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【卒業生ストーリー vol.5】楽しく農業のイメージを変えていく活動を開始|布江田 順子さん(4期生)


これまでの歩み
〈大学卒業後〉 1年間、カナダにワーキングホリデーへ
〈帰国後〉 ラフティングのアウトドアガイドとして2年間働く
 ご結婚後、3人のお子さんの子育て
2022.9-2023.3 神戸農村スタートッププログラム受講
2023.4 神戸ネクストファーマー制度(*)の研修開始
2024.4 農地を借りて畑を開始、屋号を「awesome farm」とする

*神戸ネクストファーマー制度…2020年に創設した神戸市独自の農業研修制度。従来よりも短時間の農業研修(合計100時間程度)を受けることで小規模な農地を借りることが可能になり、働きながらなど多様な農業との関わり方の可能性を広げるために運用が図られている。


「楽しい」を大切に、畑と向き合うのが日常に

 住宅街にある自宅から車で10分ほどの西区・櫨谷町の場所を借りて畑をしています。育てているのはエディブル・フラワーや観賞用の花、あとお野菜でも見た目が好きなもの、例えばアーティチョークなどです。屋号の「awesome farm」は「楽しい」というイメージで付けました。なんでも楽しいことじゃないと続かないし、楽しければ努力もできると思っています。私にとって農業は楽しいし、関わってくれる人にも「農業って楽しいぞ」っていう雰囲気を伝えたくてこの名前にしました。
 今は、ネクストファーマー制度の農業研修で出会った人の飲食店のパフェにエディブル・フラワーを使ってもらったり、神戸農村スタートアッププログラムの同期生や友人のお店で野菜を使ってもらったりしています。

布江田さんの畑
遠くに住宅街やビルの見えるのも、街と近い神戸農村らしい風景

「やりたいことを自分でできるようになる」ためにプログラムを受講

 実は神戸農村スタートアッププログラムに行くまでは、家で野菜を育てたこともありませんでした。受講を決めた時、一番下の子は小学校4年生で、別に生活が落ち着いたというタイミングではなかったです。でも、「自分の思ったときに、自分のやりたいことに動けるようにしたい」という思いはあったので、それなら起業した方がいいのかなと考えていました。
 それに元々外にいるのは好きでしたし、環境問題にも関心がありました。「シンプルな生活の方が環境にいい」という思いから、衣食住の「衣」に関わるコットンにも興味を持っていて、プログラムで立てた事業プランはコットンの栽培と活用についてでしたね。
 同時に、受講前にとある服屋さんにリペアをしてもらおうと行ったら、自分で出来る方法だけ教わったことがあったんです。それが、「自分でできることはしよう」という気持ちにも重なりました。それで、子どもを通じてつながっていた友人と一緒にプログラムの説明会に行って、ふたりで受講を決めました。

コットン
コットンの種取り体験でイベント出店したことも

多様なプログラム同期生とのつながりが 今も刺激に

 プログラム受講中から、草刈りで地域資源を守ろうとする「播磨畦師(はりまあぜし)」という団体に参加するようになりました。プログラムのスーパーバイザーの中塚先生(神戸大学大学院農学研究科教授)から紹介してもらったのですが、そこでの活動は肌にも合って今もメンバーとして時々活動に行っています。田舎は草刈りが大変で、よく「地域に入るには草刈りから」と言うけれど、草刈りはやっておいてよかったな、って思います。
 また、プログラムのフィールドワークでは空き家の活用方法を考えるグループに入ったのですが、そのメンバーをはじめ、農や食など、似たようなことに関心のあるメンバーなので、同期生との縁は今も続いています。中には農家さんやものづくりをされる人もいるので、一緒に神戸ワイナリーで開催されるイベントに出店したりもしています。ときどきご飯で集まったりもしていて、それぞれ思いをもって活動している仲間と情報交換や話をできる、よいつながりになっています。
 このプログラムはいわゆる農業スクールじゃなくて、農村で何かやりたい、っていう色んなメンバーがいるので、広がるものがありますね。 

笑顔の布江田さん

農業のイメージを良くするようなビジネスを作っていきたい

 プログラムを受講したときからそうでしたが、特に長期的で明確な「やりたいこと」があるわけではないんです。でも選択の連続である人生の中で、そのときどきの「やりたい」を大切にしていたらこうなってきた、という感覚があります。
 今は、農業のイメージとか価値が上がるようなことをしていきたいと思っています。農業って大変っていうイメージが強いんですけど、活動してみると、長年農業をされているような方でも「農業は楽しいから頑張ろう!」みたいな方も意外といらっしゃるんですよ。とは言っても、気持ちはあっても歳をとれば身体は動かなくなってくるし、この先どうなっていくんだろうとも思う。そんな方たちと接するようになって、やっぱり代が変わっても続くようにしたいと思うようになりました。これまで自分のやりたいこと軸でやってきたけど、何か還元したいな、と思い始めたというのはひとつの変化ですね。
 元々環境に関心があったのも「このままだと地球がやばいぞ」くらいの漠然とした気持ちでした。今も自分が何か大きく変えられるわけじゃないけど、やらないよりはマシだから自分がやれることをやっていこう、というような感覚です。今後は自分の作った野菜や花を加工して、農業のイメージや価値があがるようなビジネスをしていきたいな、と思っています。

「花が家にあると季節を感じさせてくれる」と話す布江田さん
農作業をする布江田さん

■インタビュアーPICK UP!

 布江田さんから感じるのは、一見相反する「芯の強さ」と「しなやかさ」。プログラムで出会った当初から周囲に迎合しない芯を持っておられる方だな、という印象だったが、今回話を聞いてみて、通底するものが「環境」や「自分で生きる力」なのだということを知って納得した。一方で、難しい説明や大きな意義は語らず、関わる人に「楽しい」と思ってもらえるように、ご自身も本当に無理なく楽しんでいるのが伝わってくる。人口減少という事実もある中で、従来の関わり方だけでは地域社会が成り立たないのではという危機意識もある農村地域において、布江田さんのような「しなやかさ」がひとつのヒントになるような気がした。

◆2024年9月~の神戸農村スタートアッププログラムの詳細はこちらのWEBサイトよりご覧ください。

文:臼井 綾香(コーディネーター)
写真:山田 真輝(コーディネーター)
〈取材日:2024年8月〉

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