どうしようもなく、僕らの世界は。
小学校のせいだろうか。
幼い頃の記憶は時として、とてつもなく涙を呼んでくる。
季節ごとに匂いが変わることを理解してくれる人は少なかった。金木犀やアスファルト、朝の露の匂いが、脳を刺激する。今日は春の匂いが少しだけ流れている気がする。またこの季節が来てしまったのか。
桜の季節はいつにもなく彩度が増した空が眩しくて、どうしようもなく過去を思い出して、また始めなければならないという義務感が襲ってくる。
春に自殺者が多いのは、始める勇気の出なかった人が多いからだろうか。
いやむしろ、終わることを始める勇気が出てしまったのだ。
そして僕はまた言葉にならない寂しさを埋める世界を探している。