりタバコを嗜みたい。
そんな高校生の儚い願いを叶えてくれるのが、山岳部の部室だった。

みんなで仲良くタバコを吸っていると、不意に顧問が部室に入ってきた事も度々ある。
そんな時は、部室に立ち込める煙を追い払いながら、「さっきまで卒業生がタバコを吸いに来ていました」と、完ぺきな嘘をついてやり過ごした。

鉄棒の前にテント

山岳部と言えども一応高校の正式な部活動である為、高校の総体には格好だけでも出場しなければならない義務があった。

我々腐れ山岳部は、高校生+タバコ=ゆとり世代であり、時間など気にすることなく山に登ってタバコを吸う事をモットーとしていた為、集合時間を守るという意識を持ち合わせていなかったし、今までの義務教育で体に染みついてしまった腐臭ー5分前行動や、時間厳守などの垢を、どんどんこそぎ落としていった。

総体の会場は、山の麓にある小学校の校庭を借り切って行われるのが通例だ。
開会式が終わった頃に、のびのびと到着した我々不良山岳部のスタメン4人は、夜に各校の顔合わせ等も行われるこの小学校の校庭の一番端の方に野営地を定めた。
なぜなら、もう開会式の何時間も前に各校揃って野営地の場所取りを行っているので、校庭の隅の鉄棒の前くらいにしか野営スペースがなかったからだ。

案の定、宍戸錠、夜間の各校との交流会になると、女子高の山岳部員と話したいが為にテントから勢いよく這い上がるのだが、テント内で下らない時間を貪っていると、出口に備え付けられた鉄棒のトラップの存在など未来永劫忘れており、星がみえるほど頭を強打した。

山岳総体の審査基準

そもそも大人なんてクソだし、競技登山なんてクソくらえ、と思っていたので微塵もやる気などなかったのだが、それに加えて一風変わった審査基準があった。

山を登っている途中、突然審査員のオヤジが座っている所に遭遇する。
俺たちの歩行技術を審査しているとの事だった。

またある夜などは、テントでだべっていると、審査員のオヤジがテントに飛び込んできて「腹が痛い、腹が痛い!」などと叫びだした。
そこで応急処置ができるか否かのテストを行っているのだが、俺たちは何の治療も施すこともなく、大根役者が引き上げていくのを無事に見届けた。

今までの内容は団体戦だが、個人戦では「誰が一番早く山を登れるか」という種目もあり、俺たちは全員、山道を外れてタバコを吸いながら、いつものようにのんびりと山を登り、競技登山に対するささやかな抵抗運動を、前日の打ち合わせ通りに実行した。
裏切ったスタメンの1人が、他校の山岳女子にモテようとこの個人戦で優勝してしまったのだが、その時から俺たちの歯車が狂い始めたのは言うまでもない

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