東京レガシーハーフマラソンが、多くの人の「走るチャンス」になるために
10月16日に初開催された、東京レガシーハーフマラソンを走ってきました。
今回は『ランニングマガジン・クリール』掲載用に写真を撮りながらのレースでした。レポートは来月、11月22日発売号に載りますので、ぜひご覧ください。ここでは個人的な感想を。
後方ブロックの宿命…11分のロス
コースは、新国立競技場を出発し、富久町→飯田橋→水道橋→神保町→神田→日本橋(第1折り返し)→神田→神保町→皇居・大手町(第2折り返し)→神保町→水道橋→飯田橋→富久町と進み、最後は新国立競技場に戻ってフィニッシュです。昨年のパラリンピック、2019年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)のコースを半分たどります。
スタートブロックはA~Lまで12に分けられ(おそらく申告タイム順)8時5分に第1ウエーブ(A~Fブロック)、8時20分に第2ウエーブ(G~Lブロック)と2グループに分かれて出発。7時30分には入場ゲートが閉まるので、6時半には着くように早めに競技場に向かいました。朝早いの苦手…。
僕のスタートブロックはF、つまり第1ウエーブの最後方です。A、Bなどの速い人たちの組は屋外のトラック上で待機ですが、僕たちは観客席下の通路が待機場所。華やかであろうオープニングセレモニーの音も聞こえないなか、静かに号砲を待ちます(笑)。結局、号砲の音も聞こえず、前方から徐々に動いていくことで、「あ、スタートしたんだな」と分かりました。
スタートロス(号砲から、実際にスタートラインを越えるまでの時間差)は約11分。「早く前に進んで」と競技役員から急かされるので、スタートラインまで400mくらいはプラスして走ることになります。まあ、後方ブロックの宿命ですね…。
走って分かったエリート選手の凄み
競技場を出て外苑西通りを北上し、富久町西の信号を右折するまでは細かいアップダウンが続きます。そして、そこから市ヶ谷までは一気に下り。帰りは同じコースを帰ってきますから、この下りでオーバーペースになると確実に終盤に苦しむパターンに陥ります。日本橋の第1折り返しまでは、東京マラソンのコースともかぶります。とにかく平坦で走りやすく、対面コースが多いので、トップ選手とたくさんすれ違えてテンションも上がります。
第1折り返しをターンして10キロ。そこから神保町交差点まで戻り、左折して皇居方面に向かいます。大手町の第2折り返しをターンしたところで13キロ。徐々に疲労の色合いも見えてくるところです。
ここからは、国立競技場へ引き返すのみ。そして、ハイライトは17キロ過ぎの市ヶ谷からの上りです。初めは緩やかですが、最後、富久町のところでググっと壁のような急坂がラスボスのように現れます。さらに上り切ってからも、追い打ちをかけるように競技場まで細かい起伏が続きます。ゴール目指して我慢のしどころです。
MGCでの中村匠吾選手(富士通)のロングスパートは鮮烈でしたが、こんなアップダウンのなかで(しかも40キロ近く走ってきて)果敢にスパートをかけ、大迫傑選手(NIKE)や服部勇馬選手(トヨタ自動車)らを振り切ったのかと、実際にコースを走ることでその凄みがよ~く実感できます。
いよいよ最後はマラソンゲートをくぐって、スタジアム内へ。6万を超える観客席に包まれながらトラックを回るひとときが、何といってもこの大会最大のだいご味です。参加ランナーは皆さん、晴れやかな表情でフィニッシュゲートをくぐり抜けていました。
「ランニングの間口」を広げるために
さて、今回のハーフマラソンは東京五輪・パラリンピックのレガシーとして、「すべての人に走るチャンスを広げるハーフマラソン」を目指して創設されましたが、その点で1つ課題ではないかと感じたのが制限時間です。半分の距離であるハーフマラソンは、初心者にとってはフルマラソンよりも取り組みやすいものだという印象がありますが、意外にそうでもないかもしれません。というのも、ハーフマラソンは、どうしても全体的な流れ(ペース)が速くなる傾向があるからです。
今回は競技時間が3時間ですが、それは第1ウエーブのスタート時刻(8時5分)が基準ですから、第2ウエーブ(8時20分スタート)の人たちにとっては2時間45分が制限時間。さらに、後方ブロックとなると、僕が第1ウエーブでそうだったように10分程度のスタートロスが生じたと考えられます。つまり、持ちタイムがゆっくりな人たちほど、速い流れのなか、制限時間に追われて懸命に走らなければいけなかったことになります。制限を気にして前半にオーバーペースになり、後半に苦しんで関門にかかったランナーも、実際にいたようです。
だからこそ、今回の参加資格には「2時間35分以内に完走可能な者」とあったと思うのですが、そうなると1キロ7分10秒~7分20秒ペース(フル5時間10分程度のペース)がライン。ビギナーや女性、年配のランナーへの間口を広げることを考えるのならば、ちょっと厳しいかなという印象です。できれば、後方ブロックでも2時間50分(1キロ8分ペース、フル5時間40分ペース)で走れる余裕をつくってあげれば、より多くの人に「走るチャンスが広がる」かなと感じます。まあ、コロナ禍が収束して一斉スタートになれば、多少はウエーブ間を詰めて時間をつくれるかもしれませんが。
制限時間を延ばすのは道路封鎖時間も延ばさなければいけないという課題が生まれますし、制限時間を短くすることは「それなりの練習をしてきてくださいね」というメッセージにもなります。しかし、国立競技場発着で都心を駆けることができる、せっかくの貴重な機会。オリ・パラのレガシーとなるためにも、参加ランナーの意見を吸い上げ、より多くの人たちが挑戦でき、走る楽しさを味わえる素晴らしい大会になっていってほしいなと願うばかりです。