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「イソヒヨドリの警戒」頭の上げ下げが示す行動
「ぴ♪ ぴ♪ げるるる♪」
独特な鳴き声の正体
近くに自然も少ない街の近くなのに、生き物の声が聞こえて思わずあたりをみわたしました。
ぴ♪ ぴ♪ げるるる♪ ぴ♪ ぴ♪ げるるる♪
「ぴ♪ ぴ♪ 」は高音で、「げるるる♪」の部分はやや濁りある声。それは一定のリズムで繰り返され、まるで私に向かって放たれているよう。少し高所へ移動して目で周囲を探ってみると、小さな鳥が1羽、変わった動きをしながら鳴いていました。
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この鳥は「イソヒヨドリ(Monticola solitarius)」といい、オスは青く美しい体色をしています。なので、私がみつけたのはこの個体はメス。「ぴ♪ ぴ♪ げるるる♪」と頭を上げ下げするこの動きは警戒を意味するそうです。今の時季はちょうど繁殖期にあたるので、もしかすると近くに巣があって、母鳥がそれを守ろうとしているのかもしれません。
海岸にいた鳥
1990年代に都市で増加
イソヒヨドリは、学名では Monticola(山に生息する)solitarius(単独性)となっていますが、日本ではおもに海岸の岩場に生息・繁殖する鳥です。にもかかわらず、私がこの鳥を確認したのは街の近く。最近、このイソヒヨドリを住宅地付近などで観察することが増えました。
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気になって調べてみると、どうやら1980年代に東京や大阪などの住宅地で目撃されはじめ、1990年代以降になると内陸部での繁殖例が増加したそうです。都市部では建物のひさしや雨どいのすき間、換気口内部などで営巣しているそうなので、人間の住環境が元来の営巣地である岩場と似ているのでしょう。
懸念されている
ツバメとの競合
都市部のイソヒヨドリは公園で昆虫やトカゲを捕食したり、落ちているポップコーンを食べたりしているらしく、採餌場所としても都市部は居心地が良いみたいです。実際に、海岸線から内陸部へと繁殖分布を拡大させている可能性を指摘する声もあり、今後全国の都市でこのイソヒヨドリが目撃されるようになるかもしれません。
そうなると、懸念されるのは同じ都市部で生活する生き物との競合です。実際に都市部の鳥を研究している専門家から「ほかの動植物への影響を注視すべき」との声があり、ツバメの巣がイソヒヨドリに襲われる事例も報告されているそうです。
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先述にもありますが、イソヒヨドリのオスはきれいな青色をしていて、その姿はまさに「幸せの青い鳥」。そうした縁起の良い鳥があちこちでみられるのは素敵ですが、半面ほかの生き物の居場所が減ってしまうおそれがあるのは、やはり残念です。ツバメとイソヒヨドリ。その双方を観察して、時季の移り変わりを愉しめる未来を願います。
参考文献
・「Bird Research News」2011年8月号
・「都市と生物③ イソヒヨドリ、たくましい生命力」日本経済新聞2020年5月31日
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