野球肩をみる-投げると痛い!なにを考える?-
臨床+.3週目を担当する佐藤康です。
今月の配信テーマは「肩関節疾患」
私が今回担当するのは、
病態の把握が難渋しやすい
「野球肩」についてまとめていきます。
外来リハビリテーションの現場でよく遭遇する「投球時の痛み」
臨床で対応する“投球時の痛み“では
以下のような悩みが多いのではないでしょうか。
そこで今回は野球肩がよくわからない方向けに、
投球動作と肩の痛みについて掘り下げていきたいと思います。
■野球肩とは
投球障害とは、投球動作の繰り返しにより肩や肘にストレス負荷がかかり組織損傷・投球時痛を呈する野球肩と野球肘の総称をいいます。
特に野球肩では全身の機能障害が運動連鎖の破綻につながり、身体で最も可動性の大きい肩甲上腕関節に頻回なメカニカルストレスを与えることで投球が困難になることにより野球肩になります。
さらに野球肩には以下のさまざまな病態が存在します。
まず注意しておきたいのは
「野球肩=復帰まで●●週」という判断にならないことです。
上記に挙げたように、野球肩にも関節の構造体や筋腱損傷などさまざまな部位の病態が存在するため、組織の回復過程により、各損傷・重症度に応じた対応・期間が求められます。
■投球動作を理解する
歩行における立脚期の踵接地~足趾離地のように相があるように、投球動作においても全体を大きく5つのphaseに分けて解説しています。簡単におさらいしていきましょう。
▶Phase分類
|Wind-up
投球動作開始のため片脚立位にて踏み込む脚が最大挙上するまで
|Early cocking
投球方向へ移動し、踏み込んだ脚が接地するまで
|Late-cocking
肩関節が最大外旋するまで
|Acceleration
体幹を回旋しながらボールをリリースするまで
※肩関節がゼロポジションを保ちながら、Late-cockingでの肩外転/外旋位から内転/内旋位に切り替わる+肘屈曲位から伸展位へ急速に変化していきます。
|Follow-through
ボールリリースから腕を振り切り、投球動作終了まで
上記5つのphaseは投球障害に携わる上で、
共通語となるため押さえておきたい動作の相です。
▶投球時の肩の動き
続いて、投球時の肩関節の動きについておさらいしていきます。
選手によって投球フォームや動きの程度はさまざまですが、各phaseに求められる肩関節の運動要素はほぼ同様です。
そのため、選手が「投げるときのこの時が痛い!」と訴えた時に、その動作の特性を理解していなければ、対応も不十分になってしまいがちです。
投球動作はWind-upからFollow-throughまで1~2秒の間でなされる動きであり、ボールリリースから終了までは0.2秒ほどとなり、Acceleration以降は無意識化での運動となります。
そのため、受動的に最大外旋を迎え、最大内旋に向けて強く力が働きます。これらの相では肩へのストレスを生じやすい場面であり、これらの肩の運動要素は十分にクリアしておきたいポイントです。
▶インピンジメント
つぎに、投球障害選手を対応する上でよく対応することの多い「インピンジメント」について整理していきます。
「腕を挙げた時が痛い」
「腕を一番捻ったときが痛い」
よく聴取される主訴です!
投球障害で発生する肩関節のインピンジメントとして
・肩峰下インピンジメント
・インターナルインピンジメント
があります。
同じインピンジメント(衝突・接触)となる病態ですが、インピンジメントが起こる部位とそれに応じた動作に違いがあります。
また、インターナルインピンジメントには
前上方と後上方のインピンジメントに分けられます。
投球動作と障害の関係を理解する上で
上記はおさえておきたい項目です。
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