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season2-3 入学者たち

【前回までのあらすじ】

英語が喋れるようになりたくて米兵ご用達のストリップクラブでバーテンのバイトを始めた小橋。

ストリップでアメリカ人とコミュニケーションをとれるようになってきた小橋はさらなる英語力の向上を目指し、米軍基地の中にあるメリーランド大学への編入を決意した。

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米軍基地への入場を許可された小橋は、出るゲートを間違えて少しおしっこを漏らした。

だが、これでもう大丈夫。あんな怖い思いはもうしまいと必死にゲートの位置を頭に叩き込んだ。

そして小橋はメリーランド大学での最初の授業の日を迎えた。この日は初めて自分一人だけで基地の中に入る。ゲートの位置を頭に叩き込んだが、前回の事を思い出しおそるおそるゲートに向かった。

ゲートに着き、軽自動車の運転席から門番に入場許可証を見せる。

門番はちらっと許可証を一瞥すると

「Go.」

そう一言いい通してくれた。

本当にちゃんと見てくれたのかとても不安になった。これで僕が基地の中でミリタリーポリスに職質された時に不法侵入扱いされたらどうするんだ。その時に説明できる英語力は僕にはまだない。

しかし入ってしまったものはしょうがない。僕は目的の場所に向かった。

そこは

基地の中にしかないファストフード店だ。

そう。僕は決めていた。授業の前にバーガーをテイクアウトしようと。

アメリカ人といえばバーガーだ。僕はもうメリーランド大学の学生。そう、つまり僕はもうアメリカ人大学生なのだ。そうなったらバーガー片手に登校するしかないじゃないか。

ファストフード店でバーガーを頼んだ。日本では考えられないサイズのハンバーガーが出てきた。僕はそれを助手席に置き、片手で食べながら大学へ登場する予定だった。僕はいつも形から入ってしまう。

あまりの大きさにびっくりしながらも、予定をこなさないといけない僕は片手でハンバーガーを食べ始めた。ドリンクのサイズも半端じゃない。ジャパニーズサイズの僕の車のドリンクホルダーには収まりきらない。仕方なくドリンクは両足の間に挟んだ。

その状態で大学の駐車場に車を止めた僕の口周りはケチャップとソースまみれ。ドリンクにいたっては支えきれず、運転席はコーラでびしょびしょになってしまった。

もうあのファストフード店には二度と行かない。そうやって勝手にファストフード店を恨んだ。

しかし気落ちしてる暇はない。今日は大学の一発目の授業だ。気合いを入れていかないと。

僕ら日本人の学生はまず最初に語学クラスを受けないといけない。この語学クラスをクリアしたら自分の専攻の分野の授業を受けられるのだ。もちろん語学クラスも卒業に必要な単位に含まれるから、立派な大学としての授業だ。

教室に入ると40人程の日本人がいた。米軍基地に入るための許可証を作る時に見た人もちらほらいる。おそらく僕が一番年下だ。

緊張してきた。まずは友達を作りたい。だけど年上ばかりで何をきっかけに話しかければいいかわからない。それに僕は結構人見知りだ。表面上はニコニコできるけど、初対面の人とちゃんと打ち解けるのは苦手。

よし、ここは『可愛い年下作戦』だ。おどおどしている感じを出そう。不安そうな顔をしていれば年上の誰かが話かけてきてくれるんじゃないだろうか。あわよくばあそこにいる綺麗なお姉さんが話しかけてきてくれないだろうか。

20歳の僕は、卑劣で下心満載の作戦に出た。必死で不安気な顔を作り、話しかけてくれと言わんばかりに周りをちらちら見る。重点的に綺麗なお姉さんをちらちら見る。

すると、本当に綺麗なお姉さんがこちらに向かって笑顔で歩いてきた。

成功した!俺の演技力が生きた!可愛い年下男の子を演じられた!だが気を抜くな、お姉さんに話かけられるまではまさか話かけられると思ってもなかったような態度をとるんだ!落ち着け、まだだ。まだ気づいてないフリをしろ。

必要のない教科書をだしたりしまったりして間をつなぐ。電子辞書を机のどの位置に置こうか迷ってるフリをして間をつないでいると、お姉さんが目の前に立った。本当に僕に話しかけに来てくれたんだ。近くで見てもやっぱり綺麗な人だった。年齢は30歳ぐらいだろうか。日本人特有の黒い綺麗な髪の毛だ。いい匂いもする。

そして、お姉さんは話かけてきた。

「Hi,Nice to meet you.~~~~~~~~~~.~~~~~~~~~~?~~~~~~~.~~~~~~~~~~?~~~~~~~~~~~.~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!~~~~~~~~~~~~~~~~~~~???」

とても、とても流暢な英語だった。最初のナイストゥミートユー以降全く何言ってるかわからなかった。日本語で話かけられると思っていた僕は面食らった。

「すすす、すみません・・・僕まだそこまで英語喋れなくて・・・いや・・・喋れるんですけど・・・喋れなくて・・・本当は喋れるんですけど・・・」

英語を聞き取れなかったことを認めたくない僕は喋れるけど喋れないという意味不明な言い訳をした。

「あ、ごめんなさい。私ここにいる人ってみんなネイティブなんだと思っていたの。さっき喋ったあの人達だってネイティブだったし。でもあなたもすぐに上達するわ。一緒に頑張りましょう。」

とんでもないところに来てしまった。なんだって?あの人達だってネイティブだったし??あそこにいる人達か?そうか、あの集団とは関わらないようにしよう。いや!関わるべきだろ!英語の為に!だけど今関わってどうする!?みんなが喋っているのを理解しているフリしてニコニコしとけばいいのか!?!?そんなのごめんだ!まずはもう少しレベルが近い人と仲良くなって切磋琢磨していったほうがいい。こうなったら『可愛い年下作戦』は中止だ。作戦変更だよ小橋君。あそこにいるサラリーマン風の男の人に話かけるんだ。あの人もおどおどしているし、年齢もそんなに離れてないだろう。もしやあの人は今『可愛いサラリーマン作戦』実行中なのではないか?だとしたら同類だ。考え方も似ている。よし作戦を実行するのだよ小橋君!

「あの~、」

「Oh,Hi!Nice to meet you!~~~~~~~~~~~??~~~~~~.~~~~~~~~~~~~??~~~~~~~~~~~~~~~!!」

こいつもじゃねーか!くそが!!なんでここにいる日本人は英語しか喋らないんだよ!!

僕は無言で立ち去った。サラリーマンは不思議そうに僕を見ていた。若かりし僕はこうして、英語を上達させる第一歩を踏み外した。あの人達と仲良くなっていたほうが絶対に良かったのは言うまでもない。

もう友達は出来ない。僕はそう思い始めた。場違いだったんだ。そもそも最初の英語面接でパブリックプレイスの意味すらわからなかったんだ。辞退するべきだった。

勝手に落ち込んでいる僕の目の前に一人の男性が来た。この人もサラリーマン風だ。スーツをきちんと着こなし、仕事のできそうな感じが出ている。どうせこいつも英語で話かけてくるんだろう。いっそ寝たふりでもしてやろうか。

「ねえ、君あまり英語しゃべれないだろう。見ていたよ。実はね、僕もなんだ。びっくりしたよね。てっきり同じレベルの人達ばっかりだと思っていたらみんな当たり前のように英語で喋ってるんだからさ。僕たつや。よろしく。二人でさ、頑張ってあの人達としゃべれるようになろう。」

気づいたら僕は握手をしていた。20歳ぐらいの僕に仕事のできそうな35歳ぐらいのサラリーマンが優しくしてくれた。これ、俺が女子だったら惚れてるぞ。たつやさんはそれぐらい優しく話かけてきてくれた。

よし、そうだ、頑張るんだ。たつやさんのおかげで僕はそう思えた。

そして、先生が入ってきて授業が始まった。先生はゴリゴリのアメリカ人だった。ここはアメリカの大学だ。ここからは一切日本語は使わないと覚悟しなければならない。よし、ちゃんと聞くぞ。さっきはいきなりの英語だったからびっくりして聞き取れなかったけど、ちゃんと気合いを入れれば聞き取るぐらいはできるはずだ。よし、来い。

「えー、初めまして。このクラスを受け持つベリックです。よろしくお願いします。」

日本語かい!!!!!!!!!!

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ドンデコルテ 小橋
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