母川回帰欲

サケは自分の生まれた川へ戻ってくる。
僕も故郷に帰りたい。
それは遠い未来に叶えられればいい願望だったが、今は違う。
はたから見れば、夢破れて、敗走するようなものだ。
でも、愛する地元なら、妥協できるところに就職できるなら、もういいや。
もう分散 (variance) の大きな未来は考えたくない。

自分の打たれ弱さには驚いている。
なんでこんなにもボロボロになってるんだろう。
こんな挫折は経験したことがない、それは確かだ。
でも、にしたって、、、

以前はあった、反発心みたいなものがなくなっている。
間違いなくメンタルは持ち直していた。
でも、これをバネにみたいなエネルギーは湧いていない。
たぶん、現状では博士課程に進学したら、自己肯定感を維持する見込みがない。

地元に帰って、普通に就職して、平凡ながらも幸せに暮らすのが、自分の求めていたことなのか。
博士に進むことは、企業就職しないことと表裏一体だった。
それは、自分が企業で働く姿を想像できなかったから。
今は違う。
少なくとも自分を守るために企業で働こうとしている。

ある頃からか、アカデミアの不安定さに疑問を抱くようになった。
夏に参加した研究集会で、あるポスドクの方に尋ねた。
「不確定な将来に対する楽観性が必要だ、自分の研究への自信があるうちは大丈夫。」と言われた。
前者はもともとない。
後者は崩れた。
というか人の言葉を信じられない。
トラウマだ。

若林さんの下積み時代の話をラジオの切り抜きや、「だが、情熱はある」で見てきた。
その頃から、売れない芸人さんと若手研究者が同じに見えてきた。
夢はある。今が楽しい。でも不安定。
夢もない、楽しめやしない、進んだところで不安定。

もう、失敗したくないんだろう。
当然の防衛本能だと思う。
その防衛本能の延長としての、母川回帰欲だ。

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