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ボランティアと音楽

この夏、ワールドシップオーケストラ(通称WSO)という団体に所属し、フィリピンで公演をしてきました。
WSOとは、途上国の子供たちに「初めてのオーケストラ体験」を届けるをコンセプトに、活動しているオーケストラです。
一週間ほど現地に滞在し、学校で演奏会をしたり、現地のプロオケと共演。初めてのオーケストラ体験を多くの人に届けるべく、1週間現地で6公演ほど実施しました。

フィリピンでの6公演を通して感じたことを、つらつらと書いていきます。


人生の価値観

これは学生の頃から変わらないんですが、人生の幸福度は「選択肢の多さ」に比例していると考えています。
選択肢の多さは、過去の経験と、知識に紐づきます。

経験は、移動距離・出会い
知識は、読書量やコンテンツに触れた量に比例します。

幸い、現代の日本には個人の意思でこのいずれも簡単に獲得できる環境にあります。それを獲るか、獲らないかは個人の判断です。
個人的には獲った方が人生の幸福度が上がると考えてはいますが、別に無理に強要するものでもありません。

で、何がきついかというと「このいずれも獲得できない」そんな環境下にいることなんですよね。
まさに今回行ったマニラのスラム街「トンド地区」はこのいずれも簡単に獲得できる場所ではありませんでした。

街は生ゴミの匂いで覆われて、その日を生きながらえるために、ゴミの中から金になるものを探している生活。
もちろん車を持っているわけではなく、このスラム街の中で生活の全てが完結しています。

トンド:最貧困地区ハッピーランド

でも、トンドで暮らしている子供たちはみんなキラキラとした顔をしていました。
「どこからきたの」「何をしてるの」。普段は見ない日本人に興味津々で、顔を輝かせながら色々と聞いてくる。
彼らがとてつもなく劣悪な環境で暮らしているだなんて、考えもつかないほど明るい顔をしています。


トンドの公演にきてくれた子供達

なぜか。

それは、「人生に選択肢がある」という概念が、彼らの中にないからなのではないだろうか。
生活の全てがトンドで完結している彼らにとって、ここの暮らし以外を想像することすらできないのだ。
だから、現状の生活の中で幸せを見出し、キラキラとした笑顔が成立している。

実際、今回ガイドをしてくれてたトンド出身のオギーも「ここに住む子供たちは、そもそも外の世界をイメージできないんだ」と。

トンドで暮らす彼ら自身が外の世界を知り、生活を変える想像をもたらすことが、外からアプローチする我々に求められていることのように感じた。

その手段として音楽は有効なのか

正直、これはわかりませんでした。
資本主義から離れた芸術というのは、明確な評価軸がありません。
だからこそ、今回の公演が彼らの人生のきっかけになったかどうかなんて測れるもんではないです。
ただ、シンプルに個人の主観でのみ良し悪しが判断される芸術。

今回の生のオーケストラ体験が、あの場で聞いた誰かに刺さり、大人になってから人生を振り返った時のターニングポイントになっていられると、嬉しいです。

日本人にできること

烏滸がましくもこんなタイトルにしてしまいましたが…
一度、スラム街の現状を知ってしまって、衝撃を受けた以上、何もなかったかのように日常に戻れはしないです。

彼らの人生を変えるきっかけとなる体験を提供する。

今回のようにスポットで音楽体験を届けることは、その一つになりうるかも知れません。
あの環境でオケの生音を聞くことは間違いなく初めてだったはず。
その新たなる経験を提供できたことは、非常に価値あることだと思います。

ここからは個人的な話ですが、
最終的にはインフラの一つとして彼らの生活に根差し、選択肢をインフラを通して提供できるようになれば、日常の中で新たな発見を常に提供できるなと考えました。
そのインフラとして有効だと感じたのはIP・コンテンツ、そしてweb3。

実は、今回の演目に「スーパーマリオ」がありました。

ふと、演奏する直前に「そういえばこの子達はマリオを知っているんだろうか」と疑問が頭をよぎりました。
冒頭数小説演奏すると、観客からは鼻歌が聞こえてきてあらびっくり。
マリオが、遠く離れたマニラの、そしてスラム街の子供達にまで届いている。シンプルに日本人として嬉しかったし、日本からもできることがある希望が見出せた瞬間でした。

IPやweb3を使ってどうしたいんかは、ここでは詳しく話しませんが、
まあこれらが、彼らのきっかけに相当寄与するのではなかろうかと考えています。

人生を変えるきっかけづくり。そんな仕事をやりたいなと思いました。
また一つ、人生の目標が増えてしまいました。


音楽について

25年の人生の中で、21年間はなんだかんだ音楽と付かず離れずの関係。
4歳から18歳までピアノのレッスンに通い、コンクールに出たり、本気で音大を提案されたりもした。
高校生の頃は吹奏楽でオーボエを始めた。気づけば関西大会でソロを吹いていた。

高校3年まで、自分の中で音楽が占める割合は6~7割くらいで、音楽を通して自己表現をすることは当たり前だった。
でも高校卒業と同時に、音楽とは付かず離れずの距離になってしまった。

幼少期から始めたっていう理由で、離れようにも離れられなくて、軽音をやってみたり、ジャズをかじってみた。けどどでもしっくりこなかった。

そんな中出会ったこのWSO。
自分がまた音楽をやってもいい理由を見つけられた気がした。

振り返ると、人に届けるための音楽ってあまりしたことがない。

幼少期のピアノは上手くなるためにやっていたし、
ある程度弾けるようになってからは「この難曲を弾けるようになるぞ!」という自己実現の側面が強かった。

そんなこんなで、純粋に音楽を届けるということは、21年間の音楽人生でしてこなかった。
だからこそ、高校卒業後、音楽をやる明確な目的意識がなく、付かず離れずの距離感になってしまっていたんだろうなと。

今回、フィリピンに行って、奏でて、音楽が持つパワーを演者である自分自身がものすごく実感した。

50人を超える人が一斉に弾き始めるオーケストラ。
音楽を知っていようがいまいが、生音が持つパワーは凄まじくて、ほんとにみんな笑顔になる。
曲が終わる度に「フォーーーーーー!」と大絶叫。


反応良すぎるフィリピンキッズ

文化も、家庭環境も、生き方、言語も、何から何まで違うのに、この音楽だけはどこの世界も共通。

そんな音楽に、人生の大半を伴走してもらっていることが誇らしくなった。
音楽をやっていてよかった。
心の底からそう思える時間でした。


みんなでやる音楽ってやっぱええな

今回のオケは国内練習4日と、現地1日リハ+6公演というスケジュール。
高校卒業してからは前日の1日リハだけとかで舞台に載っていたので、ひっさびさにがっつり合奏して、公演に臨みました。

なんか、こう、合奏を重ねるごとに音がブレンドしていって、
飲み会を重ねるごとに(?)さらに一つの音になって。
音楽を通して、仲良くなるってのはやっぱ楽器奏者の1番の醍醐味だなと再実感。

今回は現役音大生から、普通の社会人まで、世代も音楽に費やす時間もバラバラだったけど、技術云々ではなく、シンプルに人を届ける音楽をするぞ!という目標のもと切磋琢磨できたのは、自分にとって、再度音楽を頑張る理由を見つけられたきっかけになりました。

まとめ:やっぱGiverでないと

気づけば3,000文字もつらつらと書いてしまいました。
今回、途上国の子供達に初めてのオーケストラ体験を届ける!という提供する側として渡航しました。

なのに、こんなに気づきと学びをもらいました。
やはりGiverであり続けるからこそ、人生は彩られるんだなと再認識した渡航でした。

社会人になって、こんなにもまた戻りたいと思うコミュニティに出会えるとは思いもしませんでした笑

もっともっと楽器上手くなって、また戻ってきたいと思います!


WSO!


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