「灰の劇場」を読んだ 2023/09/25
見出し画像は、みんなのフォトギャラリーからお借りしました。
表紙の写真が、なかなか素敵だと思う。
どこまでも続くような灰色の街。この物語も「灰の劇場」と題されているとおり、心象風景は灰色だ。
しかし、私にとっては難解な物語だった。
主な登場人物は、イニシャルで語られるMとT、そして、小説家の「私」だ。
女性の生きにくさというか、人生を生きていく上での絶望感というと少し言いすぎか。日常に紛れた二人のやるせない気分とも呼ぶべきか。そのような、MとTの二人の抱えている想いにはとても共感できた。
対して、二人の物語の作者である「私」の想いは、どことなく、ずっと遠くから劇を見ているようなうすぼんやりとしたものだ。傍観者といっていいほどの。
章の初めに、数字が振られているが、とても意味のあるものだと思っていたが、それほどでもなかったようで、ちょっと期待外れ。
ミステリのようなものを期待していたからそう思ったのだろう。
物語は、現在と過去を行ったり来たりするような、劇中劇をみているような感じで進行する。
筋を追うというよりは、過程をあじわう物語というものか。