小プールがないスイミングは基本、指導レベルが高いと言ってよい。
ども!長野県長野市にあるフィットネスクラブの支配人をしているこばやしです。クラブは善光寺まで歩いて行ける距離にあります。シニア向けのフィットネスクラブや子ども向けスイミングの運営をしたり、万が一の時に役立つ救急法の普及活動もしています。学生時代水泳部からの水泳経験を生かして、プールでレッスンもやっています。
競合ひしめく長野市のフィットネス業界でどこも生き抜くことに必死だったところにコロナの追い打ち。「選択と集中」でこの荒波を乗り切ってやろうと今年1月にシニア向けクラブにコンセプトリニューアルオープンしたフィットネスクラブのお話です。
さて今回は、子ども向けスイミングスクールのお話で、小プールしか経験していない子は危ないよという話と、小プールを持たないスイミングは一見設備が充実していないと思われがちですが、実は指導力が高いのです!というお話です。
小プールがあるスイミングスクールに通っているお子様がいるご家庭、スイミング選びで小プールがあるクラブを探している方にはこれを理解した上でクラブ選びをご検討ください。
小プールは子どもが危険を想像するスキルにフタをしている
はじめに結論を言いますが、小プールの世界しか知らない子は溺れるリスクが高まるよという事です。危険回避能力が身につきにくいです。
詳しく説明しますね。
小プールというのは、水深が浅いプールの事です。普通のスイミングスクールのプールは水深が1m~1.2mあるのが通常で、小プールと言って、水深が50cm~70cmほどのプールがあります。小学校にも必ずありますよね。
この小プールを使うお子様は、2歳~6歳くらいの小学校へ行く前のお子様で、水にまだなれていないお子様になると思います。
実は、小プールで習ったお子様で、ある程度水慣れができ、自信がついた時が一番危険です。水に慣れているという過信から、水深を読むスキル(危険を想像するスキル)が身につかないまま遊んでしまう可能性があります。横の世界だけ知っているだけで縦の世界(水深)を知らないと溺れリスクは一気に高まります。
ある程度大きくなったお子様ならある程度水深は見た目で予想はつくので、大丈夫だとは思うのですが、まだ小さいお子様ならわからないという可能性は十分にあります。特に好奇心旺盛でやんちゃな子ならなおさら。小プールで水に慣れていれば慣れているほど危険です。
こんな感じ。
わ〜い!プールだー
!目の前のプールにどぼーん!身長以上の水深になすすべなくブクブクブク…
まだ、2、3歳の子どもなら十分考えられますね。
楽な管理をしたいという管理者目線で作られた小プール
確かに、お子様にとって浅いプールは安心してできるメリットはあります。しかし、その設置の本音はというと、安全性が増すため最大の利点は指導がしやすいという指導者または管理者目線で作られたプールとなります。
えら呼吸ができない人間は、口と鼻が水に覆われたら溺れるので、意識不明となりうつ伏せに倒れた場合、水深3cmでも溺れる場面はあるでしょう。でも、小プールのように、子どもの上半身が水の上に出る高さならそのリスクは大きく減ります。つまりその分、指導者は水泳指導に集中できるのです。指導者にとって小プールと深いプールとは安心感がまったく違います。
小プールは子どもを安心させるものというよりは指導者が安心するためのものという要素の方が強いのです。
水泳指導の際に指導者が第一に考えることは、安全にレッスンが出来る事です。水に慣れていない子が溺れないかを常に心配しているのがレッスン中の指導者の頭の中です。幼児の初心者クラスはそれで頭がいっぱいだと思います。なので、水泳指導に集中するために危険リスクを減らす事を考えて、水深を浅くしようとなるわけです。それは、危険回避能力が育たないので、そのプール以外の水辺に行った時にとても危険です。
保護者の望みは、健康増進も多くありますが、まずは溺れないスキルを身につける事なのではないでしょうか。それでいて、スイミングに通っているにもかかわらず、レジャープールや川、海で溺れたなんてことになったら「なんで!?」となりますよね。小プールで水泳が上手になっても溺れる可能性は高まります。
溺れないスキルを身に着つけるには、まず子どもに水深という縦の奥行きがある世界(水深)を知ってもらい、もしかしたら危ないかもしれないという危険回避能力を磨く事が重要です。この能力は別の場面でも応用されると思います。でも小プールは安全性が高いためこれを身につけることは物理的に不可能ですよね。
小プールは子どもを安心させるものというよりはコーチが安心するためのもで利用者目線ではなく管理者目線
ではなぜクラブや学校は小プールを作るのか。それは、繰り返しになりますが指導者が楽をするためです。多くのお子様を一度に指導するには熟練したスキルが必要で、また、安全性の確保と指導が行き届くように、指導者の数も必要となります。
でも、小プールは危険リスクが減るのでスタッフにコストをかけず少人数で行え、かつ、安全性が高いため、ベテランでなくても指導できるのがある意味では素晴らしい点です。
会社にとって少人数で、経験を問わずにできるサービス作りが一番効率が良く利益が上がるので。なので、指導者目線というより会社目線かもしれませんね。
小学校に小プールが必ずあるのは、指導者目線要素がもっと強いためです。学校の先生はプールの指導が苦手な先生が非常に多いのが現実。
ボール遊びなら、陸上なので自分でも思い立った時に練習が出来て感覚も自然とわかりますが、水泳経験が浅い先生は、水泳を学びたいと言ってすぐにできる物ではありませんし、教える時の感覚のイメージがつきません。なので、近年、私たちのような専門家が学校の先生に指導もしているくらいです。よって、小学校では小プールは必須アイテムとなり、プールがある小学校にはほぼ小プールがあります。
身長が低い=小プールが必要という発想で小プールが作られますが、水泳が上手くなる≠自分で身を守る危険回避能力がつくという本末転倒な結果となることも考えられます。
考えられますというのは指導者の伝え方によるということがあるからです。
水深が深い場所と浅い場所が混在するところで水遊びをさせることが子どもにとっては理想。
この題名の通りですが、小プールだけの指導では危険です。あえて水深が深いプールで練習することで、小さいお子様は、深い、浅いの縦と横を意識することができ、水は楽しいけどちょっと間違えると怖いものという、危機回避能力を同時に育てることができます。小プールだけでは恐怖は学べません。厳密に言えば学べるかもしれないけど体験はできないです。
じゃあ、深いプールでとなりますが、深いプールではさすがに溺れてしまうよと思うかもしれません。でも大丈夫。浅瀬を作ることができます。深いプールの一部分だけ浅くする方法は簡単で、水深台という台を水に沈めて浅くします。敷き詰めたり、台と台を離して、浅い、深いを繰り返ししたりして利用します。よくプールのプールサイドにあるあの台です
ここで重要なのは、指導者のスキル。
小プールがないスイミングスクールは指導スキルがある証です
小プールがなく、大きなプールのみで水深台を利用して指導しているクラブは間違いなく指導者のスキルが高いと言えます。そうでなければ事故が発生するからです。指導者は相当のスキルがないと一瞬で事故は起こります。
溺れは0.5秒で発生します。今その子を見ていても、目を離した瞬間にその子は水の中にいる場合があります。溺れは一瞬ですし、おぼれた瞬間は声を発せず、静かに沈みます。
それを、起こさないように、2手3手先を読んで指導するのが、プロの指導者です。
スイミングスクールの指導レベルを見極める一つの方法として、小プールがあるかないかを確認してみてください。
誤解してほしくないのは、小プールを設置しているクラブの指導スキルが低いと言っているのではありません。大切なのは、そのクラブがここで説明した危険性を理解した上で小プールを使っているかどうかです。小プールを子どもが安心するからとかだけなら、深いプールでも安心させるのが指導力ですし、安全のためにと考えるのなら、溺れないスキルは全て身につかない事もあるいう事を理解した上でそれを子どもや保護者に伝えているかという事です。
ちなみに、水深が深いプールで水泳を学ぶと、深さにもなれてくるので、自分身長の2倍近くある水深でも、潜って床に足をつけてしゃがんでジャンプする事で、呼吸をし続けられるようになります。
最後に小さなお子様を持つ保護者の方に。溺れは一瞬で起きますので、レジャープールへ行った時も、海や川へ遊びに行った時も、一瞬たりとも目を離さないようにお願いします。特に、小さいお子様で小プールしか経験していない場合はさらに注意が必要であることを知っていただいて、事故を未然に防いでいただけたらうれしいです。できれば小プールがないスイミングで始めてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。