![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59176250/rectangle_large_type_2_b3baa88d92de619dc422347dac54c47e.jpeg?width=1200)
日本の飲食店がなぜこんなにも安いのかを知ったら、手放しで喜べる?
今日は意見表明みたいな日にします。
昨日こんなツイートを目にしました。
海外に一度でも行った事がある人なら分かると思いますが、世界には「安くて美味い飲食店」は沢山あっても、「安くて清潔な飲食店」は余り無いんです。この点、日本は最強です。1000円以下の多くの店が味と清潔さを兼ね備え、従業員教育までキチンとしている。こんな風な安い国、世界で日本だけですよ。
— ちゃん社長 (@Malaysiachansan) August 17, 2021
このつぶやきが興味深いのは、ここにリプライしている人たちの意見が、
「わかる!日本の飲食店って、安くて清潔でサービスも良くてほんと最高!」という人と、
「先進国なのに給料は安いし、みんな過剰なサービスの供給に疲弊してますよね」という人で真っ二つに割れていること。
たぶんですけど、ちゃん社長は「安い国」というワードを使って日本をチクリと刺しているんだと思うんですね。
で、それがきちんと伝わっている人も半分ぐらいいる。
私も飲食業に従事しているのでもちろん真っ先に後者の意見が脳内を巡りました。
しかし残りの半分の人は、書きぶりをみるとおそらく純粋に「こんな日本って最高!」って思ってるんです。
何にも知らないんだな、ってバカにしたいわけでも責めたいわけでもありません。
日本の現状を知る機会、他国と比べる機会があまりにもないんだろうなと思いました。
仮に後者のような考えを持つ人たちが、どうして日本の食がこんなにも美味しくて安くて清潔でサービスが良いのかを知ったら、今までのように喜んで食べられるのかな?そんな風に感じます。
「激安グルメ特集」に思うこと
実は私、夕方の民放ニュースでときどき放送される「激安グルメ特集」にずっと違和感を抱いていました。
みると、300円で皿いっぱいの惣菜とか、数十円のパンとか、どれも目を見張るほど激安で、たしかにテレビで特集したくなるのもわかる気はします。
私がもし飲食業に従事していなくて、その激安店が近くにあったら足を運んでいたかもしれません。
しかし現に飲食業に従事している自分としては、いつまでこういう「安いものが良きもの」みたいなコンテンツを流していくんだろうという残念な気持ちになります。
別に料理を激安で売ること自体は一つの商売のやり方ですから、私はそれを否定したいわけじゃありません。
どうしてそれが安く提供されているのかを知らない消費者にとっては、たしかに安いものは「善」です。
ただテレビが大衆に向けて放送するのであれば、なぜこれらはこんなに安く売れるのか、その真相まで報道してほしい。
それを知ったうえで消費者が安いものを選ぶならそれは自由です。
たとえば家賃と人件費がなくて、店の経営とは別に潤沢な不動産収入もある、とかならいいでしょう。
趣味の延長や老後の楽しみとして、利益度外視でやっている人もいます。
しかし多くは、時間や、労力や、精神力、従業員の給料など、いろんなものを犠牲にして安い価格を維持しているはずです。
オーナーと従業員が労働に見合った収入を得て、かつゆとりある働き方まで実現している事例は、全くないわけではないかもしれませんがかなり少ないんじゃないでしょうか。
かといって、自分を犠牲にすることが美しい、みたいな見せ方も同業者としては非常に困ります。
これは増税や材料費が高騰したりするとよく出てくるパターンです。店主の涙ぐましい努力によって価格を据え置き〜みたいな文脈で語られます。
涙ぐましい努力をしなければならない社会の現状への問題提起ではなく、努力の美化という形です。
こうしたコンテンツを目にした消費者は、ビール一杯、周辺のお店より10円でも高いと文句を言うし、材料の相次ぐ高騰に耐えかねて値上げすると非難する。
会社にサービス残業をさせられて文句を言う人が私たちには残業を強いてくるし、ちょっと連休を取ると「サボってる!」となじり始める。
いずれも犠牲的に働くことがどこか美化され、当然のごとく扱われた末に起きていることです。
ちなみに「頑張ってるのに儲からない」「そこそこ儲かってるけど辛すぎる」と嘆く飲食店オーナーに「やり方が悪いのでは?」と言う人がいます。
もちろんそれもあるかもしれませんが、しかしこのように、犠牲を美化し、強いてくる人たちがいる以上、なかなか強気に値上げをしたり働き方をガラッと変えるのが難しい立場にある人もたくさんいるのが現状です。
「うちは気にせず値上げするぞー!」と言ったって、さすがに数百円で食べられるざる蕎麦を、急に1500円にすることはできません。相場っていうものがあるからです。
相場は全体で底上げしていかないと、ひとりのオーナーだけが値上げしても意味をなさないのです。
安さを疑う人が増えることを願う
最近だとコロナ禍ということもあり「いま、飲食店が大変なんです」といったニュースをたびたび目にします。
新しい取り組みを紹介したり、テイクアウトで応援しようという企画も多いです。
ここでまた不思議なのが「応援しよう!」と言っている同じ番組内で、前述のような激安特集が放送されること。
もしもコロナ禍で大変な飲食店を応援しようと本当に思ってくれているのであれば「みんなで注文しよう!飲食店の利益率が高いメニュートップ10!」とか、日本の飲食店は安すぎる問題を取り扱うとかしてほしいです。
たぶんそうしないのは、見る人が喜ばないからなんでしょう。
私はつねづね、安い商品を目にしたときに「なぜこれはこんなに安いのだろう」と疑問を持てる消費者がもっと増えればいいのになぁと思っています。
その理由がわかったら、多くの人は手放しで安い物を手にできないし、美味しくて安くて清潔な国ニッポン!なんて、嬉々として口にできないはずなのです。
飲食業界に限らず、日本のあらゆる物やサービスが「適正価格」になることを今は願うばかりです。
いいなと思ったら応援しよう!
![小保下 グミ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70231397/profile_6a5432c3e4bfbda9807a9ab3d301bc08.png?width=600&crop=1:1,smart)