時と場所を構わず仕事に集中しすぎてしまう女性のこと
家庭を顧みずに働くのはかつては男性に多い傾向でしたが、働き方改革や男性の意識がアップデートされたことで、最近はこうした傾向を持つ男性は減っているという肌感があります。
その代わりに、時と場所を構わず仕事に過集中し、ときに家族よりもそれを優先してしまうような既婚女性が、もしかしたら現代は増えてきているのかもしれません。
私はかつて、「仕事だから!」と強い口調で言い放った、夫の友人の奥さんの顔が今でも忘れられないんです。
もう何年も前の話で、まだうちに子どもも生まれていないときでした。
その日、私と夫は店が定休日だったので地元の居酒屋に足を運んでいたんです。
しばらくすると入り口から聞き慣れた声が聞こえてきて、見ると夫の友人と、その奥さんでした。
久しぶりの再会に喜んだ夫は、夫婦を自分たちのテーブルに呼び、4人で一緒に飲むことにしました。
近況報告で盛り上がっていると、スマホの着信音がピロリンと鳴りました。持ち主は奥さんです。
さっきまでワイワイ盛り上がっていた奥さんは、そこからしばらくずっとスマホと睨めっこ。
終わったと思ったらまたピロリンと着信音が鳴り、再び "世界" に入ってしまいます。
夫の友人は、「お前食事中にやめろよ」と注意しました。
夫婦2人の時はどうしているのかわかりませんが、少なくとも今は4人で飲んでいるのだから、そういうことはやめておけということなのでしょう。
すると奥さんは目を三角にして言い放ったのです。
「仕事だから!」
飲みの最中にスマホに夢中。ドン引き
奥さんは私より少し年上で、当時は美容関係の仕事で独立することが決まっているという状況でした。
これから人付き合いは大事になってくるから、SNSのコメントはマメに返すんだ、とかなんとか言っていた気がします。
私も当時、彼女の投稿はよく目にしていました。
たしかにしょっちゅう写真やつぶやきを投稿しているし、他の人からのコメントにもよく返している印象はありました。いいねもたくさんついていて、さながらインフルエンサーのような状態だった。
独立することが決まっていたと言うだけあってめちゃくちやり手なのは知っていました。
30代で子持ちながら美容学校に通い、サロンに就職。そこからメキメキと腕を上げて、社内最速で指名ナンバーワンの座をゲットした強者です。
なんでも界隈ではちょっとした有名人らしく、セミナーに呼ばれたりメディアからの取材を受けたりすることも、当時はあったと聞いています。
まぁ、とはいえですよ。
どれだけ仕事が命だったとしても、飲みの席でぐらいSNSの投稿は我慢できないでしょうか。
私の夫がどう思っていたかは分かりませんが、少なくとも私はけっこうドン引きしていました。
今ここにいない人にやたらと気を遣って、目の前にいる人たちのことを軽視するとは何事なのかと。失礼極まりない。
そんなコミュニケーションの基本もできないようで経営者になれるのか?と余計なお世話を心の中で焼いていました。
が。
まさかそれから数年経って、自分が同じような行動をとることになるとはつゆにも思わなかったんですよね。
まさか自分が同じ立場になるなんて
私はその日、ひとり台所で夕飯の準備をしていました。
そこへ海外物販サイトのユーザーからメッセージが届きます。
料理の合間に手を止めて見てみると、なんとしても売りたかった商品に価格交渉が来ていたのです。
ちょっと想定より安かったので、何度かやり取りして折り合いのつく価格を探っていました。
メールを送っては返事がきて、送っては返事がきて。
その度に料理を中断し、スマホを手にとる私の様子を見て、見かねた夫から
「ねぇー早く食べようよ」
と声がかかったんですね。
時計を見ると、ぼちぼち食事を始める時間が迫っていました。でも別に催促されるほど遅れているわけではないし、もう料理はほとんど完成しているのです。
仕事のことで頭がいっぱいのときに声をかけられ、ついイラッとしてしまった私は「ちょっと待って!遊んでるんじゃないんだから」と強めの口調で返しました。
しかし相手ユーザーに購入のお礼メールを送ったあと、我に返ってハッとしました。
ついさっきの自分の態度は、ずっと前に居酒屋で会ったあの奥さんとまんま同じだわ。あのときドン引きした奥さんと同じことをやってるよ私、と。
なぜ家庭を疎かにしてしまうのか
現代は自営業に限らず、仕事がプライベートに侵食してくるケースは珍しくありません。
食事中だろうと子どもと遊んでいるときだろうと仕事の大事なメッセージが届くことはしばしばあります。
後回しにしていたらチャンスを逃すのではないかと思うと放置するわけにもいかなかったりします。仕方がない場面があるのは事実です。
だけど本当に今じゃないといけないことなのかどうか胸に手を当てて考えたとき、そうじゃない場面も往々にしてあるはずです。私にはありました。
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