「新長田を彩るプレイヤー ~スタッフと創る、地域に根付く図書館を目指して~」-Part2-
新長田図書館 前館長 Nさん
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-Nさん-
アジアコーナー以外の取り組みとしては、子ども連れのお客さんも多いので、おはなし会をやったりしてます
おはなし会自体は、どこの図書館でもやってはるんですけどね
新長田図書館では、コロナ禍以降、スタッフが透明のシールドの後ろに座って、マスクもして、子供たちとはちょっと距離をおいてやってます
ただ、やっぱり子供って興味があればあるほど前のめりになっていきますし、「ディスタンスを保って」と言うたって、気づいたら隣の子と、べたーっとくっついてしまいます
-記者-
昔の紙芝居をみている時みたいな感じですね
-Nさん-
そうそうそう!
子供に「距離をあけて」って言うても難しいんで、なんか上手いことできひんかなぁって、考えてたんです
そんな時に、名古屋の図書館が、段ボールで飛行機を作っておはなし会をしてるのを、うちのスタッフが見つけてきてくれたんです
段ボールの中に子供ひとりずつが入ってて、飛行機なんで段ボールには左右に翼がつけてある
なので、子供たちの距離が自然にとれる
うちのスタッフが、これを改良して飛行機じゃなくて、図書館動物園をやりたいって言ってくれて、さっそくお願いしました
ちょっと持ってきますね
-記者-
かわいい!!!
-Nさん-
おはなし会の時とかに、この中に入って、楽しそうに聞いてくれてます
段ボールでペンギンやタコも作ったんですけど、こっちは4歳くらいか、体の小さい子やったら小学校1年生とかの子でも、かまくらみたいに、中にすぽっと入れるんです
せっかく作ったんで、今はおはなし会のとき以外も、館内で貸出もしてるんです
児童エリアのところにテーブル置いてあるんですけど、そこに「ペンギンやタコ貸出します」ってチラシを貼ってます
そしたら、時々、子供たちがカウンターに来てくれて、「ペンギン貸して」と
ほんで、自分で抱えて、児童エリアの自分の好きなところに置いて、選んできた本をもって、中にこもるんですよ
段ボール箱なんで、ちょっと薄暗くて狭いけど、すぽっとこもれるのが子供たちには良いみたいで、熱心に読んでいますね
その姿がまためちゃくちゃ可愛いんですよ(笑)
「コロナになってから、これまでみたいに密なサービスは難しいな、どうしようかな……」って思ってたんですけど、スタッフのアイデアのおかげで、これやったら確かに子供でもディスタンスは保てるなと
-記者-
withコロナっていうアイデアにマッチしてますね
-Nさん-
もちろん他の図書館で飛行機を作っておられたというヒントのおかげなんですけども、そこから更に、もっと図書館の利用者に役立つには?!と考えて、かまくらみたいにこもることができるように改良してくれたっていうのが、うちのスタッフは結構やるやんか!と手前味噌ですが思ってます(笑)
-記者-
おはなし会の工夫以外では何かありますか?
-Nさん-
そうですね、今スタッフがはまっていることとか、面白いと思っていることをお客さんに紹介したら結構ウケるんちゃうかなと思ってるんです
だから、スタッフに小さい棚を1つ任せて、そこにおすすめの本を入れてもらったりしています
-記者-
面白い企画ですね、ぜひ見てみたいです
-Nさん-
ぜひ見てください!
-Nさん-
あと、話は変わりますが実は12月12日でこの図書館は25周年なんですよ!!
-記者-
そうなんですね!
-Nさん-
ちょうど震災の年と同じなんですよ、この図書館ができたのって
-記者-
なるほど
-Nさん-
なので25周年になるんですけど、この新長田で25年地元の皆さんに使っていただいたというのを記念して、イベントやろうということで、今度、図書館1階の細田地域福祉センターのホールをお借りして講演会も開催するんですよ
-記者-
どんな講演会を?
-Nさん-
今年(2020年)紅白にも出場する、日向坂46ってアイドルグルーブがあるんですよ。「こんなに好きになっちゃっていいの?」ってシングルのPVは兵庫県公館とか神戸国際会館のこくさいホールで撮ってて、神戸にも縁があるグループですが、そのデビューから今に至るまでを克明に取材して追いかけた長編ノンフィクション『日向坂46ストーリー』(集英社)っていう11万部のベストセラーがあるんです
その著者の西中賢治さんに来ていただいて、ノンフィクションという文章は、小説や評論と何が違うのかとか、そもそも実際に取材した事実をどんなふうに文章にしてゆくのかを講演してもらうんですよ
本を読んだり、ものを書いたりするのがお好きな方にとっては、非常に内容が濃く、面白い内容になるんちゃうかなって思います
-記者-
アジアの人や、お子さんのほかにはどんな層の方が来られますか?
-Nさん-
例えば、朝イチは年配の方たちが来られて、新聞を読んでおられたりしていますね
毎日来てくださるので、あちらからお言葉かけてくださったり
たまたま来られない日があると、「大丈夫かな、風邪でもひかれたんかな」ってちょっとドキッとしたりするけど、次の日にまたお顔を見ると、「あーよかった」って思ったりしますね(笑)
あとは閉館時間が平日は20時なので、児童館帰りの親子づれさんとか、会社帰りの方とか、時間によって結構いろんな層の人が来られますね
新長田図書館は、基本この近所に住んでる人が使ってくれてはる感じです
-記者-
その地域の人たちと今後企画やイベントを考えておられますか?
-Nさん-
毎月やっているのが、「今月の主人公」っていう企画です
今夏から始めた企画なんですけれども、長田区で特色ある活動をしておられる方の紹介をしています
神戸常盤大学で文化人類学の研究をしておられる面白い方がおられるんですが、その方が以前は図書館の司書だったんですね
それで、「長田には、面白い人がたくさんいるから、図書館でその人たちに影響を受けた本をおすすめしてもらいつつ、その人自身の紹介もやったらどうだろう?!」と、私の前任の館長にご提案いただくなかで、スタートした企画なんです
これまでに志里池児童館の指導員の方や、丸山中学校西野分校(夜間中学校)の先生や、長田区のコリアンコミュニティの歴史をアーカイヴされている先生などにも選書していただきました
開館25周年にあたる12月には、長田区の増田(匡)区長にお願いをして、選んでもらうんですよ
これがね、みなさん、選んでこられる本がめちゃくちゃ面白いんですよ(笑)
-記者-
個性があるんですね
-Nさん-
ええ、もう個性の塊です(笑)
みなさんだいたい「あんまり本を読んでないから」ってご謙遜なさるんですけど、選んでこられる本はどれも個性的で、非常に面白いんですよ
この「今月の主人公」は、長田ならではの特色がとても強く出るので、これからも継続して、長田のいろんな方と本をご紹介していきたいと思っています
-記者-
館長のおすすめの本はありますか?
-Nさん-
私ですか!?
まさか自分にくると思ってなかったなー(笑)
そうですね、いちばん最近なら『Arbus Friedlander Winogrand: New Documents,1967』(Museum of Modern Art)と『全貌フレデリック・ワイズマン』(岩波書店)ですね
タイトルにもなっているアメリカの3人の写真家の、50年ぐらい前に開催された「ニュー・ドキュメンツ」展っていう展覧会についてのカタログと、アメリカの現役のドキュメンタリー映画の監督についての本です
ワイズマンはニューヨーク公共図書館のドキュメンタリー(『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』)を撮ってるんですよ
世界でも有数の大図書館ですが、会議でスタッフが話しているシーンとかを見てたら、「意外と、悩んでるのは私たちと同じようなことなんやな」って発見もあったりして、面白かったです
図書館だけでなくワイズマンは、アメリカのさまざまな公共施設、たとえば福祉局とか病院とか公園とか警察とか教会とか軍隊とか、いろんなところに行って、そこで働いてるスタッフや利用者たちの行動に密着して、3時間とか4時間とかあるドキュメンタリーをいっぱい撮ってる人なんです
その監督の映画を、さっきも話した神戸映画資料館さんが、毎月2本ずつ上映するっていう取り組みをなさっているんですよ
新長田図書館の館長になってから、神戸映画資料館さんにお伺いして「ぜひ何か連携させてください」ってお話をしたら、「じゃあ館長さん何か喋ってよ!」って言われまして、明日『セントラル・パーク』っていう映画の上映後に、講演することになりました(笑)
-記者-
もともと映画も好きだったんですか?
-Nさん-
そうですね、映画は好きですね
-記者-
フレデリック・ワイズマンさんの作品は前から知ってたんですか?
-Nさん-
はい、前から知っていて、何本か見ていました。
-記者-
じゃあ明日の講演会はうってつけですね(笑)
-Nさん-
いやいや、今日も徹夜で準備しないといけないです(笑)
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