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取り調べ資料13【失踪事件3日前】
雨音が滴る、何者にもなれなかった自分が何かになろうと思えたその日、君はまだ笑ってくれていた、日に日に目を合わせなくなって、幼い苛立ちを君にぶつけて君を避けてた、君の眼に映っていない気がした、自分が嫌だったから。
君のための偽善が、君にだけ認められなかったから、何故かは知らないし、考えたりもしてない。
だから今君が何してるのかとか全然知らないけど、
なんで一人でこんなところにいるんだよ。
なんで一人でこんなところでずぶ濡れになって泣いてんだよ!!!!
中学一年梅雨、ジメジメした心と季節。
声をかけてしまったから、僕はもう離れられない。
ここが地獄の入り口
傘を渡して学ランを上からかけてやる、何を考えてたかなんて知らないし、家と真逆のこっちに君がいることもわからない、何が何だかわからないけど、君が泣いてるのが嫌だった。
あ〜…えっと…家来なよ
みゅう…!!…おい!!!
…なんか怒ってるの?最近避けてたから…とか…
ねぇ〜…その…
あ〜…
手を引いて歩く、幸い今日は家には誰もいないし、少し歩くけど、ここに置いておくわけにも俺が濡れて帰るわけにもいかない、心配だし…
心配だから…なんだけど…
そう、言い聞かせてはいながら、繋いだ手の柔らかい感触に少し気持ちを浮つかせていた。
女性と手を繋いでいると言うことが思春期の僕には少し刺激が強かった。
呑気なものでそんなことしか頭になかった。
寒く凍える手に温もりを与えるのが、他でもない自分であることが、たまらなく嬉しかったのだ。
タオル持ってくるから、玄関で待ってて
そう告げて、洗面所へ、部屋片付けてないんだよなぁ…
それで、なにがあったの?みゅう
…私ね、私
ん?どうしたの?
…死にたい
体から暑さが抜けていく、梅雨のジメジメが、濡れた服が肌に嫌なくらいに張り付く。
…よく聞かせてもらってもいい?
覚悟があった。
叶わない夢を見ることになってしまっても。