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「興味がなくても書けます」なんて言ったらダメよ

たまに、学生さんに対して面談的なことをやる機会があるんですけど、しばらく前に印象的な発言をした人がいました。いわく、ちょっとした書き物仕事に関する話題で、「それには特に興味がありません。でも、自分が興味のないことについても書けます。学校でもよくそういうことはよくあります」と。

面談や面接の教科書があるとしたら、「『興味ない』とかネガティブなことは言うな」と書いてあると思うんですよね。いや、教科書に書くまでもないか。相手が反証できない自分の主観を答える質問、かつ、大抵は「あります」を期待しているはずの場面で、わざわざネガティブな印象を与える方を答えるなんて、どう考えても大損です。

自分に正直でありたいから、心にもないことを言うのはイヤだ! と思う人もいるでしょう。そういう気持ちも分からんでもありません。若いね。

だとしても、何かについて「興味がない」って言うのは、自分の可能性を自分で切ってしまう、ちょっとした呪いの言葉なんじゃないかという気がします。

興味のあるなしに関係なく、人は何かしら書くこと自体はできると思うんですけど、人間の意識として、興味がないものに対しては、興味があるものに対する場合よりもどうしても踏み込みが甘く、掘り下げが浅く、突っ込みが弱くなってしまい、成果物の質をある程度以上には上げられないと思います。

それでも「興味なくても書けます」と言えてしまう人は、その質の差を意識したことがない、つまり、興味あることに対しても、そこまでしっかり踏み込んで掘り下げて突っ込んだうえで書けないから、その差が分からないのでは、と思ってしまう…。

そもそも興味ってゼロ/イチではかるもんなの?

ところで、「興味がある/ない」って、どういうことなんでしょうね?

「興味がある/ない」のような一般によく使われる言葉って人によりイメージがちょっとずつズレているもので、その言葉をお前はどういう定義で使ってるんだ? と話を戻して考えてみるのは、わりと大事だと思います。

興味って「ある」「ない」の2値しかないものか? というと、そうではないと思うんですよ。0~100ぐらいの幅で語ってもいいんじゃないでしょうか。

さらに言えば、量だけでなく、四次元(時間+三次元の方向性で)ぐらいのベクトルを持つものとして語ってもいいでしょう。今は興味がないけど、今後興味を持つ可能性はあると思う、さらには、こういう条件が揃ったら、状況が変わったら、親しい誰かが言うなら興味を持つかもしれない…のような話はアリだと思います。

「興味がない」と言うのは、単純にネガティブな印象を相手に与えるのもそうですが、対象に対する、将来的なあらゆる可能性を含めて自分で「ない」と宣言することになりかねないと思うんですよね。

まあ、興味ないって言ったけど後で興味出てきた、というのもままることではあるんですが。しかし、自分で口にした言葉はほんのりと心の重石になり、将来の可能性を削ぐことも、確実にある気がします。

また、興味がないものに向き合うのは、成果物の質が上げられないというのもそうですが、単純に苦しいしつまらないんですよね。それを考えても、せめて「今まで興味を持ったことはなかったですねー」ぐらいにしといた方がいいし、「興味がなくても書けます」でなく、「興味を持つ努力をしつつ書きます」ぐらいの方が、自分自身に対して前向きであり、自分の可能性を信じている人なんだな、という印象を相手に与えるんじゃないかと思います。

さらに話を戻すと、「興味」って何なんでしょうね?

「書く」という行為の話という前提でいえば、興味は理解の促進剤のようなものであり、文脈によっては基礎的な理解の程度をはかれるもの、てな言い方ができるかと思います。

でも、こう言ってしまうと、さすがに「そういう意味での興味ならありますよ」と言いたくなる人が多くなるかなあ。「促進剤のようなもの」というところに、もう一工夫が要るかもしれない…。

それでも私も「興味ないです」と言ったことがある

などと書いてみましたが、私も若い頃に一度、あるテーマの仕事を振られて「どうしても興味が持てなくて、やれそうにないっす。担当を外してください」的なことを言ったことがあります。

それを振られて数日間、考えても考えてもマジで全く興味が湧かず、仕事のアイデアも全く出ず、困った末の発言でした。が、今思えば、振られた瞬間に「その分野は興味ないし何も知らないんだよなー」と思ったため、ずっとそのイメージに囚われていただけかもしれません。

それまで振られた仕事はこなしてきた信用が一応あったためか、特にペナルティなく担当を外してもらえ、その後も、その対象に関わることなく生きてきました。わりと狭いテーマだったので、たいして困ることもありませんでした。

このように、人には本当に「興味がゼロ」のものもあるので…ということなのか、最初に興味がないと思い込んでしまうと興味を持つ手立ても限られてしまってよくない、ということなのか、自分の経験から何を言えるものか、今もよくわかりません。

ただ、どんな仕事においても、幅広い対象に興味を持つよう努めることは基本的な姿勢として重要であり、自分から仕事を入れるなり、企画として提案するなりして、より興味のある仕事でさっさとタスクリストを埋めていくように動くことが、いい仕事をするコツだなとは思っています。

今なら、興味を持てないことも、生成AIに聞いてみることで、何かしら取っ掛かりとなるアイデアを得やすいかもしれません。今の生成AIはそういう「なんかそれっぽいこと」を返してくるのが得意ですし。

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