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谷崎潤一郎の『あくび』を読む 日露戦争でケチがついた
これ以上無いほどのあくびを目撃しました😧#ねるちゃん #マンチカン pic.twitter.com/xuFcynhzYu
— ねるちゃん 短足マンチカン (@munchkinneru) March 16, 2022
これも今では「なんのこっちゃ」という話になってしまうが、庄司薫が『赤頭巾ちゃん気をつけて』でティーンエイジスカースという技法を駆使したとき、旧世代の人間はみんなひっくり返って腰を抜かし、一部では強烈な拒否反応もあった。サリンジャー盗作疑惑とか、そんな馬鹿げた論争もあり、それから意識の流れとか、自分語りの危うさとか色んなことが言われる中で、もう一度文語と口語が見直されるようなきっかけとなるかと思いきや、庄司薫は四部作であっさり総退却してしまったがために、ティーンエイジスカースは徐々に新しい若者によって、繰り返し試みられるに留まった。消えたわけではないが、主流にはならなかった。大抵はみなかしこまって、「私は…」とか「彼は…」と書いていた。その「ちょっと相当に」とか「なんというかその」とか「という感じがしてしまうものなんだ」という言い回しは、『時計仕掛けのオレンジ』のナッドサットのように伝承されることもなく、どこかに消えてしまった。それでも宇佐美りんの小説に「あたし」などという文字を見かけると、私は「はっ」としてしまう。
そんな私は明治四十五年に発表された『あくび』にやはり「はっ」としてしまう。
己は此れから、あくびの話をしようと思つている。という書き出しの賺しも虚をつくが、
一體われわれの連中はしん猫とか、センチメンタルとか、ロマンチックとか、云ふやうな柄ぢやないんだから。(谷崎潤一郎『あくび』)
柄ぢやないんだから。の語尾は珍しい。青空文庫に類似の文体はない。いや読んで貰えると解るのだが、この『あくび』は確かに飄々とした若者言葉の調子を持って書かれている。しかも一人語りで、語るそばから語られている言葉を意識している。
己は先刻から、頻りに連中々々と呼んで居るが、どうも連中と呼ぶより外に、適當な言葉が見當たらない。(谷崎潤一郎『あくび』)
これは殆どティーンエイジスカースではないか。無論少々古めかしい部分がないとは言えないが、もしそれ以前を「真面目」とするならば、少なからず崩しの意図のある「ふざけ」の文体である。話は学生同士の馬鹿話である。時代の風俗である。学生同士の遊びやたわいもない話、筋という筋がなく、さまにならない話が会話中心に進められる。陽気で剽げている。一言で言ってしまえば、『あくび』は学生たちのさまにならない青春群像である。薫君なら、マイッタ、マイッタと言うだろう。しかし例によって谷崎はどうもそうでないものを忍ばせる。
全體此れだけの人數が、急坂の上から石ころを轉がすやうに、ごろごろと止め度なく墜落し始めたのには、何か原因がある筈なんだが、可笑しな事には、誰に聞いて見ても、ハツキリした記憶を持つてる奴がない。此れ程の騒動を見事にやつて除けて置きながら、皆頭が惡くなつて、ぼんやりと気抜けがして居る。(谷崎潤一郎『あくび』)
作中、原因は一つだけ明らかにされている。堀内は馬に舐められてからケチがついたとされる。授業を終え大学の正門を出てあるいていると、うしろからこっそり肩に手をかけた者がいる。それが実は手ではなく馬だった。呑気な馭者がそのまま笑って眺めていた。それ以来堀内は女にもてない、遊びに行けば喧嘩を売られ、女将から勘定の支払いを強談される。焦れば焦るほどへまを演じた揚句借金で首が回らなくなり、遂に今日の如く尾羽打ち枯らしたのである。
他の者の落ちぶれる原因は解らない。しかし村田は「炬燵にもぐつて伸びをしながら」不意にこんなことを言いだすのだ。
「私や今日本海海戰記を讀んで見たが、彼の時は日本は危なかツたんぢやなア。」(谷崎潤一郎『あくび』)
作中誰かが明確にあくびをする場面はない。村田は「炬燵にもぐつて伸びをしながら」とあるのであくびをしたとすればここしかない。これは谷崎潤一郎がポストイットを張ったような仕掛けである。つまりこの何気ない一言がこの作品の隠れた主題なのである。そう気が付いてしまうと、ロシアから喧嘩を売られ、債権の勘定の支払いを強談される。焦れば焦るほどへまを演じた揚句借金で首が回らなくなり、遂に今日の如く尾羽打ち枯らした日本、日露戦争で疲弊したニホンが見えてこないだろうか。細石の巌となりての筈が、急坂の上から石ころを轉がすやうに、ごろごろと止め度なく墜落し始めたのは日露戦争でケチがついたからではなかったか。
さうして、往事を回想しては「彼の時分の事を考へると、まるで、気違ひの沙汰だね。」
なんかんと、脂下がつている。まさに絢爛を過ぎて平淡に入つたものだろう。(谷崎潤一郎『あくび』)
この結びは表面的には学生時代のさまにならないあれこれのできごとを指している。しかし「炬燵にもぐつて伸びをしながら」に気が付いてしまうと、どうしても「彼の時分」と「彼の時」が重なって見える。そうでなければ何も不意に日本海海戰記など持ち出すことはないのだ。何度もあくびのシーンを描けばいいのだ。「ハツキリした記憶を持つてる奴がない。」などと若者言葉の音便を捉えながら、あくびを隠す。谷崎潤一郎はちょっと相当に油断がならないという感じがする奴なんだ。
【余談①】『あくび』の言葉とか
しん猫 ① 男女がさしむかいで、むつまじく語らうこと。また、そのさま。 ... ② 静かでしんみりしていること。また、そのさま。
女義太黨 たれぎだとう 女義太夫の淫を売るものをいふ
向陵 旧制第一高等学校の別名
健児
娯樂園 根津娯樂園
袂糞 たもとの底にたまる、ごみ。
邊陬 へんすう 国の中心から遠く離れていること。 かたいなか。 辺垂。
Minnedienst 名誉ある女性のための宮廷奉仕する騎士の主義?
篠突く 篠を突き立てるように、大粒の雨が激しい勢いで降るさまをたとえていう語。 ② 矢が篠を束ねたように何本もつきささって立っているさまをたとえていう語。
軟談 「軟談」と云ふ言葉は、杉浦の發明した熱語で、だんだん其の「軟談」に參加する徒黨の數が殖えて來た。
江知勝
豊國 (・・?
怏々 楽しまないさま。 不平なさま。 不愉快そうなさま。
濺ぐ そそぐ
北村四海
瓢箪鯰 ぬらぬらしてなかなかつかまえることのできないこと。 転じて、ぬらりくらりとして要領を得ないさま。 [2] 歌舞伎所作事。 長唄・常磐津。
浩歎 ひどくなげくこと。
杯盤狼藉 さかずき・さらなどが散乱している様子。酒宴の乱れ果てたさま。
お茶屋 東京のかつての待合に相当する業態。待ち合わせや会合のための場所を提供する貸席業。
飯田町の富士見楼 飯田河岸の富士見楼
新戸部校長 新渡戸稲造校長 明治39年、一高校長に就任。大正2年まで在職。 それまでの「一高篭城主義」に対立する「ソシアリティ」を説き新風を吹き込んだ。
鹽谷教授 鹽谷青山?
甚句 民謡の一種。 主に、七・七・七・五の四句形式。
雛妓 おしゃく
よいやさ 合いの手囃子言葉
短兵急 にわかに行動を起こすさま。だしぬけ。
發頭人 最初に事を企てた人。 好ましくない事に関して用いることが多い。 張本人。 首謀者。
浩澣 物などの量の多いこと
大册 たいさつ 紙数が多くて厚い書物。
おかちん 餅の女性語。
ツヨール 淋病の薬か?
大盡 ①大金持ちの人。財産家。②遊里で豪遊する金持ち客。
蟄息 蟄居屏息 外出せず家の中で息をひそめて隠れていること。
今宵は…肉のピーマン詰めだ…
— 黒4キメ粒牟ママン (@lPvxspvZJaMxcPt) March 5, 2022
私の言いたいことは…わかったか… pic.twitter.com/6zWBj1XEh4
【余談②】で何が言いたいかというと
よく母国語という言葉を聞きますが、あれは音、会話なんですね。しかし私はおそらく私は音としての日本語より長い時間、文字としての日本語に接してきたので、多分翻訳された谷崎文学では解らないところが理解できるんじゃないかと思うんです。本文中でも書きましたが「ハツキリした記憶を持つてる奴がない。」は、他の作品なら「明瞭な記憶を持つて居る者がいない。」と書かれていた筈なんです。「居る」であって「る」じゃあないんです。
この感覚で読んでいくと、あれっとおもうことがあるのですね。明日、『續惡魔』について書こうかなと思いますが、多分これまでそんなことは誰も書いてこなかったんじゃないかなという感じの事を書いてしまいそうです。絶対に単なる逆張りではなくて、私の日本語感覚の一番真っ当なところを正直に書いてみようと思います。
学問や芸術に関して、日本の国益や歴史認識に反するものに税金を使うのか、という批判がずっとあった。プーチンもどんなにトンデモでも、国益と歴史認識に基づいて戦争をしている。それに反対する認識、感受性、知性、思想を育み、共有するためにも、学問や芸術の自由は維持していかなければならない。
— 平野啓一郎 (@hiranok) March 7, 2022
うーん。解らん。
人はよく、私が権力関係を到る所にばらまいた結果、抵抗の可能性を奪ってしまったと批判しますが、事態は逆なのです。こうした個体的、局部的な相互の抗争関係として権力を捉えることで、人はどこにどのような形で抵抗が可能となるかをその瞬間その瞬間に具体的に知ることができるのです。-権力と知-
— ミシェル・フーコー (@M_Foucault_jp) March 6, 2022
解るような解らないような…
太平洋戦争の戦時下には、多くの言論と表現が規制されました。新興俳句弾圧事件などがそうですね。対して「日本文学報国会」は、国策推進の為の文学者の団体です。国に迎合するものでないと発表すらできない時代でしたから、会には多くの作家が入っていたんですよ。
— 文学たん (@bungakutan) March 7, 2022
ペン部隊→ 大政翼賛会→ 日本文学報国会ね。
كتاب المقريزي مترجم إلى الالماني ترجمه المستشرق ڤاستنفيلد وذكر هجرة بني حنيفة إلى مصر في زمن المتوكل العباسي عام 240هـ ومنهم قبائل من ذرية عبيد بن ثعلبة الحنفي ..
— فهد الماجد (@ZS2OO3) March 6, 2022
- صدر في غونتغن المانيا 1847م 🇩🇪📔 pic.twitter.com/yCkkud0uDF
アッバース朝アルムタワッキルの時代にバヌーハニーファがエジプトに移住した(;゚Д゚)
ロート製薬さんに私のスマホのアラーム画面を「すべて」提供させていただいた結果がこちらになります。 pic.twitter.com/HXQxefdQVo
— ゐずみ (@Monyaizumi) March 6, 2022
何時寝るのかな?
日本年金機構に尋ねても
— Julie減税スイシンジャー (@Julie_majimeka) February 28, 2022
『標準賞与額』が
年金額にどう反映されるのか不明。
なので、厚生労働省に電話してみました☎️
2時間20分待たされた結果
突然『ガチャン』と切れました😵🤭
賞与で納めた納付額が、
受け取り年金にどう反映されるのか
明らかにされないって
おかしくありませんか? pic.twitter.com/2t63Hk3VhD
だから年金ってそもそも戦費捻出のためのもので、
年金は改正とか特例が複雑で
官僚は説明できないの。
【日本年金機構の入札で談合,行政処分】
— 公正取引委員会 (@jftc) March 3, 2022
"ねんきん定期便"や"年金振込通知書"の作成・発送準備業務の入札で談合していた26社に対し,排除措置命令と課徴金納付命令(17億4161万円)を行いました。
また,発注者の #日本年金機構 に発注方法の見直し等を要請しました。https://t.co/Xyge3De3rX#談合 pic.twitter.com/0rkZCQRVtd
これわざとですやん。外注先を無駄に増やして、ばらばらに処理しているので、年金の免除申請とか四か月も遅延でっせ。年金が貰えるとか貰えないの話ではなくて、組織としてあかんやん。
【動画を公開】
— 農林水産省 (@MAFF_JAPAN) March 7, 2022
様々な分野でIT化、DXが求められる今。
実は、農林水産省の申請システム(eMAFF)もすごいんです。
デジタル庁にも突撃してきました。https://t.co/3KnyvKK2hA pic.twitter.com/qqs6T6V0bm
痛い (>_<)
‼️ #米国国防省 の資金援助のもとに #ウクライナ で進められていた #生物兵器プログラム の #証拠隠滅
— 駐日ロシア連邦大使館 (@RusEmbassyJ) March 7, 2022
⛔️🇺🇸#米国 と #ウクライナ による #国連細菌兵器(#生物兵器)および #毒素兵器禁止条約第 1条違反の事実が開示されないよう、🇺🇦ウクライナ保健省はすべての生物学研究所に対して廃棄命令を出した pic.twitter.com/9bOStrM1UU
痛い (>_<)