ジェンダーレンズでのぞいてみたら③
※神戸新聞で2023年3月8~17日に掲載された連載(全8回)を加筆・再編集し、4回に分けてお届けする記事の3回目です。
神戸新聞記者 石川 翠
〈役所㊤〉女性職員は窓口中心? 男女で偏らない人事配置へ
出来上がった二つの円グラフに、兵庫県豊岡市の職員、古橋智子さん(47)は驚いた。2分割と7分割にされたグラフが、入庁からの職務歴を示していたからだ。
2019年に市役所内で5回にわたって開かれた「中堅女性リーダーシップ研修」。仕事上で「もやもやすること」、変えたいことなどをチームに分かれ、最終日に発表する。あるチームは男女の職務歴を比較することにした。
その結果、女性職員が担ってきた職務は「住民サービス・窓口」「庶務」の2種類。男性はそれらに加えて「対人折衝調整」「企画調査研究」「財務経理」―など計7種類。円グラフにすると違いが際立った。
実は女性職員のモデルは古橋さんだった。1998年に入庁。他の業務も任される後輩の男性職員の横で、伝票を切るなど庶務業務を割り当てられてきた。30歳で出産し、最初の育休を取った。復帰後、異動はあったが、支所を転々とした。ずっと戸籍や住民基本台帳などを扱う業務だった。
「新しいことを覚えたいので、せめて別の業務をしてみたい」。上司に相談したが、3人の子育てをする古橋さんには「慣れている仕事を」と特に変わることはなく、異動時に引き継ぎをするのも受けるのも女性だった。同年代の男性は予算を組み、執行が当たり前になっているが、自分は「40過ぎてもそんなことも知らないの」という顔をされる。「思い通りに子育てをさせてもらえてありがたかった。だから、なおさら何も言えなかった」
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