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「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」のつくり方③ - 駆け引きボクシング編

こんにちは、UXデザイナーの小林です。

今日は、東京・有楽町で開催されている「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」の中で唯一の2人プレイ専用ゲーム、「駆け引きボクシング」について深く掘り下げてみます。

前回の「勇者コマンド」、前々回の「ASTRO SUVIVOR」の記事とあわせて、すでに展示会に足を運んでくださった方も、これから展示会にお越しの方も、ちょっとした裏話として楽しんでいただければ幸いです。


ゲーム紹介:駆け引きボクシング

「駆け引きボクシング」は、じゃんけんのようなシンプルな形式の対戦ゲームです。ボクシングの形態をとりつつ、実際にはアクションゲームではありません。操作の上手さが勝敗に影響しないよう、あえてシンプルなデザインを行なっています。

ゲーム内のパンチ「アッパー、フック、ストレート」は、じゃんけんのように三すくみの関係にあり、それぞれ使える回数が限られています。

例えば、アッパーばかり出し続けると、試合後半でアッパーが出しにくくなることを対戦相手に見透かされ、次の手を予測されやすくなります。しかし、そこをさらに裏を掻き、あえてアッパーを出して相手の予測を外すことも可能です。このような駆け引きが、このゲームの面白さの核となっています。

必殺技が炸裂!

また、この心理戦に揺らぎを加える要素として「必殺技」が用意されています。これらは三すくみのどれに対しても勝つことができますが、一回しか使えません。この必殺技をいつ使うか、使わないかという選択が勝敗のカギでもあります。

対戦ゲームはなぜ面白いのか

トランプや将棋、チェスなど、そもそもゲームは人間同士の対戦から始まりました。その相手をコンピュータにやってもらおう!というのがコンピュータゲームの始まりとも言えるので、ある意味、先祖返りしているとも言えるかもしれません。

なぜ対戦ゲームが楽しいのかといえば、それは、パターンの読みやすいコンピュータ相手ではなく、お互いに感情を持つ人間を相手にすることで、予測不能性が高まり、毎回ゲームが異なる展開を見せることでしょう。一度として同じ展開はなく、理論上は、無限に遊べるゲームとも言えます。

現在、テレビゲームでは、あらゆるジャンルに対戦の要素が組み込まれています。FPS、TPS、スポーツ、アクションからパズルまで、日夜さまざまな形でプレイヤー同士の対戦が楽しまれていますよね。

中でも、対戦ゲームのメカニズムを大きく進化させたジャンルと言えば、やはり格闘ゲーム……なかでも1991年にリリースされた「ストII」こと「ストリートファイターII」では無いでしょうか。

威力は弱いが出るのが早い弱攻撃、隙は多いが強力な強攻撃、その中間の中攻撃。三段階に分かれた「弱・中・強」の概念は、リスク&リターンというゲームの根幹を見事に表現していますし。

そして、それを防御できる「ガード」、相手の「ガード」の上から攻撃できる「投げ」の概念など、1991年の時点で対戦ゲームとして完成されていることは驚くべきことです。つい先日、2023年にリリースされた「ストリートファイター6」においても、基本的なルールは変わっていないのですから。

「駆け引きボクシング」では、これらの要素をものすごくシンプルに表現していますが、一般的な対戦ゲームではもっと複雑な力関係が存在します。しかし、その根本は一緒です。ある行動に対して有利で、別の行動に対しては不利という循環する力関係がデザインされており、プレイヤーはその中で高速の駆け引きを行います。相手の行動を予測し、最適と思われる行動を選ぶ。これが対戦ゲームの面白さの根幹でしょう。

愛すべき不完全さ

人間は理性を持つ一方で、状況や感情に大きく左右される生き物でもあります。だからこそ、私たちの行動はいつも合理的とは限らず、冷静に考えれば不合理な行動をとることもしばしばです。

「負けたくない!」と熱くなって攻撃的になり、手痛いしっぺ返しを受けることもあれば、恐れから消極的になり、せっかく見えていた勝ち筋を見逃してしまうこともあります。

人間が不完全な感情の生き物である、という事実が、対戦ゲームの駆け引きの面白さを奥深いものにさせているのではないかと思っています。

これはUXデザインについても同じで、人間の感情や行動の不確実性を考慮に入れた設計は、うまく取り入れられると、結果的にユーザーを満足させ、結果的に製品やサービスの評価を高めることにつながったりします。

最後に

東京・有楽町で開催中の「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」は、ゲームの楽しさを通じて、UXデザインの魅力を無料で体験できるイベントです。開催期間が、残り2週間を切りました。この機会に是非展示会へお越しいただき、楽しんでいただければ嬉しいです。

いやあ、ゲームって本当にいいものですね!


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